【オランダ/ハーグ】産休を迎える先生に祝福を

こんにちは!今日も少し寒い&強風(風速80〜100km)が吹くオランダは、来週の金曜日から1週間程度の休暇に入ります。日本よりも中・長期休暇が多く、人々は頻繁にやってくるこういった休暇を楽しみにしています。

オランダを襲う教員不足

オランダは深刻な教員不足であることはこれまで何度か言及してきました。日本の九州程度のサイズしかなく、1700万人程度の国でも教員不足は深刻化しています。(もちろん日本も自治体によりますが)学校によってはひょっとすると日本以上に深刻な状況なのでは?と思うこともしばしば。

政府はこの問題に対して(個人的には)積極的に動いている方だと思います。給与ベースを上げたり、特に教育困難な学校の教員の給与をアップさせたり、さまざまな手を講じて教員を目指す人たちを増やそうとしています。私の周囲でも「教員を目指してみようかな」と、全く別の職種/業種から教員を目指すことにした人たちがいます。

何とかそれが良い結果に結びつくと良いですが…

娘の担任の先生たち

娘はgroep1と呼ばれる、小学校最初の学年(4歳)から現地校に入学し(オランダの義務教育は5歳からです)、3年目を迎えました。

オランダでは教師がパートタイマーである率が高く、お話しを聞いた校長先生たちによれば、フルタイムの教員を見つけることはとても大変なんだとか。それくらい、教師の働き方も自由で、一人ひとりが「働き方を選べる」ということの方が優先された社会であると言えるかもしれません。

娘のクラスに関して言えば、最初の2年は40代前半くらいの先生が担任でしたが、それでも5日間全てがその先生ということはなく、1日〜2日は別の先生が担任をするというのが普通でした。つまり、基本的に「複数担任制」なのです。

主たる先生が産休に

今の娘のクラスには、3日間担当の担任A先生2日間担当の担任B先生がいます。つまり、2名の複数担任制度によって、1つのクラス(23名程度)が運営されています。

詳しく言うと、1名は少しベテランの先生で、もう1名は最近教員になった先生です。そのうちベテランの先生の方が妊娠され、産休に入ることとなりました。

個人的にはこの「ベテランの先生が産休に入ること」がクラスの保護者にどんな風に受け入れられるのかな?と気になっていました。

「よかったね〜!」の方なのか、
「え〜…ただでさえ教師不足なのに…しかもベテランの先生の方が…」の方なのか。

保護者から聞こえてくる「おめでとう〜!」の声

学校側(校長)からアプリを通して、ベテランの先生が産休に入ることが知らされ、その後はどういった体制でクラスが運営されるかという連絡を受けました。彼女が産休に入るにあたり、娘のクラスの担任は2名体制から3名体制に変わります。一方で、隣のクラスは2名体制です。

さて、学校からの連絡を受けてWhatsAppグループで話題になったのは、
「おめでたいね!みんなで先生に何をプレゼントする?」
ということでした。

もちろんこういった「クラスグループ」が存在する学校もあれば、存在しない学校(クラス)もあるので、オランダの全ての小学校の全てのクラスにこういった「保護者のWhatsAppグループ」がある訳ではありません。私のクラスにはこういったイニシアチブを取ってくれる保護者が“幸運にも”いたので、保護者同士の連絡が活発になっています。

「ちょっと不安かも」というママの声

全体的にはもちろん”体裁上”「おめでとう〜!」となっていますが、よくよく個人で話をしてみると、
「ベテランの先生の方が抜けちゃうのはちょっと不安ね」
というママ(&パパ)が複数名いることがわかりました。

あるパパによると、産休に入るというベテランの先生は彼らの子どもの「得意な部分」を見出し、「エクストラ」の課題を与えてくれていたそうです。つまり、個々が持つ少し人より抜きん出ていたところに着目し、そこを適切に伸ばそうというA先生の強い意思を感じていたということでした。そして、それが残された先生にも出来るのか…というのが不安なのだそうです。

確かにA先生は「できる子&やる気のある子には、どんどんやってみると良いよ!」という感じで、学校のWebページなどにも「ここにプリントあげておきますね〜!」といろんな教材をアップしてくれていました。そういった先生がいなくなるのは、少し寂しいというか、不安だという保護者の気持ちも理解できます。

それでも「自分がその立場だったら」を考える

それでも、そのママやパパたちも話をすれば、結論は、

「みんなそれぞれライフステージがある。自分が彼女の立場だったら、やっぱり笑顔で見送って欲しいわよね。だから、やっぱり祝福したい。」

でした。

ある日の午後に娘が門前で娘が出てくるのを待っていた時も、別のママが、

「A先生のお祝いは△△(クラスのお世話をするママ)がやってくれてるのかな?先生のお祝い事は、自分たちのお祝い事として祝いたいわよね!」

と話をしてくれました。

優しさや思いやる気持ちを循環させようという行動

こういったことは今回に限ったことではなく、前の担任がコロナに感染して学校をしばらく休まなければいけなくなった時も、

「みんなで先生にお花とメッセージを贈ろう!」

と、プレゼントと子どもたち一人ひとりからのメッセージをビデオに編集して送ったことがありました。

私は、私の周囲のオランダで暮らす保護者がこうやって教師を学校を大切にする気持ちをとても尊敬しています。

「いつもありがとう」そう思っていたとしても、やはりきちんと言葉にして、行動にして伝えることを「実際にする」という行動力。

個人的な損得ではなく、全体を思いやることを優先する。
きっとそれは巡り巡って全体にとっての利益になり得る。
自分がその立場だったら嬉しいこと、心が温まると感じることならなおさら、やってみようじゃないか。

「そうだ、やってみよう」
自分1人じゃそう思えなかったことも、彼らのおかげで「やろうじゃないか!」と思えることがあるのです。

もちろん、全てのオランダで暮らす人々がそう思っている訳ではないでしょう。オランダで約6500校あるうちのたった1校の話かもしれません。

それでも、そういった温かいエピソードの数があればあるほど、教育はどんどん温かみを増していくのだと感じます。そして、こういった心温まるエピソードは、もちろん日本の教育にもあると感じています。

社会全体で教育を考え、関わっていく。
自分の子どものことだけではなく、クラスを、学校を、教職員を想う。
今回の経験を通して、また大切なことを教えてもらったと感じました。

この記事を書いたボーダレスライター に
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三島 菜央

Nao Mishima

  • 居住国 : オランダ
  • 居住都市 : バーグ
  • 居住年数 :  3年
  • 子ども年齢 : 6歳
  • 教育環境 : 現地公立小学校

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