【オランダ/ハーグ】時間割表もランドセルもない小学1年生

こんにちは!日本は4月で新しい年度が始まりましたね!
SNS上にある、桜と一緒に入学式や新たな門出を祝う写真を見て、勝手に日本の春を感じています。

日本にいたら、この4月で小学一年生になっていた娘。
ランドセルを買うこともなく、入学式を経験することもなく、2021年の9月にこちらで小学1年生になりました。
一年生になってからもうすでに半年以上が経過しているのですが、改めて日本の新年度の様子を写真で見ながら、オランダの新学期を振り返ってみます。

時間割のない小学一年生

オランダでは小学校に幼稚園の年中(groep1)と年長(groep2)がくっついた8年間を「小学校」と呼びます。groep1とgroep2を終えてgroep3(小学1年生)に進級するとき、「いよいよgroep3!」という感覚はあって、「本格的に読み書き算数が始まるぞー!」という感じではありました。

私としても異国で小学生になる子どもを育てるのは初めてなので、groep3(小学1年生)になる緊張感のようなものを少しだけ感じていました。

ただ、蓋を開けてみると何も変わりません。笑
先日、日本の教室に貼られた掲示物の写真を見て思いました。
・・・まずこっちには時間割表がないわ!!!!
これまで自分の人生においても当たり前だった「時間割」…そういえば娘の小学校にはありません。これは別に娘の小学校に限ったことではなく、オランダの多くの小学校に「年度を通して確定された時間割」は存在しません。

もちろん、施設を使う教科、例えば体育や音楽といったような教科に関しては施設を使うスケジュール上、(裏側で)時間割が存在します。ただ、それを印刷してもらって家に持ち帰って、帰りの会でれんらく帳に翌日の連絡を書いて、それに基づいて明日の授業の準備をする・・・そういったことは今のところ皆無です。

では一体、日々の時間割をどうしているかというと、これまで訪れた多くの学校では、その日の朝に「今日の時間割」を確認します。ただ、その時間割は前日の終礼で確認されたもの。よって、子どもたちにとっては「昨日聞いた話」です。

子どもたち自身がスケジュールを把握しているメリットよりも、教師がその時々の状況に合わせて柔軟的に時間割を変化させる方がメリットがあると判断されているようです。

小学一年生の娘は学校に何を持って行っている?

ランドセルを購入し、お道具箱のものに名前を書いて、筆箱もその中身も、給食袋も、何もかもを新調して「新しい年度」を迎える・・・そういった感覚とは無縁の中で9月に新学年を迎えた娘。

時々「オランダの小学生は学校に毎日何を持って行っているんですか?」と聞かれますが、正直なところカバンも必要ないレベルの持ち物です。汗

・水筒
・10時のスナックタイムに食べるフルーツ
・昼食
・体育の準備(体育の日だけ)

本当にこれだけで、彼女は教科書どころか筆箱さえも持っていきません。そもそも教科書は貸与物で、生徒一人ひとりの教科書は学校管理です。時々学校で終了したワークブックを持ち帰ってくることがありますが、それは最後のページまで完了したから持ち帰ってくるだけのこと。

オランダの多くの小学校では宿題も課されないため、学校から学習教材を持ち帰る必要がありません。娘の小学校ではときどき「これをお家で読んでね」というようなオランダ語のプリントを配ってくれますが、音読をチェックする必要もなく、「やる人はやる」だけの教材です。

気後れしなくて良い年度はじめ

日本の教育で育ち、公教育で教員として働いていた私としては、何だか拍子抜けするくらい「ふつう」だった新学年の始まりでしたが、それはある意味少し寂しいような、でも我が家にとっては「気後れ」の必要のない始まり方でした。

これが逆の立場で、私がオランダ出身の日本在住者だとしたら、高価なランドセルを揃えたり、全ての持ち物に名前を書いたり、ありとあらゆる書類に目を通して間違いなく提出したり・・・ということに精神的にも、そして金銭的にもついていけていたかな?と疑問に思います。

自分にとって「当たり前の文化」だからこそ何の違和感もなく受け入れていたものは、自分が日本人だからだったのだと思ったのです。逆に言えば、日本で暮らす外国籍の人たちにとって、この日本の文化はどう映っているのだろう。と思いました。果たして、日本の新年度の在り方は「全ての人々に受け入れやすいもの」となっているのか….

そういった意味では、何の変哲もない「ふつう」の、派手さもないオランダの新年度の始まりは、言葉通り「誰も置いていかれないみんなのもの」だったと感じています。誰にでも受け入れやすい、決して焦らされない、グラデーションのような成長を期待されているような、そんな心地よさも感じられました。

日本の文化はそれはそれで特異性が高く、その特異性こそが世界からしてみると「おもしろい」のかもしれません。そこに魅力があるのも事実です。桜と新年度のイメージは日本の「春の風物詩」とも言えると思います。

そこに「心機一転」とか「初心」、「初志貫徹」という言葉が添えられやすいのが日本の新年度だとすると、ある意味それをあえて強調しすぎないことで全体をあたたかく包み込んでいくのがこちらの文化かもしれません。

ゆるやかに、自分のペースで、グラデーションを経て

去年の9月に新年度が始まって以来、娘は宿題もなく、あれをやりなさいとかこれができるようになりなさいというプレッシャーもなく、放課後は友だちの家やうちの家で遊び、相変わらず学校は楽しくて、親としても娘の緩やかな成長を楽しむだけの日々を暮らしています。側から見ると「質素」にも見えるかもしれないこの毎日が、とてもあたたかく「ふつう」であることの幸せを教えてくれます。

きっと、日本でも宿題や塾通いなどから解放された子どもたちも増えてきているとは思うのですが、子どもたちにとって「子どもでいられる時間」は実はとても短く、その時間をきちんと謳歌できたという自信のようなものが、のちのち人生の豊かさにつながってくるのではないかと思うのです。

日本で新学期、新学年、新しい生活を迎えられた人たちや子どもたち、おめでとうございます。桜とともに開かれた新しい1年が”誰かのため”にあるのではなく、自分らしさを包み込んでくれる1年になることを祈っています!

この記事を書いたボーダレスライター に
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税所 裕香子

Yukako Saisho

  • 居住国 : ドイツ
  • 居住都市 : ザールランド
  • 居住年数 : 1年
  • 子ども年齢 : 6歳、3歳、1歳
  • 教育環境 : ワルドルフキンダーガルデン

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