《Special Report》ニューヨーク・コロナ禍のオンライン授業とは!?

ニューヨークで生活するライターが、息子(11)と娘(7)が通う国連が運営するインターナショナルスクールの様子をレポートするシリーズ。いよいよ最終回です。

ご存知の通り、ニューヨークは世界的にみても、新型コロナウィルスの影響をもっとも受けてしまった地域のひとつです。学校も3月中旬から閉鎖され、オンライン授業に移行されました。
今回は、子ども達のオンライン授業についてレポートします。

学校は3月中旬から閉鎖。すべてのやり取りがオンラインに

ニューヨークに外出制限がひかれたのは3月22日ですが、学校では、その前からオンライン授業に移行する可能性をふまえて、動きだしていました。先生がそれぞれ対策を始めると同時に、「全校一斉に、クラス内で練習しておきましょう」とのことで、その日程も決まっていました。
実際は、練習予定日よりも前に休校となってしまったのですが、その時点で学校側も保護者も、心の準備はできていたといえます。子ども達は、本当に学校がなくなり、最初は「え?」という反応でしたが、意外にすんなりと受け入れたようです。

ちなみに、この学校では、通常から保護者へのプリント類や連絡帳はなく、先生と保護者のやり取りはすべてEメールです。オンライン授業に関しても、校長先生からの一斉メールに加えて、担任の先生や各教科の先生からメールを受け取るため、かなりの数のメールになりますが、何かあればすぐに直接連絡できるのは、保護者にとってはラクで、安心感もあります。

YouTubeやアプリを活用したオンライン授業

休校決定から1週間後に、オンライン授業が始まりました。
ジュニアスクールで、自宅にパソコン等がない生徒には、学校から支給されました。娘は自宅のiPadを使っています。
ミドルスクールの生徒は、通常から学校支給のパソコンを使って授業をしているので、引き続きそのパソコンを使っています。

授業は毎日、朝8時半か9時からスタート。
休み時間とランチタイムを挟みながら、通常通りの科目がほぼすべて網羅され、すべての授業が終わるのは2時すぎです。

それでは、具体的にどのように授業が行われているのか、いくつかご紹介したいと思います。

●ジュニアスクール

まずは、娘(ジュニアスクール2年)のオンライン授業の様子から。

ESL(English as a Second Language)は、ZOOMで授業をし、先生が提示した文章を読んで質問に答えるなど、シンプルな方法で進められています。
語学学習に欠かせないリーディングについては、普段から電子書籍を使っていますが、今回、さらに先生が選んだ電子書籍アプリをいくつか使えるようになりました。
アプリによっては、本を読んで簡単な質問に答えたら級が上がっていくので、モチベーションにもなるようです。アプリ上で、クラスメートと好きな本について紹介し合うこともできます。

算数の授業では、アメリカの小銭、つまりクオーター(25セント)や、ダイム(10セント)について、先生が送ってきたYouTubeのリンクで学習しました。アニメのキャラクターが買い物に行って小銭を払って、といったストーリを見ながら学ぶのです。その後、先生が出した計算問題を解いて、オンラインで提出します。

授業ないでも積極的にアプリが活用されており、たとえば『nearpod』では、各自が動物など好きなキャラクターを設定。Ready Go!(ヨーイドン!)で、先生が作った問題を解きながら、ゴールに向かって進んでいきます。
最後にポイントと順位が出るので大騒ぎ。横から見ていると、ゲームで遊んでいるように見えるのですが、「これ授業だよ」と言われて驚きました。

体育の授業は、先生から「自分の部屋から枕を取ってきて」などの指示があり、一斉に走って取りに行くというアクティビティがありました。
また、丸めた靴下を箱に向かって投げ入れて、1分間で何回入ったかを競うなど、家の中で体を動かす工夫がされていました。
ヨガやエクササイズのYouTubeリンクが送られてきて、「各自、好きなエクササイズをしておくように」ということもあります。

ジュニアスクールは、オンタイムのライブ授業ではなく、自習形式の授業も多いです。その場合、専用のアプリ『seasaw』に先生が課題をのせ、生徒は『seasaw』上で作業をして提出します。
自習形式は、親が付き添ってやらせる必要があるので、親の負担が大きいと感じています。

●ミドルスクール

息子(ミドルスクール2年)の授業は、ほとんどオンタイムでZOOMを使って行われています。
ESLでは、日常生活について話したりするほか、時事問題を受けて、“犯罪”や“正義”について考えを話したりする時間もあったようです。

算数の授業では、先生がアプリ『nearpod』で作った資料のスライドショーを見ながら学習し、先生の指示に従って、オンライン上で答えを書き込んでいきます。

音楽の時間は、みんなで音楽鑑賞をしたり、各自マイクをオフにして楽器練習をします。ドラマ(演劇)の授業では、生徒がペアを組んで一緒に短いシナリオを考え、セリフを言い合っていました。

教科にかかわらず、クイズやゲームを通じて学習ができるアプリ『kahoot!』もよく使われています。ジュニアスクールでもミドルスクールでも、アプリやYouTubeが活用されているのが印象的です。

さて、このように進められているオンライン授業ですが、一部の保護者の中には、「高い学費を払っているのに、それに見合う対応がされていない。サポートが足りない」といった意見もあるようです。
確かに、先生によって熱意に差があるのは感じますし、学校には「学習」以外にも期待される機能がありますが、それらは全く果たされていません。とはいえ、未曾有の事態のもと、学校としてはベストを尽くしてくれているのではないでしょうか。

習い事もプレイデートも、オンラインで

ニューヨークは教育熱心な家庭が多い街です。学外においても、「この状況でも、教育を提供する側も、受ける側もあきらめていない」という印象を受けます。バレエやピアノ、バイオリンなどの習い事も、かなり早い段階で、オンラインで継続することを決めたところが多いように思います。

息子が参加していたNY市運営の無料のバスケットボールのレッスンも、オンラインに変わり、「筋トレなどを一緒にしよう」というプログラムを提供しています。私たちは、「みんなとプレーしてこそ意味がある」と考えていますので、オンラインレッスンには参加していませんが…。
娘がマンツーマンで習っていたスイミングだけは、プールのあるジムも閉鎖されていますし、さすがにお休み中です。

外出制限が始まってすぐの頃、美術館などの施設や民間団体が次々と、無料のキッズプログラムを提供し始め、「この機会に色々楽しもう」と思っていましたが、学校のオンライン授業や宿題に追われ、時間的な余裕はほとんどありません。
子ども達にとっては、友だちから時々誘われるオンライン・プレイデート(お遊び)で、パソコン越しにおしゃべりすることが息抜きになっています。

ちなみに私は、知人(中国出身)から、「娘(9)に、毎日日本語を教えてほしい」と頼まれ、毎日一時間、スカイプで日本語レッスンをしています。
その女の子は、日本語のほかに、中国語、英語、アートのオンラインレッスンを受けているそうで、「とても忙しい」と言っていました。それ以外の時間は、iPadでゲームをしているそうです。特に親が仕事をしている家庭では、「家で子どもがダラダラと過ごすぐらいなら、オンラインの家庭教師を頼もう」と思うのかもしれません。

会えないままニューヨークを離れる友だちも

6月中旬で授業は終了し、すでに夏休みです。
そのタイミングで、例年通り、各クラス数名の生徒が、親の転勤、帰国などの理由で、学校を離れました。
最後の数ヶ月が先生にも友達に会えないまま終わってしまったのは、とても残念です。それでも、オンライン授業によって、「会えなくても、つながれる」という経験ができたのが、せめてもの救いかなと感じます。

子ども達の学校の合言葉は「a Better World(より良い世界)」です。
ここニューヨークで、国籍の違う子ども達と教師、保護者が一緒に体験したこと。この体験が、将来子ども達が大きくなったときに、「a Better World」を実現するための糧となることを願いながら、全3回のレポートを終わりたいと思います。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

*筆者の子ども達が通うのは私立学校です。アメリカは公立でもエリアによって教育システムが異なりますが、私立学校はさらに独自色が強いので、あくまでも個人の経験であることをご了承ください。

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