【オランダ/ハーグ】節度ある大人と子どもが楽しむ、小学校の年度末パーティー
こんにちは!毎日天気の良い日が続いています。ただ、雨が少ないのはオランダだけではないようで…イタリアでは干ばつ状態で水の利用制限がかかっているそうです。当初、この夏はイタリア旅行へ行こうと思っていたのですが、目的地を変更してよかったのかな…と思いながら、何より雨が降ってくれたら良いなと願う日々です。
さて、私が住んでいる地域ではもうすぐ夏休みが始まります。それはつまり、年度末がやってきたということ。
年度末は毎年パーティーをするのが恒例
娘の小学校では年度末には「1年お疲れさん!」のパーティーをします。「します」と言っても、コロナの影響もあって私たちがこのパーティーに参加するのは今年が初めてでした。
“zomerfeest(夏祭り)”と呼ばれるこのお祭りを行うにあたって、1ヶ月前くらいから学校のアプリやクラスのWhatsApp(LINEのようなもの)は忙しくボランティアができる保護者を探していました。
娘の通う学校では、校外学習が多く、毎度保護者のボランティアが必要になります。今回のパーティーは夕方の16:30から。
午前中授業で一旦解散した後、16:30にもう一度学校に集合し、パーティーは20:30まで続きました。
クラスから立候補した保護者のボランティアは8名。それぞれタイムスロットで分かれた箇所で子どもたちが遊具などで遊ぶのを見守りました。
市から借りた遊具と、フェイスペイントや売店
校舎内への立ち入りは禁止されていたものの、屋外はハーグ市から借りた遊具がたくさんありました。そこには保護者が立っていて、1回遊具で遊ぶとスタンプを1個押されます。
カード自体は€5で、納めたお金はパーティー開催の費用や教育活動の運営資金に使われます。
また、コインは飲食物に使えて、10枚で€5でした。
正直なところ、これで€10とはなかなか高価というか、そこまでの価値があるとは思えません。でも、要は学校の教育活動を支えるためのお金です。保護者は喜んで支払っているように見えました。
市から借りてきた遊具には、さまざまなものがありました。
飲食店ではチップスやホットドックなどが売られていて、校門の外ではこの日のために一般のフードトラックが3台ほどきていました。
アルコールも出しちゃう小学校のイベント
恐らく、(今の)日本の学校であり得ないのは、このイベントで保護者向けのアルコールが販売されていることではないでしょうか。
ビールサーバーが設置され、ワインやビールがコインで購入できました。
大人たちはコインを手に並び、アルコール片手に保護者同士で立ち話を楽しみます。
専属のDJが音楽を流し、そこは屋外パーティー
外には大きなスピーカーが設置され、専属DJもいました。大音量で音楽を流し、場の空気を盛り上げてくれていました。
“節度ある大人”の存在がイベントを維持させる
ここでふと周囲を見渡してみると、パーティー終盤になってもベロベロに酔っ払っているような大人がいないことに気がつきました。そう、このパーティーは「節度ある大人の存在」が約束されているからこそ、このようなかたちでの実施が可能なのです。
子どもたちのパーティーで大人が公俗良序に反しないこと。実はこれって「子どもが真ん中」という考え方に基づいているのではないかと思ったのでした。もしこれで羽目を外すような大人が多発すれば、このかたちを維持することは難しくなってくるでしょう。
このパーティーはあくまで「子どもたちのもの」です。
それを履き違えて「大人が羽目を外すもの」と解釈してしまわないことがイベントそのものを持続させるために必要な前提なのかもしれません。
“大人が楽しい”は子どもに伝わる
そしてもう1つ感じたこと。それはこのイベントに来ている大人たちはイベントを楽しんでいるということでした。そして、その様子が私にはとても幸せそうに見えたのです。
もちろんこういったイベントはオランダの全ての小学校で実施されるものではないでしょう。しかし、少なくとも私が目の前にした風景にいる大人たちはとても楽しそうでした。そして、その楽しそうな大人の様子を子どもたちが間近で見ていることが、子どもたちの価値観を作る一助になっていると思ったのです。
結局、オランダの子どもたちの幸福度はこういった大人たちの人生を楽しむ姿勢や、その様子に基づいているのだろう。
そんなことを思いました。
学校に人々が集まることで、教育を”共育”に変えていく
今回のパーティーは、セキュリティチェックもなければ、招待制でもない、悪いことをしようと思えばできるし、何か悲しい事件が起きてしまえば、
「実施体制は万全だったか?」
と、社会から責められる余地しかないような行事でした。
でも、社会は、教育は本来、人を疑うことから始めるのではなく、信じることからあって欲しい。
学校という社会に開かれた場所の安全性が維持されるよう、社会が、教育が日々努めなければ、それはきっと簡単に崩れ落ちるのかもしれません。
この日の学校には多くの人々が集まり、教育を行う場所が”共育”の場所に見えました。そして、それがずっとそうであって欲しいと心から思いました。
1年という時間を過ごした教職員や生徒、そして保護者が、この1年をこういったかたちで締めくくり、「素敵な1年だった」と振り返りながら、次の1年もまた前向きに生きていける。そんなイベントだと感じた1日でした。
この記事を書いたボーダレスライター に
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税所 裕香子
Yukako Saisho
- 居住国 : ドイツ
- 居住都市 : ザールランド
- 居住年数 : 1年
- 子ども年齢 : 6歳、3歳、1歳
- 教育環境 : ワルドルフキンダーガルデン