【オランダ】「12歳の進路決定」…そのタイミングは早過ぎるのか

オランダの初等教育は、groep1(4歳)から始まりgroep8(12歳)で修了します。
始まりの年齢は4歳と書きましたが、義務教育期間は5歳から。
そして、オランダでは原級留置(いわゆる留年)があるため、初等学校が修了する「12歳」という年齢も「必ず」というものではありません。

初等教育が修了する手前、groep8の生徒たちはその後の進学先を選択します。
その時に一つの情報として使われるのが「CITOテスト」という全国模試のようなテストの結果です。

オランダでは、このCITOテストという「全校模試のようなテスト」を、早い学校ではgroep5程度から受けさせます。

・CITOテストに慣れる
・成績の成長を長期間かけて観察する

というような意味がある、と現役教師から聞いたことがありますが、学年が進むと、子どもたちの中にはこの「CITOテスト」に関してナーバスになる生徒も出てくる。と聞きました。
また、私が以前話をした大学生たちも、小学生時代のCITOテストはとても緊張した。と言っていました。

CITOテストで得た結果は、その先の進路を決定するための情報として扱われます。
つまり、小学校を卒業後「どのタイプの学校に進学する?」というのを決めるための情報として、CITOテストの結果が扱われるということです。

オランダでは初等教育を修了すると、3つ進学先から1つを選択できます。
それら3つを日本語にすると、

・専門学校コース
・職業大学コース
・研究大学コース

という感じでしょうか。

恐らく、日本人がこれらの文字を見ると、「そりゃ、”研究大学コース”に行く人が多いのでしょう」と思うかかもしれませんが、実際のところはそうではないようです。

また、これら3種類の進学先は「レベル別」ではなく、「適性別」と称されることが多く、一概に頭の賢さで分けられている。とも言えません。
要するに、自分がしたいこと、学びたいことが学べる学校へ進学する。ということです。

これらのうちの1つの学校へ進学したとしても、後で進路変更は可能です。
つまり、職業大学コースに進学した後で、「やっぱり、研究大学コースでもっと勉強したいな」と思えば、そちらの学校へ編入することができる。という仕組みになっています。

しかしながら、実際のところを教師たちに聞くと、それには多大なる努力が必要になることも多く、なかなか思うようにはいかないこともある。ということでした。

それはつまり、簡単な例でいくと、
初等教育においてあまり学業面での成績が芳しくなかった生徒が専門学校コースへ進学し、その後「医者になりたい!」と思ったとしても、そこから「研究大学コース」へ移り、そのまま学業を続けて「医者になる」という夢を叶える。

…ということは、現実的に道が用意されていたとしても、実際にはあまり起こり得ないことである。ということです。

それは、オランダだけではなく日本でも言えることかもしれません。
(ここでは医学専攻における学費の議論はなしにしますが…)
「100%不可能ではないけれど、なかなか起こり得ないこと」は、世の中にたくさんあります。

ただ、努力をすればその道が残されている。
努力でカバーできる「道」がきちんと教育制度上にある。というのは、とても大切なことのように思います。

さて「12歳の進路選択」について色々調べていると、”10-14 onderwijs”というサイトにたどり着きました。

10-14 onderwijs

これは、文部科学省が関わっている研究なのですが、オランダにおける「12歳の進路選択」が本当に有益なものなのかを研究するため、「12歳の進路選択のない学校」を実際に設立し、そこで子どもたちを研究しているのだそうです。

この「10歳-14歳の学校」というのは、名前の通り、10歳-14歳の期間をこの学校で過ごす。ということ。
つまりは、この学校で過ごす間に「12歳の進路選択」はなく、15歳を前にして「進路選択が行える」ということです。

こういった制度に対するアプローチの仕方、とてもオランダ的だな。と思います。
日本は「6・3・3制」と言われ、小学校6年、中学校3年、高等学校3年。と決まっています。
高専や私立など、特別な場合を除き、この学年制は変わりません。

しかし、オランダでは学校を新しく設立し、この「10歳-14歳の学校」の在り方に賛同する保護者がこの学校を選択できるようにしています。

教育とはこのようにして、常に「現状が時代に合っているのか」を確かめながら前に進まなければいけなものです。
それはつまり、時代が前に進む以上、教育も常に問い直しが必要である。ということだと認識しています。

そして「問い直し」や「見直し」には常にコストがかかります。
長い議論の末、時に教育制度が大きく変わる時、
小さい制度の改革で変化が生まれる時、
そこには必ずコストがかかります。

要するに、制度を見直す姿勢がある限り、教育にはお金がかかる。ということです。

私は、この研究のために学校が作られ、研究がなされているところにとてもオランダらしさを感じました。
既存の学校の中で、この研究をすることは不可能に近いため、「学校を作って、今の制度が有益かきちんと見直してみようよ!」と、学校を作ってしまうところが、とても新しいと思うのです。

これらの学校を通して「12歳の進路選択」が見直される時、オランダの学制は変化するかもしれません。

今後の動きが楽しみです!

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