【オランダ/ハーグ】自分と半径3m以内の人々を幸せにすることから始まる
こんにちは!
8/22〜8/29まで日本から来られた視察参加者の方々と合計6校の小学校を視察して、その後ずっと色んなことを考えていました。今回の企画は私自身がこれから何をしていきたいのか、どんな人間として生きていきたいのか、そんなことを考える機会にもなったように思います。正直、学んだことや得た情報が多すぎてまだまだ脳が混乱している状態です。笑
その中でも、今日は視察先で出会った校長先生たちの在り方について書きたいと思います。
校長先生には「明確な熱い」ビジョンがある
今回の視察も、たくさんの校長先生とお話する機会がありました。
「何か飲み物を飲むところから始めましょう!」
そう言ってドリンクを出してくれて、着席したところからいつも会話が始まります。参加者の皆さんが驚いたことの1つは、オランダの校長先生たちが全然校長先生らしくないことだったのではないでしょうか。
タトゥーにジーンズ、 Tシャツに短パン、スーツを着た校長先生など1人もいませんでした。それは彼ら自身が、内側に持ったものだけで勝負できることを意味しているからだと私は思います。服装や見かけで判断されるような、そんな弱いビジョンを持っていないという自信の現れだと思うのです。
そして、自分の人生哲学や仕事への姿勢、教育への真摯な気持ちを、今日初めて会った人にもしっかりと語ることができる。それが私たちが出会った校長先生たちの特徴だと言えます。それは要するに、普段からそういったことを考えて生きているからなのではないでしょうか。とてもオープンで裏表もなく、構えてもいない。心から溢れてくる言葉を語りかけてくれる。私たちが出会った校長先生に共通していたのは、そういうところなのではないかと思います。
「教職員を大切にすること」がとても大切な仕事
オランダでは教員不足が続いていて、その延長線上に校長不足もあります。管理職を目指す人の数が十分ではありません。その原因には、業務の多さが挙げられるでしょう。予算管理なども行い、オランダの校長先生たちは立派な「経営者」を務めなければならないと言われています。
予算管理やチーム管理をする上で必要なスキルは「マネジメント力」ですが、オランダに限らずフィンランドなどでも、管理職はこれを学問として学びます。「良いリーダー」は時代によって変化することを考えると、これは当然のことと言えるかもしれません。年齢とともに管理職につくのではなく、マネジメントができる人間が管理職になるのです。
それはつまり、校長と呼ばれる管理職は、教職員によって認められなければその座に就き続けることができないということでしょう。オランダでは「かたちだけのリーダー」は存在できません。何故かというと、オランダの教職員(公立私立問わず)は自分の意思で働く学校を選んでいます。それはつまり、「この管理職についていきたくないからこの学校を辞めよう」と、企業と同じように教職員が自らの意思で動くことができることを指します。よって、教職員を大切にしながら学校経営ができない管理職からは教職員が離れます。それは、学校が立ち行かなくなることを意味するのです。
自分の幸せを簡単に他人に譲ってはいけない
全ての校長先生は言います。
「良い学校を作りたいのであれば、私たちが幸せであることです」
さらに言うなら、「それを守り抜く強さを持っていますか?」というのが日本社会全体に差し出されたメッセージなのではないかと思います。
「自分の幸せを守り抜く」これは決して「わがまま」ではありません。結局、子どもたちは幸せな大人の側で幸せになれるということなのです。では、具体的に「大人が幸せである」というのはどういうことなのか。それは、人生が仕事に食い潰されていないということだと理解できます。さらに言うなら、バランスが取れた人生を歩んでいるということではないでしょうか。
バランスが取れているというのは、言葉の通り「偏りがない」ということです。偏りがないというのは、仕事も、家庭も、友達との時間も、趣味の時間も、余暇でしたいと思ったことができる時間も、それぞれがきちんと24時間という円の中にバランスよく入っていることを指しているように思います。
ある校長先生は言いました。
「日本の学校では先生たちはどれくらい働いているのですか?」
「もちろん人によりますが、組織全体が定時で帰宅できる学校というのはまだ少ないと思います」
「それは問題ですね。管理職は問題解決に取り組んでいますか?先生たち全体は何故早く帰ろうとしないんですか?それは組織が健康的とは言えないですね」
校長先生が言いたいのは組織が定時で帰れないというのは、管理職だけの問題ではないということでした。組織に属する一人ひとりが、「自分の幸せ、つまりバランスの取れた人生観を簡単に手放してしまっているのではないか」ということだと思います。そして、ここにおける1番の問題点は、その不健康な実態が子どもたちに移っていくということです。
自分(たち)を幸せにすることに注力した方がいい
これまで30校以上の学校を訪問し、時間をかけて校長先生たちと話をしてきました。彼らが心得ているのは、自分たちを幸せにすることから始めた方がいいということです。他の誰かを幸せにするのではなく、まずは家族を含めた自分を幸せにすることに主体的に取り組めなければ、組織は変わらないということなのだと思います。それはつまり、私たち自身の在り方なのです。
タイトルに書いた半径3mは、いわば適当な数値です。でも、とにかく「誰かを幸せにする」よりも「自分を(含めた家族を)幸せにする」に注力するのはどうでしょうか。もっと家族との時間を増やしたり、自分自身が幸せだと感じる時間を増幅させるための行動をとってみる。その主体的な行動は結局、幸せな組織人を生み出し、組織が幸せになっていくプロセスの一つなのだと思います。
この記事を書いたボーダレスライター に
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三島 菜央
Nao Mishima
- 居住国 : オランダ
- 居住都市 : バーグ
- 居住年数 : 3年
- 子ども年齢 : 7歳
- 教育環境 : 現地公立小学校