【タイ】思春期のトライ&エラーのススメ
みなさん、こんにちは!
私事ですが、数ヶ月前、12年半のタイ生活を終え、日本に帰国しました。
私にとっても長いブランクのある日本生活ですが、子どもたちにとっては初めての日本での生活に、一時帰国とは全く異なる心境、環境への戸惑い、学校や幼稚園生活や友達関係の複雑さに、毎日帰宅後のニュースが止まりません。
今後もボーダレスライターとして、この過渡期をお伝えしたり、変化する様子をお伝えできたらと思っておりますので、引き続きよろしくお願いいたします。
さて、今日ご紹介する内容は、在タイ中最後に考えた、トライ&エラーについてです。
バンコクで子育てをしているママたちがよく嘆くことに、「日本なら、子どもだけで習い事に行ったり、遊びに行ったりできるのに」とか、「せっかく塾送迎から解放されたのに、また送迎係に戻ってしまった」という類のこと。これほど日本人が多い環境であり、タイは比較的安全と言われていても、子どもの送迎は安全上必須になります(注1)。
親も子も安全で自由度が高い日本から渡航して来た場合、子どもは常に大人の監視下に置かれ息苦しさを感じたり、窮屈に感じたりするようです。親の方も今までより親子の距離が近くなったことで、我が子の様子が気になり、つい小言が多くなるとも聞きます。
注1)その分、習い事や塾にはバス送迎がオプションとしてついていることや、中学生になれば、子どもだけで行動するケースもあるようですが、個人差や家族の考え方の差もありそうです。
私は日本で子育てをしたことがなく、日本に一時帰国の際に見かける日本の子ども達の自立している様子に感心します。逆に、タイで一人歩きしている子どもを見つけると、親はどこにいるんだろうと心配で気が気でないことも。我が子たちは生まれてからずっとタイで過ごしているため、一人で外出はしたことがありません。一人で電車に乗るなんてもってのほか!むしろ大人なしでは不安で怖いそうです。
しかし、それは日本と比較した場合のこと。ではタイの子たちはどのように自立に向けた練習をしていくのでしょうか。
今回はタイでインターナショナルスクールに通う息子とその友だちが自分たちで計画した遊びの約束から、私が感じたトライ&エラー経験をおすすめする理由をお届けします。
日本にいても、タイにいても、思春期と呼ばれる時期には、親や周りの大人の価値観を疑い、子ども時代に身に付けた社会のルールや価値観、考え方などの正当性を問うようになります。自分たちでトライ&エラーをしながら、ルールを試す時期です。その期間を通過すると、自分にとって従うべきルールや文化の習慣、価値観を取り込んでいく時期に入ります。
しかし国際移動をするサードカルチャーキッズにとって、移動をすれば新たにその土地の文化や社会のルール、価値観を学び直すことになります。新たに学んだものに対して疑問を持ち、正当性を試すには時間がかかります。移動が頻繁な場合、学ぶことで精一杯で、試すまで至らない場合もあります。つまり、サードカルチャーキッズにとって、思春期を思春期らしく過ごすことが重要な課題だと言えるのです。
遊びの予定を立てる、というとそんな簡単なこと?と思われるかもしれませんが、今回子どもたちは初めて自分たちで遊ぶ計画を立て、親の予定や送迎の手配を確認し、親を介することなく遊び場に集まる計画をたてました。集合場所までの足の確保は、自力では行動できない土地ならではの苦労です。しかも計画の日は三連休の最終日。それぞれ予定や旅行がある中で集まったのは約10人。
私も息子から、この日にバンコク郊外にある遊び場でみんなで遊ぶから連れて行って欲しい、と言われた時、「え?それ誰が来るの?誰のママが仕切ってるの?本当に遊ぶの?」とかなり戸惑いました。今までそんなことはなかったし、プレイデートはママたち同士で連絡を取り合い、誘い誘われるという方法だったからです。どうやら子どもたちは、学校で話し合い、誰を誘うか決めて、その後はLINEでやり取りしながら決めたようです。
うん、とても新鮮!
当日、無事集まってワイワイする姿に、連れて来た親たちも「今回子どもたち、上手にオーガナイズしたよね!」なんて声を掛け合いながら、驚きと成長を感じずにはいられませんでした。子どもたちは自信と喜びに満ちた顔で、軽やかに遊び場の中へと消えていきました。
今回の経験には安定した人間関係の中で培ってきた友情と信頼があったことは大前提にありますが、日本とは違う手段でも、その土地のあり方に合った方法で子どもたちは自立に向けたチャレンジをします。タイ人ママたちは、「中学生になる12歳以降はもう少し自由にしてもいいかな」と言っていました。
数週間後にも再び遊ぶ約束をしてきた子どもたち。今度はモールに集合してから映画の時間や料金を確認し、それまでにランチする場所を決めてランチを済ませ、映画の前に別の遊びを入れるという何とも盛りだくさんなプラン。親たちは子どもにお金を渡してその間に所用を済ませたり、支払いのためについて回ったりしましたが、子どもたちは大満足な休日を過ごしました。
引っ越しを繰り返すサードカルチャーキッズには、親は子どもたちを自由にさせてあげられない事情があります。しかし子どもたちの失敗経験が少ないと社会のルールを判断できなくなったり、失敗経験も成功体験も十分でないと思春期が長引いたり、後から(それも大人になってから)思春期を行わなければならなくなったり、本人も周りの人たちもつらい時間を過ごすことになります。
親が思春期の課題を理解した上で、息苦しい、窮屈だと思う中でも、親が許せる範囲で安全を確保したトライ&エラーを試す道はあるはずです。親の管理下にいる間にたくさん失敗して健全な成長の機会を設けたいものです。
子どもたちを信頼して、小さなチャレンジから始めてみるのはいかがでしょうか。
子安 芙美
Fumi Koyasu
- 居住国 : 日本
- 居住都市 : 東京
- 居住年数 : 1年
- 子ども年齢 : 10歳、4歳
- 教育環境 : 公立小学校、私立幼稚園