【オランダ】娘が小学校を好きな理由

娘がオランダの現地校に通い出してから2週間が経ちました。
結局、2回目の金曜日が来た今日まで、娘は一度も「学校に行きたくない」とは言いませんでした。
これは親の私にとっても予想外…というか衝撃的なことです。

娘は日本にいた頃、インターの保育園に通っていました。
どこのインターとは書きませんが、私たち両親が納得するかたちのカリキュラムを提供するインターの保育園でした。

どこに納得したかというと、
「日本語教育、日本文化にまつわる教育が最も大切である」
と言い切るところでした。

「え?インターの保育園なのに?」
と思われるかもしれませんが、
「日本人としてのアイデンティティーをしっかり確立して世界に羽ばたける人間」を育てることを大切にしている保育園でした。
「英語が話せるようになりますよ」
「バイリンガル教育ですよ」
と、言語だけを謳わないところが気に入りました。
母語の確立が第二言語習得にとって必要不可欠!と思っていたのも大きな理由です。

…つまり、何が言いたいかというと、娘が通っていた保育園は“日本人として育つ上での躾”をきちんと行いながら、バイリンガル保育をしてくれていた。ということです。

子どもたちが英語を学んでいるからといって、躾まで海外仕様にする必要はなく。
むしろ、「そこまでやるのね」というくらい躾を意識されていたと思います。

しかし、そこには弊害もあり。
おそらくこれは保育園が嫌いだったということよりも、親がゆとりをもって子育て出来ていない状況にあったのかなぁ。なんて、今になっては思うのですが。
「行きたくない」や”足取りが重い日”もなきにしもあらずでした。

それはきっと、子どもながらに感じる”何か”だったのだと思います。
ルールが多い、とか、○○の時間がつまんない、とか、先生が叱ると怖い、とか…
あの頃の幼い娘に聞いたところで、本人でさえ何で行きたくないのかは説明できなかったはず。

そこで、今4歳の娘が全くオランダ語も話せない中で、何故「小学校に行きたくない」と言わないのか…ということを考えてみました。

・育てる側の心のゆとりの問題
前にも書いたように、日本にいた時は夫婦で共働き、フルタイム子育てでした。
お互い教員で、とても忙しい日々を送っていました。
よって、親として心の余裕がなかった…それが娘に伝わっていたのかもしれません。
「別に保育園自体は楽しいけど、なんとなく行きたくない」
仮に、親の焦りやイライラが伝わっていたとしたら、原因を作っていたのは私たちだったのかもしれません。

今は私が1人で子育てをしている状況ですが、ちょくちょく仕事は頂いているものの、日本で教員をしていた頃とは比べられないくらいゆったりとした暮らしです。
それが影響して、娘は精神的に気楽に小学校に通っているのかもしれません。

・英語でコミュニケーションが取れるから
娘は英語である程度の会話までは聞き取れるし、自分の意思を伝えることが出来ます。オランダ語が出来なくても、先生に英語は通じるし、クラスの中には多少なりとも英語を話す子どもたちもいるはずです。

…が、実はオランダ人は“世界英語力ランキング3位”とも言われているのですが、実際のところ娘のクラスの生徒に英語で話しかけても伝わらない子どもたちはたくさんいます。この状態から、どうやってこの国は”英語力世界3位の国”もっていくのか…とても興味があります。

話はずれましたが、娘にとっては「オランダ語が伝わらなくても、私には英語がある」という自信が学校へと足を向けるきっかけになっていることは確かな気がします。
(前述したように、英語が話せるのは教員であって子どもたちではありませんが、大切なことを先生に伝えられる。というのはストレスを軽減してくれるだろうな。と思います)

・学校で同化することを求められない
実はこれが1番大きい理由なのではないかなぁ。と思っています。

娘に「オランダ語わかる?」と聞いても「わからーん」と言います。即答です。
でも、彼女は「わからーん」と言いながらも毎日楽しそうに学校へ行くわけです。
正直、最初は「何でそうなる?」と思っていました。
「何か困ることあるやろう?」と。
「性格の問題かな…」そんな風にも思っていました。(たぶんそれもあります)

ただ、実際のところ子どもたちの様子を見ていると、親と離れる時に泣いている子はほぼいません。
登校日初日からして、日本に比べ、圧倒的に泣いている子は少ないと感じました。
要するに、多くの子にとって学校はストレスの少ないところ。
「行けば楽しい」と思える場所だから、結構簡単に「パパママばいばーい」となるのかもしれません。

ほとんどの子どもは恐らく保育園や幼稚園でもそういった経験をしてきているからか、「はいはい、別の場所バージョンね」となっているのかもしれません。(何故泣く子が少ないのか真意はわかりませんが…)

結局、ストレスが少ないというのは、学校生活で同化を求められないからなのではないか。と思ったのです。
要するに、
「こうしなければいけない」「こうあるべきだ」「ルールに従わなくては」
ということが極端に少ないため、自分をルールに当てはめたり、そこから外れることで注目を浴びたり…という経験をすることが少ないのだと思います。

オランダ人の国民性として「同じでなくてもいいじゃない」と思っていることは確かです。
ただ、うちの娘は比較的「みんなと同じようにしないと…」「先生の言う通りにしないと…」と思うタイプの性格の持ち主です。
そんな娘だからこそ、最初は心配したわけですが…
ただ彼女がそう思って「みなと同じじゃないと!」と行動しようとしても、周囲と合わせなければいけないようなことが、ほとんどないのかもしれません。

回りくどくなりましたが、何が言いたいかというと、娘はオランダ語を話せない、聞き取れないことで、周囲から、
「オランダ語が話せないとダメだよ」「オランダ語が出来なかったらみんなでこれが出来ないじゃないか」「キミのせいでこの活動が遅れるじゃないか」
というような発言や、視線、態度、雰囲気を子どもだけでなく、大人からも強いられていないのだと思います。

人間誰しも、周囲と合わせられないことを自分で自覚してしまったり、それこそ周囲から「え、なんで出来ないの」なんて視線や態度を浴びせられたら萎縮してしまいます。
そういったストレスがないからこそ娘の毎日は「オランダ語が話せなくても、学校は楽しい」になる。
ひょっとすると、これは娘の担任の力量なのかもしれませんが…

まだ4歳のクラスなので、そりゃそんな発言、視線、態度、雰囲気は求められないでしょう。と思われるかもしれませんが、実際にそういった場面はあると思いますし、子どもの中には意外とそういうのを敏感に感じ取って自分を修正していく子もたくさんいると思います。(それが悪いという意味ではありません)

例えば、幼稚園年少の子たちが整列して手を繋いで歩き、手を離して走ろうものなら、
「ちゃんと手を繋いで歩きなさい!」と言われている様子なども見たことがあります。(場所と場面によるとは思いますが、オランダでは危なくない限りそういったことをあまり強制しない傾向にあります)
そういった”ルールを守りなさい”というポイントが細かく、しかも数多くあると、子どもは知らずしらずのうちに「こうしなければ」をどんどん蓄積していきます。

そして「こうしないといけないのよ!」とか「ちゃんとこうしてよね!」とお互いに注意し合うようになり、ルールや規則を自分たちで確立していくのだと思います。
「こうするのが当然よね」というような常識の感覚も生まれていきます。

オランダの躾がゆるゆるなだけでは?と思われるかもしれませんが、確かに日本よりはゆるいと思います。…というのも、みんな他人に関心がないというのもあってか、細かいことは気にしていません。
「別にいいじゃない」という感じです。…特に子どもに対してはそうです。

ただ、見ていて教員が子どもを叱っている時というのは、
著しく誰かを傷つけた時、著しく(自分自身も含め)誰かを傷つけそうなことをしている時、著しく誰かの迷惑になる行為をしている時….

とにかく、“著しく”がポイントになりそうです。
「それってどれくらいよ?」と思われそうですが、このハードルは日本人からするととてつもなく低く感じると思います。
私の個人的な感覚でいくと「え、今叱らないの???????????!!!」という感じです。(もちろん個人差はあると思うのですが)

学校生活はほとんど見えないので、日常生活を挙げてみると、子どもが電車で靴のまま椅子に立つのはオッケーです。脱がしてる親を見たことがありません。←
子どもが電車である程度騒ぐのにも大人たちは寛容です。

娘がストライダーで勢いよく走っていて、大人の自転車とぶつかりそうになっても、叱られたことは一度もありません。「びっくりしたー!」くらいで、にこやかに去っていきます。(もちろん私は”sorry!”と言いますが)
子どもがオモチャの取り合いをしていても、しばらく放っておく親もいます。暴力が起きたときにだけ駆けつけます。

少し例が分かりにくいかもしれませんが、「子どもがしたことだから」と大人は基本的に行動に寛容です。「今そうやって学んでるんだよねー」という感じ。決して過度な監視はしません。時には「放置か?」というくらいに思うこともありますが…ただ、そういった意味で子どもたちはストレスフリーなのかもしれません。

ということで、娘の性格や持ち合わせている能力、そして、担任の力やオランダの教育の在り方が複合的に絡み合って、娘は大好きなDisneyCahnnelにも簡単に別れを告げ、学校へ通っています。

そして登校2週間終了を前にして、オランダ語で歌を唄い出し。
知らぬ間にオランダ語で1から10まで言えるようになっていました。
「これはスナック食べる前に唄うやつね」
「これは、ランチの前に唄うやつね」
「これは月曜日から日曜日までの歌」
「これは、コーヒーが熱い!っていう歌」

今日、担任に「コーヒーが熱いっていう歌唄ってる?」と聞くと、
「歌ってないわよ」と言われましたが。←

どんな歌でもいい。
どう理解してくれていてもいい。
楽しく通ってくれていれば。
あっという間の2週間でした。

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