【オランダ/ハーグ ”夜開催”の説明会と、大人と子どもを分けること】
こんにちは!新年度が始まって約1ヶ月。やっと落ち着き始めた頃なので、娘が通う小学校の新年度の始まりについて書き残しておこうと思います!
あくまでオランダにある小学校のうちの1つの例だと思ってお読みください。
オランダの夏休み=日本の春休み
日本では新年度と言えば桜が咲き乱れる4月をイメージしますが、多くの諸外国では「新年度=9月」です。お隣の中国も新年度の始まりは9月。ひょっとしたら日本もこの先9月が新年度になるかもしれませんね!(コロナ禍でそんな議論もありましたっけ…)
ということで、オランダの夏休みは日本で言うところの春休み。
1ヶ月半以上の休みを経て、リフレッシュした顔で子どもたちもそして保護者や先生たちも学校に戻ってきます。この長い夏休み中「どこにも行かなかった」なんて家庭はほとんどないのがオランダ。もちろん家庭によってはコロナなどの影響で旅行資金が足りない…なんて家庭もあったかもしれませんが、「(特に夏の)長期休暇は旅行に行く!」というのがオランダを含めたヨーロッパの当たり前にも感じられます。
学年が上がってもクラス(メイト)は同じ、教室が変わるだけ
日本の小学校では学年が変わるとクラス替えがあったりしますが、オランダの多くの小学校ではgroep2とgroep3の間で一度クラス替えがあるだけで、その後は卒業まで同じクラスでいくことがほとんどのようです。日本の4月のように「誰と一緒のクラスかな?」というようなドキドキがないのはフィンランドも同じのようで、ただ教室の場所が移動しただけ。という感じで9月の新学期が始まりました。
それでも、子どもたちにとっては教室が変わるのは大きな変化なようで。特にgroep2からgroep3(小1)への移行は大きく、気後れする子どももいると聞きます。
最初の1週間は、先生も生徒も調子を整えていく週
オランダの新年度の教室を見ていると、とてもゆったりしていることに気付かされます。クラス(メイト)は同じでも、1ヶ月半以上離れていた友だちと久しぶりに顔を合わせたのです。「はい、勉強勉強!」なんてまくしたてるのではなく、ゆったり、のんびり「お互いを知ること」を大切にしている先生も少なくありません。
感情のカードを使ってアクティビティをしてみたり、自分のことや夏休みの思い出を話したり作ったりするアクティビティをしたり、一緒に何かを作ることで協働する時間をメインにしてみたり…とにかく、「知り合う」「ゆったり時間を共有する」ということに時間をかけます。
「オランダの子どもたちはグラデーションの中で育っていく」
これは、私がこの国の教育を見ていていつも感じることです。「けじめをつける」とか「切り替える」というような”急な変化”で子どもたちを制するのではなく、ゆっくり、ゆったりできる時間の中で子どもたちの発達や成長を見守っているように見えます。
学校説明会は夜開催!
タイトルの通り、娘の学校説明会はいつも夜に行われます。全校生徒の保護者全員が入るとは到底思えない広さの狭い体育館ですが、それでも説明会はいつも行われます。笑 立ち見の人が出たりもしますが、問題ありません。
全体に向けたプレゼンテーションが終わると、各教室へ。担任が教室にいて、そこで軽い挨拶から始まり、保護者がそれぞれ「○○の母です!」とか「○○の父です!」なんて言い合って、お互いを知ります。それからこの1年で何をどのようにして学ぶのか、どんな学校生活を予定しているのかなどの説明を担任たちから受けます。算数、国語、ワールドオリエンテーション、体育…などなど、学校の特色の説明をしてくれたりします。
面白いのはこのプレゼンが決して教師からの一方通行ではないこと。保護者は次々に途中でも質問を投げ、教師たちはそれに答えていくかたちでプレゼンが進むのです。ここにも「講義型」ではなく「参加型」の社会のあり方が見えます。誰でも質問をして良いし、全員がこの場を作る一員としてウェルカムなのです。「全ての話を聞いてから質疑応答」とならないところが、私の好きなところです。私もいくつか質問をさせてもらって、参加型の社会を体験させてもらいました。
子どもの面倒は誰がみているのか?
全体の説明会は19時から始まり、クラス別の説明会は19時半から始まりました。子どもが複数いる家庭は夫婦で分担して別々のクラス会に参加したりしています。ではこの時間帯、一体誰が子どもたちの面倒をみているのか…といえば、どの家庭も、だいたいこういった日はベビーシッターを雇っています。こういった全体の場所に子どもを連れてくるのはご法度。特に娘の小学校では、「大人向けの行事」と「子ども向けの行事」がきちんと分けられているように思います。19時と言えば、家庭によっては子どもたちは就寝しているので、こんな遅い時間に子連れで説明会に来るのはそもそも非常識なのかもしれません。事実、説明会中に子どもは1人も見ませんでした。
日本では「子どもの面倒を見る人がいなくて…」という言い訳が通用しやすいですが、オランダでは、時に「それはちゃんと自分でアレンジしなさい」と言われるように思います。つまり、あなたの不手際によって他の大人たちがその不利益を被るようなことがないように大人として行動しなさい。と、言われているような感じがします。
母子で移住したての頃、ベビーシッターのアレンジが難しく、クラスメイトのママパパに預けることも憚られ、娘の懇談に出向く際「子どもを預けられないので、懇談に連れて行って良いですか?」と担任に聞いたところ「それはダメです」と言われました。「子どものことについて話をするのに、その子を連れてくるのはダメですよ。子どもの気持ちを考えてください」と。
他にも、同じような頃に近所でオランダ語のレッスンがあり、子連れで参加しても良いかと聞いたところ「それはダメです」ときっぱり言われました(一度だけいいと言われたことがありましたが…)。「オランダは子どもに優しい国」だと思われがちですが、人や場合によっては「大人の時間は大人の時間」という線引きをする人たちもいます。そしてそれは決して”冷たい”というわけではなく、“目的をはっきりさせている”ということなんだと理解できるようになりました。
クラスの保護者飲み会も”子ども抜き”で
そして、毎年恒例になりつつあつクラスの保護者飲み会も夜(20時)から開催され、参加してきました。もちろん子どもの参加はできません。我が家は今回は私だけが参加をして、義則は夜の仕事+娘の面倒を担ってくれました。22時半頃まで飲み明かし、保護者たちと喋ってとても楽しい会でした。
保護者が子ども抜きで話ができる時間には、学校のことや、子どもの悩みなど、子どもがいるとなかなか深く話せないことも話せます。そうやって”子ども抜き”で落ち着いて情報交換をすることはとても有意義だと感じました。オランダの子どもたちは世界一幸福と言われますが、その要素として「大人の幸福度」が挙げられます。大人の幸福度とはやはり「大人が大人でいられる時間、自分が自分でいられる時間」も大切にしているということだとも思うのです。
そういった意味で、何もかもに「子ども」を入れることが子どもの幸福につながるのではなく、「大人が大人として生き生きと生きられること」を大切にできれば、自然とそれが子どもに伝わるのではないかと思うところもあります。個人主義だと言われるヨーロッパで、個人主義が必ずしも「冷たい」ということではなく、「自分をちゃんと大切にすることで、誰かを幸せにできる」ということを学ばせてもらっているように感じます。
この記事を書いたボーダレスライター に
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税所 裕香子
Yukako Saisho
- 居住国 : ドイツ
- 居住都市 : ザールランド
- 居住年数 : 1年
- 子ども年齢 : 6歳、3歳、1歳
- 教育環境 : ワルドルフキンダーガルデン