【オランダ】パンデミックに見る市民教育の重要性

オランダでは昨日(3/31)にルッテ首相から公式なアナウンスがあり、休校措置の延長が決まりました。

日本大使館から届いた日本語要約は以下の通り

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  • レストラン等飲食店、美術館、美容院等の閉鎖は4月28日(火)まで(28日を含む)延長(注:4月27日(月)は国王誕生日)。
  • 学校は5月休暇(注:原則、4月25日(土)から5月3日(日))まで閉鎖。
  • 5月31日(日)まで(31日を含む)のイベント(サッカーを含む)の禁止は、維持。
  • 可能な限りの在宅勤務と自宅待機を徹底することを引き続き求める。
  • 復活祭休暇(注:4月11日(土)、12日(日)の週末前後)及び5月休暇について、オランダ国内外を問わず、外出・旅行を企画しないよう勧告。キャンプ場のトイレ・シャワー等の施設を閉鎖するため、使用は不可能。
  • 既存の措置は、一定の効果を発揮しているが、さらに4週間継続が必要。
  • 4月28日(火)以降のさらなる延長の可能性も十分ある。
  • 4月21日(火)の週に延長の要否を検討し、改めて発表する。
  • 医療体制については、4月5日(日)までにICU2,400床までの増床を実現。さらに、スポーツセンターやホテルを利用したコロナセンターを開設。検査数は既に現在17,000人/日まで増やしたが、限界である29,000人/日まで増やす予定。

加えて、ルッテ首相は、医療関係者の尽力、オランダ国民が困難な状況にあわせてライフスタイルを変更していることに感謝を表明しつつ、その上で、専門家の分析によれば、終結は始まっていないと述べ、4月28日(火)以降も通常に戻る訳ではなく、現在の国内措置の延長の見通しについても現時点では不明と述べました。

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話は変わって、
私たち家族は個人事業主としてこのオランダに滞在している訳ですが、政府からは€1050~€1500(12万円~17万円程度)の補助金(返済の必要なし)が3ヶ月間与えられることが決定したようです。

…ということで、うちもその恩恵を受けられるということがわかりました。
また、日本も一律10万円の給付が決定したと知りました。

気になるのは、その給付を受け取るための仕組みがどうなっているのか…ということです。

さて、昨日のようにルッテ首相は度々、オランダ市民に向けて公式会見を行っていますが、このコロナの一件以来、子どもたちに対しての説明責任にも力を注いだようです。

日本的な大人目線でいけば、政治や経済的な視点の話は大人によって理解され、子どもたちは大人の指示に従う…となりそうですが、子ども向けのチャンネルで、ルッテ首相が子どもたちちに話す様子を見て、オランダでは子どもたちも“社会を構成する一個体”として考えられているのがわかりました。

休校措置となった今、子どもたちにだって疑問はたくさんあるはずです。

「何でこんなに長く学校が休みになるのか?」
「今、世界の中でオランダはどんな状況なのか?」
「これからどんな風に物事が進んでいくのか?」

子どもたちが理解できるように説明責任を果たすのも政治家の仕事と言えると思います。
だって、子どもたちも未来の社会を担っていく大切な存在なのですから。

日本もこういった社会の在り方から学べることあると思っています。
つまり、子どもたちが“自分も社会の一員である”と自覚できるように社会全体が働きかけて子どもたちを育てていきませんか。という動きが、もっと日本にあって欲しいと思っています。

“市民教育”と言うと、少し大袈裟に聞こえるかもしれませんが、つまりは市民一人ひとりが「その国の一員である」という自覚を持つための教育を推し進める必要があると感じています。

自分が社会や政治に対して賛成も反対も含めて、「権利」を持つことの意味を知る教育です。
社会に属している、属しているからこそ生まれる責任や義務、それらの仕組みを知ることを、もっと教育の中に盛り込み、社会全体でも子どもたちの権利を大切にする雰囲気があって良いと思うのです。

そして、

“自分は自分だけで生きているのではなく、社会の仕組みの中で生かされている”

という、核家族化した日本の中では、もっと人との繋がりを学ぶ教育を盛んに行う必要があると感じます。

そして、主権者権である一人ひとりが繋がった時、人々は社会を変えられる。
そう信じられなければ、人間は社会に対して希望を持つことはできません。

ルッテ首相が子どもたちに対してオランダという国のコロナに対する政策について話をしたことは、一部でしかありませんが、日本の総理大臣は果たしてこんな風に子どもたちに語りかけることがあるでしょうか?

そして、大人たちもまた、
「子どもたちにもきちんと説明責任を果たさなければいけない」
と感じているでしょうか?

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「どれだけ署名を集めても、自分が選挙に行っても、何も変わらない」

そのような意識が蔓延した世の中に、希望はあるのか。
教育者は教育を通して、子どもたちの権利を認めていく必要があります。

また、社会全体でも、子どもたちの持つ権利の優先順位をもっと上げるべきです。

オランダは日本の九州程度の国土面積しか持たず、人口も日本の14%ほどしかない国ではあるため、そういう点では小回りが効くのかもしれません。
しかし、その14%の内訳を見れば、私たちのような外国籍の人々は非常に多く、異なるバックグラウンドを持つ人々を同じ社会の中で維持するのはとても難しいことだと思います。

このパンデミックの最中に発表された政府からの通達のあと、多くの人々がそれに従うことができるのは、まさに”政府への信頼”だと思いました。
そしてその”政府への信頼”とは、市民が”自分の権利”をきちんと行使しているという自覚があってのことだと思います。

「私(たち)は参政権をきちんと行使し、政治家を選出している。よって、その政治家によってなされる、あらゆる通達には従う義務を有している」

と、社会全体が自覚している。ということです。(もちろん市民全員ではありません)

政府のやり方に不満があれば、自分の権利を行使し声をあげる。
そうやって、自分たちの国を自分たちの力で変えていく。

そういった”市民としての自覚”は、大人になって急には芽生えないような気がしています。

子ども一人ひとりを”個”として認め、それぞれの権利の話や、対話を通して、学校教育の中で育まれていく自覚だと思っています。

娘の小学校のカリキュラムなどを見ると、それをより強く感じます。
また、家庭や地域社会においても子どもを”個”として扱う中で、子どもたちの中に”自覚”が生まれるのではないかと思っています。

そして、“市民と国家がお互いに監査し合うという健全な仕組み”の中で“健全な社会”が動き出す。

オランダが理想とは言いませんが、幸福度の高い国では市民教育が強化されている傾向があるような気がしています。

健全な社会を作るのは健全な市民教育から。

一人ひとりが義務を理解し、責任を果たす社会には明るい未来があるのではないかな。と思っています。

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