【オランダ/ハーグ】自分の”特性”をオープンにできるクラスで

こんにちは!前回の更新からしばらく時間が経ってしまいました。
10月の後半は秋休みを利用して、友人家族とギリシャのクレタ島に1週間旅行へ出かけていました。all inclusiveで何もかもいたれりつくせりの状況の中、全ての家事や仕事から距離を置き、友人家族と思いっきり休暇を満喫させてもらいました!

人生や仕事において、「やりたいこと」や「やっておいた方が良いこと」はありますが、そういった全てから解放されることが休暇であると学び、あたまを空っぽにして色んな考えを巡らせることができたように思います。

1週間を通して晴天だった休暇。
「私はイビザ島(スペイン)に行く予定です!」と先日の懇談で話をしてくれた担任も同様に良い休暇を過ごしてくれていると良いなと思っていました。

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子どもの学校送迎が伴う小学生時代

オランダでは子どもが小学校の間は働き方をセーブする保護者も多く、その理由の1つに、「朝と放課後の送迎が必要である」という点が挙げられると思います。これは法律で定められている訳ではありませんが、子を持つ保護者にとっては当たり前の習慣でり、社会の慣習です。

うちも例外ではなく、朝は義則が子どもを学校に送り届け、放課後は私が迎えに行くというルーティンで役割を回しています。朝夕に子どもを自転車の後ろに乗せ「今日はどんな日かな?」「今日はどんな1日だった?」という会話をすることは、実はとても大切で、子育て上とても意味があることだと感じてきました。

「今日はどんなことをしたの?」「どんな1日だったの?」
それを毎日続けることで、そこから始まる会話から子どもの様子の変化に気がつけるようにもなってきました。

“自分の特性”について話をしてくれた生徒

休み明け、いつものように「今日はどんな1日だったの?」と聞いた私に、娘が「今日は、ミラン(仮名)がオーティズムについて話してくれたよ」と答えました。「オーティズムって日本語で何て言うんかな?」と聞いた私に、「日本語では自閉症って言うよ」と私は伝えました。

娘のクラスにはミランという自閉症の生徒がいます。小学校入学当初から娘はその子とずっと同じクラスで、この先卒業までずっと同じクラスで学校生活を送っていくはずです。その子がある日、自分が持つ”特性”についてクラスの子どもたちに話をし、どんな困りごとがあるかを話してくれたのでした。

どの学校、教室でも起こり得ることではない

ミランが行った”自己開示”は娘のクラスでこそ起きましたが、必ずしもどの教室で起こり得ることではないと思います。当該生徒とその保護者、そしてクラスの雰囲気によっては、行われないこともあるでしょう。

ただ、ミラン自身と保護者はそれを教室で公表して、皆んなに知ってもらおうという判断をしたのです。それはきっとミランだけではなく、家族にとっても勇気がいる行為だったでしょう。そんな彼らの英断に心から拍手を送りたいと思いました。

どんな特性があるか、みんなに知ってもらおう!

クラスでは生徒全員で彼女が持つ自閉症の特製に関する動画を見たそうです。他の人にとっては「ふつう」に感じられることが、彼女にとっては「気持ち悪いこと」になったり「居心地が悪いこと」になるということ、そしてそれは何故起きるのか。それを知っておくことで、私たちは「みんなにとって居心地が良い教室」をどうやって作り出せるのか?

ミラン本人もクラスメイトの前で自分が感じる「困りごと」について話し、子どもたちからは率直な質問も出たように聞いています。こうやって、生徒の抱える「困りごと」をオープンにすることで、全体としてそれを理解し、「みんなクリアにわかったね!」という共通理解を持つことがみんなにとって居心地の良い教室を作ることになる。

性教育に関しても、個人の特性に関しても、それぞれが個人の感覚で配慮や判断することを期待するのではなく、一度きちんとテーブルの上に出して全体で共有することで、全員がその事実を受け止め、一人ひとりが責任を持って環境を作り出す一員になるように努める。

私は、オランダの教育にはそういった土壌があると強く感じます。世の中での議論がタブーとされやすいトピックだからこそ、それを表面化させてヘルシーに話合おうじゃないか。そんな雰囲気を感じました。

ミランはね…と娘が教えてくれたこと

私は娘に、「ママがミランと関わる時に気をつけた方が良いことってある?」と聞いてみました。すると娘は、

「ミランはね、ちょっと音に敏感なんやって。だから、大きな声で叫ばれたり、みんなが声を合わせて何かを言ったりするのが苦手。だから、ミランの前では叫ばないであげてね。そんなことないかもしれんけど。笑

あと、ちょっと目が見えにくい時があるから、物を渡す時はミランが受け取れるように渡してあげてね。ポイって投げたりするのはなし。ちゃーんとしっかり渡してね。」

他にも聞いた話は色々あったのかもしれませんが、そんな風に教えてくれました。「わかった。お母さんも気をつけるね!」そう言って、娘に教えてくれてありがとうと伝えました。

保護者からのメッセージ

その日の放課後、ミランの保護者からクラスのWhatsAppに連絡が入り、

「今日、子どもから聞いたかもしれないけど、ミランが自分の特性についてクラスの子どもたちと話をしました!もしもっと知りたいことや質問があればいつでも答えるので、何でも聞いてくださいね!」
と届きました。

それに対して、複数の保護者が返信をしたのですが、どの保護者も、
「そうやって全体にオープンにすることはとても良いことだ!」
というメッセージを送っていました。そして、困ったことや出来ることがあれば遠慮なく言って欲しいというメッセージも送られていました。

ある保護者は、
「今日、ヒューゴ(仮名)からミランの話を聞いたけど、彼は”ミランはミランだから”と言っていたよ!その通りだと思う!」
と言い、とても素敵な言葉だなと思いました。そう。ミランはミランなのです。

私たちは凸凹です。だから、それを助け合うことができる。補い合うことができる。

「お母さんは、まだまだオランダ語上手に話せないことも多いから、そんな時は誰かに助けてもらわないとあかんことも多いしな〜。それも同じことかもな〜」

何気なくそう言った私に、
「そういう時は私が助けるから大丈夫!それで良いやん!」

「困りごと」とはどこにでもあって、その都度みんなで助け合えばいいじゃん。そうそう、物事って非常にシンプルなんだよな。そんなことを思った日でした。

この記事を書いたボーダレスライター に
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三島 菜央

Nao Mishima

  • 居住国 : オランダ
  • 居住都市 : バーグ
  • 居住年数 : 3年
  • 子ども年齢 : 7歳
  • 教育環境 : 現地公立小学校

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