《Special Report》モンテッソーリ教育法とは?
イタリア在住のボーダレスライター をしている、はるです。
こちらの記事では、私が日本とイタリアで教えていたモンテッソーリ教育法について書きたいと思います。
日本では近年注目されているようで、モンテッソーリ教育法について紹介している本や雑誌をよく見かけます。
なので、詳しくはよく分からないけれど、モンテッソーリという言葉は聞いた事がある!という人は多いのではないでしょうか?
モンテッソーリとは?
1、マリア・モンテッソーリ
1870年8月31日にイタリアのキアラヴァレという町で生まれ、イタリア女性初の医者となります。マリア・モンテッソーリは、医者として発達遅滞児達との関わりをきっかけに教育者の道へと進み、モンテッソーリ教育法を創り出しました。
イタリアの1000リラ紙幣には、マリア・モンテッソーリの顔が印刷されています。お札の顔になるなんて、その当時彼女がいかに子ども達の教育へ貢献したのかが良く分かります。
2、マリア・モンテッソーリの名言
“自由と規律はコインの裏表”
“子どもが上手くゆくと感じて取り組んでいるときは、決して手助けしないように”
“集中している子どもはとてつもなく幸せなのです”
“教師にとって最も偉大な成功の証は、子ども達があたかも教師がいないかの如くに仕事をしていること”(モンテッソーリ教育では、子ども達のする活動を”仕事”と言います)
3、モンテッソーリ教育の内容
モンテッソーリ教育の基本は子どもを観察することです。
モンテッソーリ教育の出発点も、子どもを観察することから始まりした。
マリア・モンテッソーリは子どもを観察することによって、子どもは自らを成長させようとする内面の力、敏感期、吸収精神という能力を持っていることを発見します。
例えば、誰も教えていないのに1歳前後で歩けるようになったり、周りの人の話している言葉を聞いてコミュニケーションが取れるようになったり、などです。
そして、その子どもの能力にあった適切な環境(室内の設定、発達段階にあった教具、子どものサイズにあった家具、モンテッソーリの考える大人からの働きかけ方など)を整えてあげることにより、子どもは自立していきます。
モンテッソーリ教育には、日常生活の練習、感覚教育、算数教育、言語教育、文化教育の5つの教育分野があります。
<日常生活の練習>
日常生活の練習は、モンテッソーリ教育の5つの分野の中で、子どもが最初に関わる分野で子どもの自立を促します。
ちょうど1歳半~2歳の大人の真似をしたがる時期(動きの敏感期)から始めると良いとされています。
教具は、子どものサイズにあった本物を使うので、丁寧に扱わないと割れたり、怪我をすることを学びます。
日常生活の練習には、お水を注ぐ、スプーンですくう、ボタンの掛け外し、くつの脱ぎ履き、手を洗う、ふたの開け閉め、アイロンがけ、包丁で切る、針で縫うなど、子どもの自立を促すお仕事がたくさんあります。
<感覚教育>
感覚教育を始める時期は、一般的に「感覚の敏感期」が現れ始める3歳からと言われています。
感覚教育の教具には、五感(触覚、嗅覚、味覚、視覚、聴覚)を使うものがたくさんあります。それらの活動を通して、大きさ、長さ、重さなどの量を学んだり、温度の違い、臭いの違い、味の違い、形、色などを学びます。
<算数教育>
算数教育は感覚教育を基礎としています。
算数教育の教具を使って、感覚教育で学んだ「量」が「数詞」(“いち”という呼び方) と「数字」( ”1”という記号) と一致することを学びます。
数の量を理解するのは、幼児にとっては難しいことです。しかし、モンテッソーリの算数教育では算数で何よりも大切な「量」を理解できるので、幼児でもたし算、かけ算、ひき算、わり算ができるようになるのです。
<言語教育>
子どもが「話す」ことから「書く」「読む」ことに目覚めていく「文字に対する敏感期」(4歳くらいから)の時期に、言語教育の教具を使って「書く」「読む」「文法」を学びます。
また、言語教育は、日常生活の練習と感覚教育を基礎としています。
日常生活の練習と感覚教育の活動を通して、えんぴつの持ち方、書くための手首の動きなどの準備をしているのです。
そのため、モンテッソーリ教育では先に「書く」ことを学び、文字と文字が組み合わさって意味を持つことを理解しなければならない、より高度な「読む」ことは後から学びます。
<文化教育>
文化教育には、算数教育と言語教育以外の音楽、美術、科学、地理、地学、歴史、天文学、世界の文化など幅広い分野が含まれています。
世界地図、動物、植物の名前やそれぞれのパーツの名称、外国に住む人達のことなどを学び、様々なことを知り、視野の広い子どもを育てます。
4、モンテッソーリ教育の教具
モンテッソーリ教育についての説明の中に頻繁に出てくる「教具」という言葉。
なぜおもちゃではなく教具なのか?
モンテッソーリ教育では、教具は、それを使うことにより、子どもの集中を促し、正常化へ導くという目的があるものを意味します。
教具は、使う子どもの発達の段階に合ったものが大前提で、それがぴったりと合っていれば、おもちゃで遊ぶ時とは異なる「集中現象」が子どもに見られます。
教具は、子どもに合うサイズであること、子どもが自分で出し入れしやすいこと、本物であること、色や形が美しいこと、清潔であること、壊れていないこと、紛失した部分がないこと、誤りの訂正も自分で気づきやすいこと(やってみて、正しくできたか間違ったかを、子ども自身で分かり、やり直せること)、秩序ある配置で置かれている(決められた場所にいつも同じものがある)ことなどに留意して準備する必要があります。
また、モンテッソーリ教具には「困難の孤立化」という特徴があります。
「困難の孤立化」とは、難しいことを一度に1つずつ子どもに伝えることを意味します。
例えば、日常生活の練習の教具で「着衣枠」というものがあります。それは言葉通り、着脱を練習する為の物です。
一般に売られている知育玩具にも着脱の自立を促す物がありますが、ほとんどが1つの中にいくつかの動きが一緒に含まれています。
モンテッソーリ教具の「着衣枠」は、それぞれにスナップ、ボタン、ジッパー、マジックテープ、ベルト通し、靴ひも、リボンなどが分けてあり、1つ1つ個別に練習できるように作られています。
なぜモンテッソーリ教育が子どもにとって良いのか?
1、一斉保育との違い
モンテッソーリ教育では、子どもには自己教育力があることを踏まえて、子ども達それぞれが必要なお仕事を自ら選んで行います。そして、子どもができた!と満足がいくまで繰り返すことができます。
大人から与えられた物を受け身で学ぶのではなく、興味のあることについて自発的に探求する経験をたくさんします。
また、モンテッソーリ教育では年齢の異なる子ども達が一緒に過ごすので、年上の子は年下の子を助け、年下の子は年上の子を真似し、相互に成長することもできます。
2、どの様なことができるようになるのか?
子ども達は、人間として成長するために、手先の器用さ、丁寧さ、秩序心、集中力、素直さ、自立心、喜び、同情心、自制心、自己肯定、自己訓練などを学びます。
順番を待つ、友達や困った人を助ける、使った物をきちんと元の場所に片付ける(次に使う人のために)、周りの人の迷惑にならないように気をつける、他人を尊重する、自ら行動できるなどの良い面が現れてきます。
3、モンテッソーリ教育を受けた著名人
Google, Microsoft, Amazon, Facebook, WikipediaなどのIT系の創業者の方々が有名ですが、他にも様々な分野で名の知れた方々がいます。
日本で話題のプロ将棋棋士藤井聡太、アメリカ元大統領のバラク・オバマ、ハリウッドスター ジョージ・クルーニー、発明家のトーマス・エジソン、世界的に有名なチェロリストのヨーヨー・マ、三重苦を克服して教育家、社会福祉事業家となったヘレン・ケラー、「アンネの日記」のアンネ・フランク、ワシントンポスト経営者 キャサリン・グラハム、アメリカで有名な料理研究家 ジュリア・チャイルドなどなど。。。
各々の分野で突出した才能を発揮したり、新しいことを始められたのは、モンテッソーリ教育が影響しているのでは?と感じます。
アメリカなどではモンテッソーリ教育を用いた大学まであるそうです。現在の日本では幼稚園までしかありません。(在日インターナショナルスクールを除く)
モンテッソーリメソッドの創設者のマリア・モンテッソーリはイタリア人ですが、実は、私の住むマントヴァ市でもモンテッソーリ教育の学校は現在、小学校までしかありません。
この公立のモンテッソーリ小学校は、息子が小学校に入学した次の年に開校したので、残念ながら息子は通うことはできませんでした。
将来、イタリアでも日本でもモンテッソーリの学校がもっと増えて、学校を選ぶ時、普通に選択肢の中にモンテッソーリ校が入っていたら素敵だなと思います。
モンテッソーリ教育に対しての誤解
モンテッソーリ教育では、子どもが自由に好きなことだけをしていれば良いと誤解している人もいますが、モンテッソーリ教育での自由とは、子ども達が自らを成長させることを目的に、自由に発達にあった教具を選んで、正しく使っている上での自由なのです。
先生達は、他人に迷惑をかけていれば注意しますし、間違えた教具の使い方をしていれば正しい使い方を知らせます。ただ遊びたくて、楽をしたくて選んだ活動なのか、興味があって何かを学ぶために選んだ活動なのか、子どもをよく観察して見極めます。
マリア・モンテッソーリとゴンザガ家について
私の住む町マントヴァ市近郊に、ゴンザガというモンテッソーリ教育にとてもゆかりのある町があります。
そこには、AMI(国際モンテッソーリ協会)公認のモンテッソーリ教具製造販売メーカー『ゴンザガレッディモンテッソーリ』があります。20世紀初頭、マリア・モンテッソーリの友人であったマリア・マリアーニ・ゴンザガ侯爵婦人の協力により、初めてのモンテッソーリ教具がゴンザガレッディ社で作られました。マリア・モンテッソーリはゴンザガ侯爵夫人から招待され、度々ゴンザガに滞在していたそうです。そして共に教具の開発をし「子どもの家」を設立させたそうです。
『ゴンザガレッディモンテッソーリ』には、MEMOモンテッソーリミュージアムが併設されています。
マリア・モンテッソーリが考案した当時の教具や家具など貴重な物がたくさん展示されており、モンテッソーリ教育の貴重な歴史を知ることができます。
モンテッソーリ教育に携わる日本の先生、モンテッソーリ教育を勉強中の方、モンテッソーリ教育に興味のある保護者の方々などには、とても興味深い場所だと思います。
将来、日本の皆様をこのMEMOモンテッソーリミュージアムへご案内できたらなぁなんてことを夢の様に思っています。
そして、日本人にはあまり知られていないマントヴァですが(2016年にはイタリアの最も重要な文化の町にも選ばれたんです!)もっとたくさん日本の方々が訪れるようになったらとても嬉しいです!