【オランダ/ハーグ】<日本の方向け>オランダの一大イベント”シンタクラース”のススメ(小学生版)

こんにちは!2024年12月5日(木)を終え、やっとオランダのシンタクラースイベントがひと段落しました…

「あぁ…やっと終わった」と胸を撫で下ろしている保護者の方も多いかもしれません。もしくは「何かよくわからないけど、シンタクラースとかいうイベントに巻き込まれて(笑)、よくわからない間に終わった…」という方もいらっしゃるかもしれません。笑

この記事では、(特に)オランダにある小学校に通われているお子さんを子育て中の保護者の方に「シンタクラースイベントとは一体なんぞや?!」というのを学校関係者としての視点も加えてわかりやすくお伝えします。

子どもたちは学校できちんと説明を受けているにも関わらず、保護者がよくわからないばっかりに、

「うちの家は何もしてくれなかった!!(ぷんぷん)」
と子どもに怒られたり、(時に)落胆されたり、
「わかっていたらちゃんとしてあげられたのに(ぐすん)」
と、保護者の方がご自身を責めないためにも(笑)、オランダにおける一大イベントであるシンタクラースにまつわる色々についてお届けします。

このシンタクラースのイベントを家族で祝うか祝わないかに関わらず、オランダの慣習や伝統的文化を知ることで、その土地で生きる人々や歴史を尊重するための一助になれば嬉しいです。

学校によって祝い方はいろいろ

まず、シンタクラースイベントについてお話しをする前に、このイベントへの取り組み方は学校によって大きく異なるということをお伝えしておきます。それは、このイベントが「宗教的背景を含む」という判断によって、そして、その学校に在籍している児童生徒「背景」の割合によって、どれくらい盛大なものにするか…というのが学校によって異なるからです。

よって、この記事でご紹介する内容に当てはまらない小学校等に通学されているお子さんもいらっしゃると思います。あくまでも「一般的に」、そして「常に例外はある」という観点でお読みいただけると幸いです。

シンタクラースって一体誰?(すごく簡単に)

シンタクラースに関しては諸説あるものの、主にベルギーとオランダで祝うお祭りです。オランダ語で正式には、Sint-Nicolaasと呼ばれ、歴史的神話として扱われています。

シンタクラースにはいくつかの特徴があります。

・スペインから蒸気船でやってくる
・オランダでは”ozosnel”という、日本語に訳すと「めっちゃ速い」という名前の白馬に乗っている(どんな名前)
・彼にはお付きの”(zwarte)piet”と呼ばれる者を複数名連れている

→近年、この”zwarte”の「黒い」という部分が(奴隷的な)黒人差別になるとして、これまでは真っ黒なフェイスペイントをしていた人たちが、「ちょっとだけ黒いフェイスペイント」に変化しています。「煙突を通った時に汚れたのかな?」くらいな感じになっています。どれくらい違うかは、こちらのYouTubeの違いをご覧ください。

https://youtube.com/watch?v=LFSsoCWi06E%3Frel%3D0
https://youtube.com/watch?v=BJeAvGrgWFU%3Frel%3D0

最後に…

・悪い子は、彼らがスペインに戻る時、一緒に連れていかれるとのこと(え?)

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「悪い子じゃないもん」

シンタクラースイベントはいつ頃から?

シンタクラースの雰囲気が街に漂い出すのは、だいたい11月前後から。クリスマスとはちょっと違った雰囲気で、特にシンタクラースの帽子や、マントなんかを中心に街の装飾が始まります。

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クリスマスとはちょっと違う雰囲気
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図書館のライトもシンタクラースモード

子どもたちを取り巻くシンタクラースのいろいろ

・プレゼントのためのリスト作り

この時期になると、bol.comintertoysなどがシンタクラースのプレゼント用のカタログの製作を始めます。それらのカタログは、スーパーのAH(Albert Hijn)Jumboなどに並びやすく、保護者とスーパーへ買い物に出かけた折に「これ持って帰る!」と持ち帰ることも。

それらのカタログの中には「欲しいおもちゃリスト」のページがあることが多いです。そして、
・リストを冊子から外す
・シンタクラースにお願いしたいプレゼントの写真を切り取る
・リストに貼り付ける、絵を描く
・窓の外から見えるようにリストを貼る
というようにして、リストを作ります。

子どもたちは「可能な限りたくさんの」プレゼントを選びますが(笑)、「選んだ中のいくつかがもらえるかもね〜」なんて言って、保護者は妥当そうなプレゼントを準備することが多いようです。

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・11月11日(※2024年):Sinterklaasjournaalが始まる

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子どもたちにとって「シンタクラースの季節だ!」という実感が最も高まるのは、Sinterklaasjournaalが始まった時かもしれません。2024年は11月11日から始まったSinterklaasjournaalですが、この番組を見ると、いかにオランダがシンタクラースというイベントに本気か、さらに国をあげて精力的に取り組んでいるかということがわかります。笑

Sinterklaasjournaalは、子どものための「シンタクラースニュース」で、スペインを出航したシンタクラースとピートを乗せた蒸気船がオランダに到着するまでのハプニング、そして到着してからの「はちゃめちゃなストーリー」を放映しています。毎年必ずハプニングがあり、子どもたちはSinterklaasjournaalを観ながら、「果たして本当に彼らはオランダに来るのか?!僕/私のプレゼントはどうなるんだ?!」ということをヒヤヒヤしながら観ています。

ちなみに、この放送はテレビでも、そしてインターネットを通しても観ることができます。多くの学校では、Sinterklaasjournaalが始まると学校のスナックタイムや、授業を通してでエピソードを追いかけます。また、自宅で家族と毎日観ている子どもたちもいます。

・11月16日(※2024年)シンタクラースご一行がオランダに到着

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「めっちゃ速い」という名前の白馬に乗ったシンタクラース←

2024年は11月16日に、これも都市によって多少のズレはありますが、遂にシンタクラースご一行を乗せた蒸気船がオランダに到着しました。ディズニーランドのミッキーマウスとは異なり(笑)、シンタクラースはオランダの複数の都市に同時多発的に到着します。笑 

Sinterklaasjournaalでは毎年異なる「特定の都市」に到着するストーリーとなりますが、実際はお住まいの近くの港や運河などに到着します。この時は、多くの人々が彼らの到着を一目見ようと集まり、盛大な野外パーティーが行われます。爆音が流れてお祭りムードになります。

また、多くの都市では到着後にパレードが行われ、複数のピートがpepernoten(クッキーのようなもの)やみかん、ちょっとしたおもちゃを配りながら練り歩くので、小さな子どもたちはピートの服装をしてパレードを迎えたり、zak(ちょっとした袋)を手にして、ピートからのお菓子をもらいます。

・家のどこかに、お供物(笑)を置く

オランダにやってきた、白馬(ozosnel)に乗ったシンタクラースとピートのために、暖炉や特定の場所に靴とニンジン、pepernotenなどを置いて、彼らが来ることを祝福する風習があります。また、プレゼントのリストを靴に入れておく家庭もあります。学校では、体育の靴をクラスで並べておくこともあります。

家庭の場合、翌朝にお供物がなくなっているのを見て「うちにも来てくれたみたい!」と興奮する子どもたちもいます。

また、これらのお供物がなくなった代わりに、小さなお菓子や、小さなおもちゃなどが「お礼」として置かれているのを見て喜ぶ子どもたちもいます。

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白馬(ozosnel)用のニンジン、peppernoten、チョコレートなど

・悪いピートが学校を荒らす(先生のストレス発散。笑)

ご一行がオランダに到着すると、子どもたちは「もうオランダにいるんだ!」と思いながら毎日を過ごす訳ですが、その信憑性が増すイベントが、「ピートの学校荒らし」です。このイベントは学校によってはあったり、なかったりするかもしれません。

ピートの中には良い奴もいれば、どうしようもない奴もいる訳ですが、その中でも「悪いピート」は、オランダに到着後、学校を荒らします。どんな感じかというと、こんな感じです。

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先生、ストレス発散しましたか?
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演出をどうもありがとう。笑

教職員は、前日の夕方頃から教室をぐちゃぐちゃにします。笑 机をひっくり返したり、ペンを床にぶちまけたり、トイレットペーパーを吊り下げたり…とにかく「悪いピートがきた」という状況を作り出します。この現実が子どもたちにとって「本当に来ている!」という実感をもたらします。もちろん、この片付けは子どもたち自身で「もー、ピート!!」なんて言いながら行われます。

・ピートジム(ピート体育)が行われる

学校によっては、この季節にpietengym(ピートジム)を体育で行う学校もあります。ピートの衣装を着て体育の授業を受けても良いし、シンタクラースのマントを身につけても構いません。これは、シンタクラースのイベントに合わせた体育の授業で、子どもたちはいつもとちょっと違った体育を楽しみます。学校によっては、この体育の授業を修了すると、ディプロマを与えてくれます。

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・つ・い・に!シンタクラースが学校にやってくる!

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12月5日は、最大級に盛り上がる日。多くの学校にはシンタクラースがやってきます。ここでもオランダ全土で同時多発的に、大量のシンタクラースが小学校に発生します。笑 学校の数だけシンタクラースが必要になるので、これまたすごい数です。

余談にはなりますが、この日のシンタクラース役を担ってくれる人が見つからない時、学校は保護者に「シンタクラースを探しています!」なんていう連絡を送ったりします。「やってくれそうなご近所のおじいちゃんいませんか?」という感じです。シンタクラース業界も人手不足です。笑

朝、シンタクラースは学校にやて来るのですが、子どもたちが学校に到着すると既に暗闇の中、爆音で音楽が流れている小学校も多いです。登校後、子どもたちや保護者はシンタクラースの到着を学校前で待つのがほとんどで、雨が降っていようと、寒かろうと、みんなテンションを上げながら待っています。そのうち、シンタクラースがピートを連れて様々な方法でやって来るのですが、トラックの場合もあれば、車の場合も。時にはトゥクトゥクで(え?)やって来たりします。

爆音でシンタクラーステーマの音楽を流す中、シンタクラースがピートを連れて到着し、子どもたちはここでも(ラッキーであれば)、peppernotenやみかんをもらいます。

到着が無事完了し、生徒全員が教室に戻ると、シンタクラースは教室を一つずつ訪問することが多く、子どもたちは握手をしたり、質問をしたり、写真を撮ってもらったり、ピートからお菓子をもらったりします。

・高学年の場合(工作、プレゼント、詩)

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さて、ここでは高学年の児童生徒向けの「違い」をご紹介します。

実際、始まる学年は学校によって異なりますが、高学年になってくると12月5日は少し違った祝い方をします。高学年では何が違うかというと、「12月5日に自作のプレゼントをクラスメイトに渡す」というイベントが行われます。これは”surprise maken”というイベントで、クラスメイトにサプライズプレゼントを作るというものです。

12月5日から遡って2週間〜3週間前に児童生徒は、まずクジを作ります。そこには、
・自分がハマっているもの、好きなこと
・サプライズにどんなものが欲しいか
・プレゼントとしてほしいもの(だいたい€10で買えるもの)

なんかを書きます。

それを混ぜて、クラスでくじ引きのように引くのです。すると、「誰か」が書いた紙をもらうことになります。そこには、自分が書いたのと同じように“クラスメイトの”好きなものやプレゼントとして欲しいものが書かれています。ちなみに、誰のくじを引いたかは他言しないルールになっています。児童生徒はそれを家に持ち帰り、保護者と相談をして、12月5日に間に合うように工作サプライズプレゼントを準備します。

また、この工作をするのと同時に、韻を踏んだ「詩」を作ることもサプライズの一部です。その人を象徴する文面、かつサプライズやプレゼントに関連する内容で、韻を踏んだ文面の詩を作り、手紙として添えます。ちなみに、「韻を踏むってどうしたら良いの?!」とお困りの方には、韻を踏む言葉を探すためのサイトもあるので、活用すると良いかもしれません。

また、購入したプレゼントを工作作品に隠すこともお忘れなく!

さて、12月5日には、そのサプライズ作品を見えないようにゴミ袋で覆い、学校に持参します。誰が自分のためのサプライズを作ってくれているのかわからないので、それを知るワクワクもあります。ちなみに、教職員同士や企業でこのイベントを楽しむ人たちもいます。

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教室の真ん中に並んだサプライズの品々
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「自分を想って作ってくれた」プレゼントを受け取る日

・12月5日はだいたいお昼まで

多くの小学校では、12月5日はこれらのイベントのみのため、午前中授業であることが多いです。また、夜は家族で集まって、家族や親戚内でプレゼントを交換するサプライズパーティーをする家庭もあり、食事やゲームなどを楽しみます。

・12月5日はプレゼントがもらえる、pakjesavond

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さて、シンタクラースが学校にやって来て、高学年はクラスメイトからのサプライズを楽しんだこの日の夜は、子どもたちが待ちに待ったプレゼントがもらえる日、通称: pakjesavondです。ただ、年齢や家庭によって「どのようにプレゼントがもらえるか」は異なります。

<子どもがシンタクラースの存在を信じている場合>
◼︎ 寝ている間に貰える
家庭によっては、サンタクロースと同様に「寝ている間に貰える」という設定にしている家庭もあります。

◼︎ご近所さんにお願いする
前もって購入しておいたプレゼントを袋に入れて、12月5日までにご近所さんに預けておき、12月5日の夜にドアを叩いてもらうことで「プレゼントがきた!」という演出をします。(うちは5年ほどこれを続けています)

◼︎シンタクラースを誰かにお願いする、雇う(笑)
ご近所さんに予めプレゼントとシンタクラースの衣装を渡しておき、実際に家を訪問してもらうパターンです。笑 ご近所さんが難しければ、よりプロフェッショナルな演出のために人を雇う家庭もあるそうです。笑

<子どもがシンタクラースの存在を信じていない場合>
◼︎12月5日の夜に手渡しで渡す

希望していたプレゼントを12月5日の夜に「シンタクラースのプレゼントだよ」というかたちで手渡しで渡します。

\ pakjesavondを境に、一旦シンタクラースイベントは終了です!/

Sinterklaasjournaalはもう少し続きますが…

その後、Sinterklaasjournaalはしばらく続きますが、プレゼントをくれた(もはや用無し←)の彼らのことを最後まで追う人たちは少ないでしょう。笑

学校によっては、彼らがスペインに戻るまでを見守る学校、クラスもあるかもしれません。

で、クリスマスはどうするの?

保護者にとって恐ろしいのは、シンタクラースでプレゼントをもらってクリスマスもプレゼントをもらうの!?というところかもしれません。笑

実際のところ、クリスマスに(シンタクラースと同じくらいの量の)プレゼントをもらうかどうかということに関しては家庭によって異なります。ただ、シンタクラースでたくさんのプレゼントをもらった場合は、「クリスマスはちょっと控えめに」と判断する家庭も多いようです。

そのご家庭の信条や宗教にもよるので、一概には言えませんが「家庭によって違う」という判断で良いのかもしれません。

なかなか避けては通れない「シンタクラース」

オランダに住んでいると、この時期にシンタクラースの存在を無視して生活することは難しくなります。それくらい社会に浸透しているイベントでもあり、子どもの方から「これってどうなってるの?」と聞かれることさえあるかもしれません。

お子さんがオランダにある学校に通っている場合、その学校で学校イベントとしてこの道を辿る場合、少しでもオランダの文化を知っておくことでお子さんと一緒にこの風物詩を楽しめるのではないかと思います。

学校や地域によっては例外的なものあるかもしれませんが、ここに書かれていることは「だいたいの流れ」です。この記事がオランダにお住まいの日本人の方々にとって、ご家族で、ご近所と、そしてお子さんとシンタクラースイベントを楽しむためのヒントになると嬉しいです!

三島 菜央

Nao Mishima

  • 居住国 : オランダ
  • 居住都市 : ハーグ
  • 居住年数 : 5年
  • 子ども年齢 : 8歳
  • 教育環境 : 公立小学校

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