【オランダ】教室に謎の卵あらわる!?––子どもの認識に降りていくこと

こちらは一週間の秋休み中です、こんにちは、アムステルダムの有川です。

コロナの感染者数は相変わらずひどく増加中で、秋休みにここへ行こうあそこへ行こうと思っていたことがなかなか行動に移せないような状況です…

こちらの小学校では、学校と保護者間のコミュニケーションツールとしてアプリを使用するのが一般的です。面談の日程希望などもこのアプリを使用して連絡することができます。

紙の配布物はほとんどなく、お便りはPDFで送られてきます。
すぐに物をなくす私のような母親には、あのプリントどこ行ったんじゃ〜!とならずに大助かり。

以前から運用されてきたこのデジタルツールのおかげで、校舎に入ることのできないコロナ禍においても、保護者たちは学校の雰囲気を多少感じることができます。学校によっては毎日授業風景を送ってくれるところもあるそうですが、ムスメたちの学校は残念ながら毎日ではありません。

長引くコロナの状況下、学校教育においてもデジタルインフラの重要度は増す一方。
わたくしアナログ人間でして…とか言っていられなくなってきました、、、頑張ります…

そんな中、ちょっとおもしろおかしな授業の様子が送られてきたのでご紹介させてください◎

グループ1の4歳の次女の ”恐竜” をテーマとした授業です。
『謎の卵を教室で見つけました!卵からはどんな生物が出てくるでしょう?』

皆で観察しているのは「謎の卵」!!

教材の卵の孵化をリアルに待つ授業です。
先生たちと子どもたちがこの「謎卵」の孵化を真剣に待っている様子を想像するとなんだかとっても微笑ましい!

と同時に、この授業をどう理解したらいいんだろうかと私にはちょっと戸惑いも。
子どもたちは、孵化した時、「なんだおもちゃか〜い!」って落胆しないんだろうか…??

机上のカードを見ると、ファンタジーの世界観だけでなく、『卵生の生物にはどんなものがいるのか』を学んでいる様子がわかります。恐竜のカードもありますね!
その日学校から帰ってきた次女は、「蝶々の卵には黄色いのがあるんだよ!!」と何度も教えてくれて、興奮と共に知識を吸収していました。

それからは毎日「今日は卵どうだった?」と話すのが日課に。
「まだ産まれてないけど、ヒビが入ってたよ!あれ、おもちゃだったらどうする〜?」と、本物ではない可能性にも気が付いている様子のムスメ。

そして数日後、先生から以下のコメントと共に写真が送られてきました。
『卵が開いています!まだ何が出てくるかわかりません!』

…まさかのピンクのツルツルて。。

ムスメ「あれはきっとウサギだよ!だってピンクだから!」
ワタシ「ウサギは卵から産まれないのよ〜。」
ムスメ「でもピンクだからね!!!」

…卵生とかいうレベルの話ではもはやないですね。ピンクはウサギなんですね。

でも、そうか、と思いました。
我が家周辺は野ウサギがぴょんぴょんしているので、ホンモノのウサギはもう何度も見ているはずなのに、結局ムスメの認識はまだこんなもの。カオス!

言語体系が確立されておらず、つまり概念形成が不確かで、ムスメの認識はカオスとノモスを行ったり来たりの大移動中。
そう考えると、おもちゃの卵の孵化をリアルに待つ世界観は、この年齢の子どもたちにとってちょうどの現実なのかもしれません。

子どもたちを大人の認識や秩序に引き上げて参加させていくというよりは、大人が子どもたちの認識世界に降りていき参加しながら学びを作り出しています。
そしてそれは、子どもにファンタジーを提供しているということなのではなく、むしろ子どもの生活世界・子どものリアルからスタートしているということなのかな、そんなふうに感じました。

子どもの世界に降りていくって、普通の大人にはとても難しいことです。
子どもと遊べない大人、子どもと遊ぶと苛立つ大人はたくさんいます。学校の先生方には本当に頭が下がります…

そして!!!秋休み前についに!
『卵がほとんど開いています!!』

こっ…これは…飛ぶタイプですか!?

ムスメは学校から帰ってくるなり、「目がね!目が出てきたんだよ〜!!!!」と興奮ぎみ。

そのほかにも恐竜をテーマとした制作をしたり、恐竜の一生(卵が産み落とされて孵化して成長し、骨になって死ぬところまで)が描かれた絵カードを並べる活動や、Dino’s Kijkenという歌を練習したりしていました。

”恐竜” を題材に、生と死、生命の歴史や起源を、孵化を待ちながら体験的に総合的に想像的にそして創造的に学んでいる様子がとても伝わってきました。
とにもかくにも、ムスメの好奇心がかき立てられていること間違いなし!
クラスメートの中には恐竜のお洋服を着て登校している張り切りボーイもいました笑!

科学的な知識を整然と教える場所が学校だとつい大人は思いがちですが、リアリティとファンタジーが混ざり合って、むしろファンタジーがリアリティを拡張しているようなこの多要素で複合的な授業は、子どもの学習意欲をとても喚起している点においても、価値のある授業だなぁと思いました。

 コロナという見えないものと闘う世界に象徴されるように、大人にとってもあらゆるものがブラックボックスに思える今、私たちの見ている社会もリアリティとファンタジーの混ざり合った卵のようなものかもしれません🥚

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