【オランダ】小学校入学から1年:娘の通知表

ここのところオランダは「秋ですかいな!」というくらい涼しい日が続いています。
朝の最低気温は15度前後、最高気温も20度を下回るくらいの日々です。

そんな中、聞こえてくるのは「夏休み」というワクワクする言葉。
全然夏っぽくはない毎日ですが、夏休みがもうそこまできています!
(オランダでは、夏休みにコロナ期の教育活動を補填をするようなことはありません。苦笑)

オランダは日本と異なり、9月から新学期が始まります。

よって、夏休み前の7月というのは、日本で言う「学期末=3月」のようなもの。
学校に通う生徒たちにとっては、年度の終わりなのです。

我が家の娘も例外ではなく、9月からは1つ上の学年に進級することが決まりました。
オランダでは小学校は4歳から、義務教育は5歳からとなっているので、
娘は9月から正式な「義務教育期間」に入ります。

振り返ってみると、4歳の娘の小学校生活は、文字通り「遊びに満ちた」日々でした。
考えてみれば去年(2019年)の9月から小学校に通い始め、オランダ語も全く喋れない中で、彼女にとっての「小学校生活」はスタートしました。

日本の保育園に通っていた時は、夫婦が教員として共働きで余裕がなかったこともあり、

「保育園に行きたくない!」とか、
「お昼寝の時間がいやだ!」と、

言っていたこともあったのですが。

こちらの小学校に入学当初「オランダ語レベルゼロ」とも言える状況だったにも関わらず、
娘はこの1年、

「学校に行きたくない」

と一度も言うことなく、毎日元気に学校へ通ってくれました。

私としては、最初の数週間…いや数ヶ月くらいは泣きじゃくるだろう。
と、覚悟していたのもあって、

「んじゃ、行ってきます!doei(オランダ語でのバイバイ)!」

と手を振る娘を見ながら、開いた口が塞がらない。という状況でした。苦笑

私「先生とか友達が何言ってるかわかる?」
娘「わからん」

私「学校で友達と遊んでる?」
娘「うん、遊んでる!」

私「学校楽しい?」
娘「すっごい楽しい!」

私「もう一回聞くけど、先生とか友達が何言ってるかわかる?」
娘「わからん」

私「…でも、学校楽しいん?」
娘「めっちゃ楽しい!」

….何でなん。
何でなんだー…

という問いを繰り返していたことを覚えています。

もちろんこれは、彼女の性格によるものだったとも思うのですが、
「開いた口が塞がらない」という私の状況に対して、周囲のオランダの保護者たちは、

「子どもっていうのは、親が知らないところでしっかり人生を楽しんでいるものよ!」

と、ウインクしながら教えてくれた1年でもありました。
(実質学校に登校していたのは約4ヶ月程度なのですが…)

とにかく、そんな娘もgroep1という最初の学年が終わるということで、
学校から「通知表」なるものをもらってきました。

実は、登校から最初の3ヶ月が過ぎた頃にも、通知表なるものをもらったのですが、それからは私たちが日本へ一時帰国をしたり、コロナの影響で学校が休校になったり…と、タイミングが合わず、結局学年末にもらうこととなったのでした。

「紙切れ一枚くらいかなぁ」

と思っていた私ですが、娘がもらってきたファイルを見て少し驚きました。
学校独自のデザインで作られらたファイルはとてもしっかりしたもので、

・学校からのメッセージ
・担任からのメッセージ
・4ページに渡る教育活動への評価

が含まれていました。

今回は、オランダのとある公立小学校1年生(groep1)の通知表の評価項目がどのようなものなのかを紹介したいと思います!

<運動能力に関すること>
・線を描くことができる
・片足で10秒立つことができる
・大きいボールを投げることができる
・小さいボールを両手でキャッチすることができる
・ジャンプすることができる

<手先の能力に関すること>
・粘土で1cm程度の球を作ることができる
・小さなビーズを紐に通すことができる
・正方形や長方形の形をハサミで切り取ることができる
・2本の線の間に1本の線を描くことができる
・ペンをしっかり握ることができる

<視覚に関すること>
・爪先、眉毛、肘、耳たぶなどの身体の部位を指すことができる
・ウインク、眉をひそめめる、怒った表情など、他の子供たちの態度を真似ることができる
・人の絵を書くことができる:頭、胴体、脚、腕、顔、足
・シンプルな家を作ることができる(レゴ、ブロック)
・円、正方形、三角形、長方形を模写できる
・より難しいパズルをすることができる

<聴覚に関すること>
・音を認識して物の名前を認識することができる。例:時計、救急車、飛行機、笛、電話
・3音節の単語を繰り返すことができる
・新しく習った歌を唄うことができる
・4つ以上のリズムを打つことができる

<記憶に関すること>
・Kim’s game:5つのオブジェクトを10秒間見てから1つなくなったものを答えることができる
・2音節できている3語からの4語を繰り返して言うことができる
・5語~6語でできている文章を繰り返し言うことができる
・2つの連続した指示の通り動くことができる 例) 2歩前に出て、1歩横に移動する
・3~4つの連続した数字を繰り返して言うことができる

<言語に関すること>
・言語理解/言語生成;与えられた質問に対して回答することができる
・フルセンテンスで話をすることができる
・カードを使って、10個の物に名前を割り当てることができる
・1番下にある、次の、上にある、外にある、真ん中にある などの概念を理解している

<読みに関すること>
・名前を書くことができる
・アイコンを使って作業ができる
・韻を踏むことができる
・同音異義語を認識することができる
・書き言葉の概念を理解している

<言語と思考>
・4つの絵を正しい順序に並べ、物語を説明することができる
・自分の意見に基づいた回答をすることができる;何故か、どうやってするのか、どう思うのか

<数字や数に関すること>
・序数、比較(大きい)、最上級(最も大きい)を知っている
・1~10を数えることができる
・量の違いを認識できる
・1-6の数字をカントダウンできる
・文字としての数字を理解している

<社会的/感情的な発達>
・感情を表現することができる
・新しいことに挑戦することを恐れない
・協調性がある
・教師や子ども同士で近づいて作業ができる

<生活に関すること>
・自分で着脱衣ができる
・自分で手を洗うことができる
・自分でトイレに行くことができる

<自立に関すること>
・自分で課題に取り組むことができる
・タスクボードから自分の仕事を選ぶことができる
・終わったタスクに関して、ボード上で順序を並び替えることができる

<サークル活動に関すること>
・サークルタイムの時に参加している
・サークル活動時、他の生徒の話をよく聞いている
・時にサークス活動で声を出して話をすることができる

<教具に関すること>
・おままごとの教具、車や道などの教具で学びことができる
・新しい教具に対して進んで遊ぶことができる
・1つの教具に対して5分~10分、集中して作業することができる
・様々な教具を選ぶことができる
・教具で積極的に学ぶことができる
・自分が選んだ課題に対して10分間集中して作業することができる

…というような内容でした。

娘の評価に関して言えば、言語に関するところが少し弱く、音節や語彙力というようなところは「まだできない」がありました。
ただ、娘のオランダ語は早くも私が理解できないレベルに達し始めているので、彼女にとって「第三言語」…いや、恐らく英語を忘れかけているので「第二言語」になるであろうオランダ語を、私たち保護者がきちんと学ばなくては、アカデミックなところでサポートをしてやれません。よって、こちらも日々精進しなくては!と感じています。

また、家庭では日本語を話している彼女にとって「家族の言語」である日本語は一番大切にしたいものです。
彼女がオランダ語を理解するにあたって、私たちが「概念」を説明してあげられるのは日本語なので、日本語の土台をきちんと作ることで「概念」を理解し、彼女が軸言語で習得した「概念」を別の言語に変換していけたらいいな。と思っています。

他のママと話をしていると、

「4歳、5歳の子どもたちは、1週間でも大きく違うから、出来ていない項目があっても、そこまで心配することはないと思ってるわ。そもそも彼らにこんな通知表は必要なのかしら?笑」

というような保護者も多く、

「子どもなんだから、評価なんかせずに子どもらしく生かしてあげようぜ!」

というような雰囲気を強く感じました。
確かに、4歳、5歳でこのような評価を渡されること自体、プレッシャーを与えかねないな、と感じます。

ちなみに、この4枚に渡る評価項目は「5歳用」であって、まだ5歳に満たない生徒たちはその半分の2枚の評価項目になっているようでした。
年齢に合わせて、評価項目の数が変わっているようです。

…とにかく、母子共に頑張ったこの1年。
娘は間違いなく大きく成長し、その姿は私たち夫婦をも成長されてくれました。

娘が持ち帰ってくれたこの通知表は、中身の評価が大切なのではなく、
彼女が1年間、マイノリティーながらも懸命に生き、生活してきた証として大切なものです。

さて、残り9日の学校生活。
最後は学期末を祝うパーティーがあるようなので、最後まで最初の学校生活を楽しんでもらいたいと思います!

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