【イングランド/ノッティンガム】”Study-Test-Test-Test”のススメ

こんにちは。Ryokoです。
イギリスの物価は何にしても高く感じますが、日本より安く経験できる数少ないものの一つがゴルフ。天気の良い日曜日など、息子は夫とともにDriving Range(ゴルフ練習場)に行くようになりました。小学生の6年間の週末のほとんどを軟式野球に費やしていた息子は、3-4回通うとある程度クラブを振れるようにはなってきました。

ショートコースを回る敷居はそれほど高くないので、もうそろそろ行ってみようかという話題になりました。私は「もうちょっとRangeで練習した方がいいんじゃないの?」と何気なく言ったところ、息子はすかさず「コースに出ないと上達しない」と。

その時にふと思い出したのが、息子が通う学校で行われたRevision Strategy (復習戦略)ミーティングの中での校長の話です。2か月後にはGCSE(General Certificate of Secondary Education:中等教育修了一般資格)試験を迎えるYear 11の生徒と保護者向けに、イースター休暇中の学習についてガイドを行うためのもので、ほかの学年にも共有されました。

“Study-Study-Study-Test”よりも強力

プレゼンテーションの中で、学習方法としてテキストなどを読み返してハイライトするよりも、記憶して(Remember)思い出す(Retrieval)ことの重要性が繰り返し強調されていました。そのためには”Study-Test-Test-Test”という方法が、”Study-Study-Study-Test”よりも150%強力であると、これまでの研究結果などから根拠を述べています。

・生徒は、テキストなどを読んで、読み返して、ハイライトする方法を好む。なぜならば本を閉じて思い出そうとすることより楽だから。
・テストするたびに思い出すことを通じて、記憶が容易になる。
・忘れることは良いこと。思い出すのが難しい情報であればあるほど、記憶は強くなる。

実際、GCSEや学校ごとのなど中間・期末試験などの一斉テストの目的の大部分は、第三者からの評価を得ることになっていると思います。それとは別の観点で、学習の方法として長期的な記憶や定着の向上のために自己をテストすることを推奨しています。

少し困難な学習方法をとろう

加えて、認知心理学者のRobert Bjorkが提唱した概念である、”Desirable Difficulties”(望ましい困難性)を紹介しています。

・学習があまりにも簡単な場合、心理的な労力が必要なく、そのため情報は長期的に覚えられる可能性が低くなること
・学習者が学習プロセスで困難に直面すると、実際には知識の保持と転移を促進することができること

具体的に、英語のスペリングテストを例に挙げ、少し思い出すのが難しい、学習条件を作るには、

・その週に教えられたスペリングパターンだけでなく、さまざまな週のランダムなスペリングをテストする。その後、正しいスペルを調べることに時間を割く。
・異なるタイプや文脈の問題をテストする。
などを挙げています。

校長自身は、25年間英語の教師としてキャリアを重ね、最近Doctor of Education(教育学博士)の学位を取得しています。その中で認知科学を利用し、学校での学習やテストの受け方の戦略を改善する研究を行っており、その内容は教師の間だけではく、生徒や保護者にもたびたび共有されます。それは具体的なアドバイスをするときは、なぜそれが重要なのか?という背景や理由とともにコミュニケーションすることが大切だと考えているからです。保護者としてミーティングに参加し、活発な質疑応答を聞くのも興味深い機会です。

ゴルフのコースに出ることは自分をテストすること。安定したマットの上で練習したら、様々なコンディションが異なる芝生の上で自分をテストして、学んだ知識や技術を思い出してみよう。

書店のGCSEコーナー。各教科のフラッシュカードも売られています。

参考:jork, E.L., & Bjork, R.A. (2011). Making things hard on yourself, but in a good way: Creating desirable difficulties to enhance learning. In M.A. Gernsbacher, R.W. Pew, & J.R. Pomerantz(Eds.), & FABBS Foundation, Psychology and the real world: Essays illustrating fundamental contributions to society (pp.56-64). Worth Publishers. https://bjorklab.psych.ucla.edu/wpcontent/uploads/sites/13/2016/04/EBjork_RBjork_2011.pdf

この記事を書いたボーダレスライター に
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秋吉 良子

Ryoko Akiyoshi

  • 居住国 : イングランド
  • 居住都市 : ノッティンガム
  • 居住年数 : 1年
  • 子ども年齢 : 12歳
  • 教育環境 : 現地私立中学校

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