【オランダ】歯科治療と5歳の自立
数ヶ月前の話ですが、娘がオランダで歯の手術を受けました。
現在は厳しめのロックダウン中のオランダですが、こうなる前の話です。
やっと行けた歯医者で匙を投げられた
コロナ期間中、虫歯の治療に行けなかった娘の虫歯が悪化し、やっと予約の番がまわってきたと思ったら、虫歯がかなり進行していたのでした。
これまでは娘と私は一緒の歯医者に通っていたのですが、どうやらそこは小児歯科が不得意なようで…やっと取れた予約で行ったにも関わらず、
「うちではこれは治せない…近くの小児歯科を紹介します」
と匙を投げられたのでした。笑
アドバイスをくれる小学校のママ/パパたち
その歯医者に対する不満や疑問がいくつかあったので、娘の小学校のクラスグループで質問を投げたところ、複数のママ/パパからいくつかアドバイスをもらいました。
その中で1人のママが歯科衛生士だということで、
「明日、学校の前で話をしましょう!」
と言ってくれたのでした。
翌日、学校の前でママがこれまでの話を色々聞いてくれました。
(匙を投げられた以外にも色々ありまして)
「…で、小児歯科はどこを勧められたの?」
と聞く彼女に、歯医者で勧められた小児歯科のHPを見せたのでした。すると。
「ダメ、そこの小児歯科には行っちゃダメよ。今すぐ予約を取り消して」
と言われ。
「??!?!??!」の私。
そこに別のママがやって来て、そのママにもその小児歯科のHPを見せたのですが、
「ダメ。そこには行かないで。何なら私が予約を取り消す電話をしてあげるから」
とのこと。(いや、まぁまぁ必死やな)
実は、前の歯医者で、そのダメと言われる小児歯科の翌日の予約を取らされていたのですが、あまりにもママたちにやめろと言われるので予約を取り消すことに。
そして、1人のママが、
「ここなら安心して大丈夫だから、ここに電話したら良いよ。うちの子もここで麻酔治療してもらって大満足!」
と、とある小児歯科を紹介してくれたのでした。
「新規申し込みって言うとウェイティングにかけられるから、緊急って言うのよ!◯◯(娘)は痛がっているんでしょう?膿んでるって言うのよ!絶対今すぐに予約を取りたい!緊急って!」
というゴリ押しのアドバイスを受け、電話でそう伝えたところ、その日の夕方に予約が取れたのでした。
歯の手術?!
そしてその日の放課後、娘を連れて予約の取れた小児歯科へ。
娘がシートに寝そべる前に差し出されたのは、数々の子ども用のファンシーなサングラスたち…
子どもは歯医者のライトが大人よりも眩しく感じることが多いらしく、子どもにはサングラスの着用を勧めるそうです。
(完全にバケーション/パーティーモードのサングラスをかけて施術を受ける子どもの様子は少し笑えます)
歯科医の先生が見ると、どうやら虫歯はかなり進行中…
レントゲンを撮影することになり、先生に別の部屋へ行くことを促される娘。
娘は少し不安だったようで、
「お母さんも来て?」
と言ったのですが、
「大丈夫。あなたは1人で行けるくらいお姉ちゃんよ!」
と励まされていました。
娘もその言葉に促され、1人でレントゲン室へ。
レントゲンの結果、神経には至っていないものの、歯の側面が炎症を起こし、歯茎にまで影響しているので手術をするという説明を受けました。
「手術?!」
となったのは私だけでなく、娘も…
「明日の夕方手術をします。麻酔医から説明があるので、こちらへどうぞ」
促されたのは、初老の麻酔医の男性がいる部屋でした。
英語で説明(大人用)→オランダ語で説明(子ども用)
麻酔医の先生に、
「オランダ語は話せますか?」
と聞かれ、
「多分、理解できないと思います」
と言うと、
「では、英語で説明しますね」
と、私に英語で説明をしてくれました。
その後、私が聞いた内容を娘に伝えたら良いのかと思いきや、
「では、娘さんにも説明しますからね。5歳はもう立派な子どもですから」
と、オランダ語で一通りの流れをきちんと「娘が分かるような内容」で説明してくれていました。
5歳の子どもにも「自立」を与える
「まだわからないことはある?」
「聞いておきたいことはある?」
麻酔医の先生は親である私を介するのではなく、手術を受ける娘がきちんと理解できるよう説明を繰り返してくれたところに、とても感動しました。
娘自身も先生の説明を聞き、
「それは何?」
「こうするの?」
と、麻酔用のマスクを指差したりしながら質問をしていました。
「親が理解しているから良い」のではなく、娘への手術に対する説明責任は、娘と執刀医との間のものなのだと強く感じました。
例え5歳であったとしても、1人の人間であり、個であることを前提に話が進められていく様子を見ながら、社会が自立を促す現場の一つを目の当たりにした気がしました。
麻酔で眠らせている間の治療
手術当日、娘の手術は16時頃からだったのですが、朝の9時頃から絶食となり、無事手術を終えることができました。
麻酔で眠る時は、私が先にシートに寝転び、娘を上に乗せるかたちで背後から抱きしめました。娘にマスクを着用し、呼吸をしながら麻酔の入った空気を吸います。
しばらくすると娘は眠り、麻酔医にお姫様抱っこされた娘を置いて部屋を出ました。その後、娘はマウスピースをつけられ、抜歯したようです。
手術時間は30分程度だったようで、その後、1時間程してから眠る用の部屋に誘導された私たちの元に、まだ眠ったままの娘が運ばれてきました。
麻酔の影響で深く眠っている娘はそこから1時間程度眠っていたように思います。
「目覚めた時のために置いておきますね」
と言われてテーブルに置かれたのは、何とアイスキャンデー…
「起きかけ、しかも空腹にアイスかよ!」
と思いましたが、ご褒美の在り方が何ともオランダらしい…のか?笑
目覚めた子どもは、身体がだるく感じることもあって、一瞬パニックになったり、泣いたりすることがあるので、その時は声をかけて抱きしめてあげてくださいね。と言われていました。
案の定、目覚めた娘はプチパニック&身体のだるさで泣いていました。
そんな彼女をなだめ、アイスを食べたいかと聞くと、答えは”ノー”。笑
(いや、そりゃそうよな)
無惨に溶けていくアイスを丁重にお断りして、歩けないという娘を抱っこして帰りました。
(オランダの子は食べるのだろうか。という一抹の疑問)
眠らせる手術じゃないとダメなのか?
前日に麻酔医の説明を受けた時、
「こんな大掛かりな手術じゃないとダメなんですか?」
と聞いたのですが、返ってきた返事は、
「オランダでは子どもに施す、よくある手術です。これくらいの子どもの年齢で、口の中の治療を長時間に渡ってしてしまうと、歯医者が嫌いになったり、最悪の場合トラウマになったりします。眠っている間に全てが済めば、”別に歯医者も悪くないな”って思えるでしょう。子どもたちには、今後のためにもそういう処置が大事なんです」
というようなものでした。
「こんな目に遭いたくない!」
という“辛い経験”から学ばせるのではなく、眠っている間に全てを終わらせて歯医者を嫌いにならないようにしてあげる…
何とも逆過ぎる発想に、一瞬「・・・」となったのですが、それがこの国の、いや、ほんの一部の歯科医(かもしれない)が持っている考え方なんだなぁ。と思いました。
帰りにはガチャガチャでおもちゃをもらって
手術後、歯医者を出る時にはガチャガチャをさせてもらい、おもちゃをゲット。とりあえず、彼女にとってはトラウマになるような経験にはならなかったようです。それでも、学校を休んで歯医者に行ったことが悔しかったらしく、
「これからはもっと歯を大切にしないとね!」
と言っていました。
オランダで初めて経験した手術。
乳歯を1つ失った彼女ですが、得たものもあったのかもしれません。
この記事を書いたボーダレスライター に
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三島 菜央
Nao Mishima
- 居住国 : オランダ
- 居住都市 : バーグ
- 居住年数 : 2年
- 子ども年齢 : 4歳
- 教育環境 : 現地公立小学校