【タイ】自分を大切に、人を尊重する教育、それが性教育 -後編-
−−−では、バンコクの日本人学校の場合はどうですか?
美並:日本人学校の場合は、日本の学習指導要領に則っているので、性教育は義務教育ではできないのです。バンコクは比較的安全だからあまり危機感はないけれど、アメリカやヨーロッパの現地校の場合、性犯罪がもっと身近にあり、親はもっと危機感を持っています。ですのでオンラインで自ら学んでいる傾向があります。本当はバンコクの日本人学校でも講座をしたいのですが、コロナ以降外部講師が学校になかなか入れず、今は日本人会の幼児向けサークルで、ケアの仕方を教えると共に性教育を少し学んでもらっています。小学生に上がる前にママだけでなく、パパにもシェアしながら性教育の知識と夫婦で価値観を擦り合わせて行って欲しいと思います。
−−−夫婦で知る、関心を持つということが重要なのですね。これまではバンコクの学校教育での性教育の現状を伺いましたが、りなさんは性教育についての課題はどんなことだと思いますか?
美並:女性がNO!と言えるようになって欲しいです。女性自身に選択する権利があることを伝えたいのです。女性自身が自分たちは弱いものとレッテルを貼って、自分を大切にしていないと感じます。それは、性的なことだけではなく、子育てに対してもなんです。
−−−どういうことですか?
美並:バンコクは家族の形態、家族の人種もさまざまなので、自分でその選択をしたからベストで、ほかの人と比べたり、羨ましいと思ったりしなくてもいいのです。例えば、子育て相談の場だと、日本の離乳食がたくさん手に入る人がいた時、羨ましいと思ったり劣等感を感じてしまったりする人がいます。自分はバンコクで手に入る離乳食でいいんだ、自分は自分でいいんだ、うちの家庭はうちの考え方でいいんだ、と思ってほしい。
−−−なるほど。女性として、母として、海外で暮らす日本人として、自分自身に選択権があって、自分を軸に生きていいんだよ、ということですね。
美並:むしろ女性とか男性とかじゃなくて、もっと自分自身を大事にしていいんだよということですね。「自分を大切にする」と「相手を尊重する」という、この二つは必ず性教育する際には一番最初に伝えています。現代社会において抜けているのは、ここの部分じゃないかなと思っています。
−−−性教育を通して、自分を大切にすることを知って、自分を大切にできたら、人を大切にできるし、そうやって育っていく子どもは、自分自身が自分の人生の中心になれるんですね。
美並:悩む時期はあると思うけど、一人でもそのままのあなたでいいんだよ、と言ってくれる人と出会えたらいいと思っています。性教育ではLGBTQ、性の多様性の話もするようにしています。今、日本では約10人に一人が性に関して悩んでいるというデータ*があるんです。もしかしたら、自分の子どもが性的マイノリティーの悩みを抱えていたり、またはお子さんがお友達から相談されるケースがあったりするかもしれない、ママが子どもの友達に相談されるかもしれないので、そんな時の対応の仕方や約束事も伝えています。
−−−りなさんは今後どのような世界になって欲しいですか?
美並:性教育は広い人間教育で、世界の状況もどんどん変わっていく。10年前はLGBTQって聞いたこともなかったし。でも変わらないものもある。私はそれが愛情であると思っているので、ボーダーのある世界ではなく、愛のある平和な社会になって欲しいです。
−−−まさに、ボーダレスブログです!最後に、メッセージをお願いします。
美並: 一人で悩まないで、バンコクには私がいるので、何でも相談してください!全部受け入れたいと思っています!
−−−心強いです。美並さん、ありがとうございました。
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バンコク在住看護師の美並さんに、性教育についてお話を伺いました。
美並さんはオンラインで講座を開催していますので、世界中から講座を受けることができます。
オンライン講座へのお申し込みはnoteから。
noteでは美並さんの命の教育への想いに触れることもできます。
https://note.com/brainy_zinnia885
ご興味を持たれた方は、美並さんのインスタグラムhttps://www.instagram.com/bangkok_kokoro_hokenshitsu/
をチェックしてみてください。
*データ出典
電通報「LGBTQ+をめぐる人々の意識は?~最新調査レポート」
子安 芙美
Fumi Koyasu
- 居住国 : 日本
- 居住都市 : 東京
- 居住年数 : 1年
- 子ども年齢 : 10歳、4歳
- 教育環境 : 公立小学校、私立幼稚園