【オランダ/ハーグ】”会話への割り込み”は無礼だと習うオランダの子どもたち
こんにちは!
冬休み後半から「早く学校始まらんかな〜」とワクワクソワソワしていた娘。朝から「めっちゃ楽しみ!」とルンルンで学校へ向かいました。
帰ってどんな感想を教えてくれるのか、楽しみです。
大人の会話に子どもが割り込んでくる時
家庭でも、家の外でも、大人同士が話をしている時に子どもが話に割り込んでくることはいくらでもあります。
仕事や学校の話、プライベートな話、真剣な話、ちょっとした会話…子どもはその瞬間を生きているため「今こっち見て!」という時にはお構いなしにこちらに話しかけてきたり、声を荒げてみたり、注目を得るための態度を示したりします。
そんな時、皆さんはどうしていますか?
オランダの小学校での「対話のグラウンドルール」
「グラウンドルール」とは、その名の通り、「地面のようにあるルール」ということで、基礎的なルールのことを指します。
娘がgroep2(小学校2年目)の時、ある日の食事中に「人がお話をしている時に、途中で勝手に話に入るのはダメなんやで」という話をしてくれた時がありました。
「大声をあげるのもダメやし、”Ik(私)、”Ik(私)!!!”って、指を上げながら声を出すのもダメ、そんなんしたら、みんなでお話しできひんもん」と教えてくれたのです。
実際に学校視察へ行くと、pre-schoolerと呼ばれる4歳〜5歳の子どもたちのクラスの多くは「サークル」を作ることから始まっていることがわかります。教師もサークルの一部に入り、皆んなの顔が見える状態から1日を始めるのです。来る日も来る日もそうやって「サークル」を作ることから始める…そうしながら、関係をつくりつつ「みんなで話をする時のルール」を固めていきます。
オランダの学習指導要領にもある「話の聞き方」
オランダの学習指導要領を見てみると、4歳〜5歳の児童生徒がクラスの中で他者との関わりの中で何を学ぶかということが明記されています。その中に、「自分の番がくるまで、話すタイミングを待つこと」や「お互いから学べるよう、話を聞くこと」なども含まれています。
オランダの小学校の先生と話をすると、「オランダの子どもたちに話を聞かせることはとても大変なんです」という言葉をよく聞きます。
「あなたの主張はあっても良い」と習うこの国の子どもたちは、とてもエネジェティックな場合も多く「私の話を聞いて!」「僕の言うことを聞いて!」という主張が強いこともしばしば。
しかし、全ての子どもたちの意見を一度に全部聞き入れることはできません。そのために「グラウンドルール」をきちんと固め、「誰にとっても安心安全な環境」を作ること、つまり「話の聞き方」を体得する必要があるのだそうです。
発言権は声の大小で決められてはいけない
もちろん全ての小学校で、全ての子どもたちにこの「グラウンドルール」がうまく作用していることはないと思います。これは教師の力量によるところが大きいでしょう。
オランダの子どもたちは多くの場合、自分が発言したいと思った時に、人差し指を上げて「自分の主張があることを示す方法」を学びます。
日本のように手のひら全体を見せないのは、それが歴史上受け入れられることではないからです。(余談ですが、大学生時代に留学生向けのスポーツイベントを企画運営をして、選手宣誓の練習をした時も、一部の留学生から”そのポーズはやめた方がいい”と指摘されました)
基本的には人差し指を立てて頭の上あたりに上げます、そして、教師に指名された生徒が発言許可を得ます。それは日本と同じですね。
しかし、あくまで指を上げる行為は「主張があるという意志」を示すものです。その意志が必ずしも許可される訳ではありません。
当てられてもいないのに、大きな声を使って発言したり、誰かが発言している時にカットインする児童生徒は、多くの場合、静止されています。そもそもそういった児童生徒の意見を教師は拾い上げないようにするそうです。なぜならルールに反しているから。声の大小が発言権に影響してはいけない。教師たちはそう言います。
大人の話の区切りを「待つ」子どもたち
これまで様々な学校を訪問、視察してきましたが、私が教師と話をしている時に、子どもたちが教師に用事がある場合、私もしくは教師の話が区切りの良いところで落ち着くまで待っている子どもたちをたくさん見てきました。
そして、教師もまたその存在に気づき、話をひと段落させると、
「どうしましたか?」
と、子どもたちの話にきちんと耳を傾ける姿勢をとっていました。
また、それは保護者同士が話をしている時でも同じで、話し込んでいるような状況を感じ取った時、例え自分の親に用事があったとしても「待つ」ということを知っている子どもたちを見てきました。
時には、保護者同士が話をしている時に、その状況を無視して割り込んでくる子どもに対して「今、話をしている途中でしょう。そういう時はどうするの?」と促す保護者にも出会ってきました。
大人になれば、会話に割り込むのは明らかにタブー
よく考えれば大人になってから、誰かが話をしている時、その片方の人に用事があったとしても、急に割り込むことは許されません。無礼です。
難しいこととはいえ、話が落ち着くのを待つか、話をしたい人の視界に入って自分がいることをアピールするなどして、待つ必要があります。
「お話し中ちょっとよろしいですか?」などと言う場合もありますね。
オランダの小学校の教室を見ていると、教師たちは次から次へと子どもたちの声を無造作に拾い上げることは、逆にカオスを招くことにつながると理解していることがわかります。
それはつまり、声を荒げたり、主張の方法が強い子の声が拾い上げられるという状況を作らないようにしているということではないかと思います。
「声を大きくすれば話を聞いてくれる」
「叫んだらこっちを向いてくれる」
「強い態度に出ると大人の注目を引くことができる」
こういったことが通用すると知った子どもは、それを乱用するようになります。
「しかし、社会では”声の大きい人の意見が通る”ということばかりが認められてはいけない。それは小さい頃から集団の中で習慣として学ぶ必要があるのではないかと思います。」
ある先生はそう話してくれました。
習慣は思考になる。
難しいこととはいえ、我が家でも娘が無理やりカットインしてきた時は「今お父さんとお母さん何してる?」と声をかけるようにしています。
その後、待ってくれた娘には「待ってくれてありがとう、どうしたの?」と戻ってあげるように。
時々、娘は学校のように指を上に上げて待っていることがあるのですが。
学校ではそう習っているので、そうした方が良いのかなと思っているのでしょう…笑
「必ず聞いてくれる」そういった安心があれば、娘はきちんと近くで待っていてくれる。そう信じて子育てをしたいなと思っています。
この記事を書いたボーダレスライター に
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税所 裕香子
Yukako Saisho
- 居住国 : ドイツ
- 居住都市 : ザールランド
- 居住年数 : 1年
- 子ども年齢 : 6歳、3歳、1歳
- 教育環境 : ワルドルフキンダーガルデン