【アメリカ / ボストン】娘がはまったミュージカル『ハミルトン』から学ぶ人種問題

2020年の思い出は何か、と聞かれたら真っ先にパンデミックが出てくると思いますが、それと同時に思い出されるのが娘が大好きで一日中聞いていたミュージカル「ハミルトン」です。

お家時間が多かったこの時期、暇な時間があればすぐSpotifyでハミルトン、車に乗ればドライブミュージックにハミルトン。
ゆっくりできる週末にはテレビをつけて映像とともにハミルトン、というハミルトンにどっぷり染まったここ1年でした。(まだ進行形ですが)

今回は、このミュージカルについて紹介したいと思います。

ハミルトンとは、アメリカ建国の父と言われるアレクサンダー・ハミルトンの生涯をミュージカルにしたもので、娘にとって憧れの存在となったリン・マニュエル・ミランダが脚本、作詞作曲すべてを手掛け、さらに自ら主役ハミルトンをも演じた(本当に天才!!)大、大、大ヒット作なのです。

その魅力の一つは音楽。これまでの常識を破った新しい形のミュージカルにはラップあり、ヒップホップあり、R&Bあり、バラードあり。エネルギッシュなダンサーたちとともに繰り広げられるステージには、200年前の当事者達の若さと怒りと情熱と希望が溢れ出ていて、聞いていて一緒になって熱くなったり、笑ったり、泣いたりできる圧巻のシーンが続きます。

またリズミカルな曲の数々は娘の心のツボにドンピシャだったようで(ところどころ汚い言葉も使うので気になる親御さん注意)、一度見ただけでマニュエル・ミランダの「ハミルトン」の世界に引きずり込まれてしまったわけです。

そしてもう一つの魅力、それは革新的となったキャスティングです。

白人たちの役に、あえて白人でない人種の俳優が起用されています。舞台の上でも多様性を重んじているのは、「アメリカという国はたった数人の白人たちが作った国ではなく、その背景にはたくさんの移民や女性たちの存在があったから」ということ。

その中でも「カリブ海の島出身のアレクサンダー・ハミルトンは貧困時代を乗り越え、イギリスとの独立戦争に深く関わり、新政権を作る重要人物となった波乱の人生を送っており、彼の生涯をヒップホップやラップで表現するためにはその音楽を生み出した白人でなはい有色人物である必要があった」とミランダは言います。

またアメリカの歴史の根本には奴隷制度があります。その事実はここに出てくる登場人物全員が犯した罪であり、それは残念ながら200年経ったいまのアメリカにも影響を及ぼしています。「現在の時代を生きるアメリカ国民たちはどんな容貌や人種であろうと、国の未来を変えるために発言する自由と権利があるということを強調したかった」というなことをプエルトリコ出身の両親を持つミランダは語っています。(詳しい歴史については専門でないので調べてみてください!)

2020年アメリカ、ミネソタ州でジョージ・フロイドさんが白人警官に首を圧迫されて死亡するという事件が起こりました。この事件以来、人種差別問題に対する抗議活動がアメリカを越え世界中で起こっていることは日本でも大きなニュースになっているかと思われます。いまご近所を歩くと家やアパートの窓には「Black Lives Matter」のサインがありとあらゆる場所で見られます。娘の学校からもメッセージが届き、子供たちと人種についてどう話すべきかという内容のサイトが送られてきました。

夏のある日、ステイホームで閑散とした近所を家族で散歩していたら不意に遠くから大勢の叫び声が聞こえ、その声が近づくにつれ抗議デモ行進がやってきていることがわかり、安全のため慌てて家に帰ったこともありました。
後になってその抗議活動には娘の学校の友達も参加していたことがわかり本当に私たちの身近で起きている切実な問題、という実感が湧きました。悲しい歴史は繰り返されてしまっているのです。
この問題に対して「他人ごと」や「無知」であることは犯罪でもあるかのような勢いで抗議活動は今も続いているように感じます。

話は逸れますが、数年前の夏に一時帰国した娘が東京を走るバスの中から外を眺めて言いました。
「いまここにいる人ひとみんなが家族みたいに見えるね!」

日本は単一民族の国です。普段、多種多様な人種が入り混じった環境に慣れている娘にとって、ほぼ日本人だけが集まった環境に違和感があったのかもしれません。そしてその様子を「家族みたい」と表現した娘に心が温かくなりました。

もともと無垢な子どもたちに人種差別という概念を与えているのは大人であり、そしてその間違った概念を正すのも私たち大人の責任です。

ミュージカル「ハミルトン」が社会現象にまでなったこの年、そして人種問題が目の前で露わになったこの年、この問題について家庭で子供と話すことは避けては通れない道となりました。

新しい年が明けましたが、我が家のハミルトン旋風はまだまだ続きそうです。

近い将来にこのミュージカルの日本語版が出るといわれてますが、このミュージカルを楽しみながら、一方で明るい未来へ向けてどんな問題を解決しなくてはならないのか、ご家庭で話し合ってみるのもいいかもしれません。

この記事を書いたボーダレスライター に
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りつな

Ritsuna

  • 居住国 : アメリカ
  • 居住都市 : ボストン
  • 居住年数 : 13年
  • 子ども年齢 : 9歳
  • 教育環境 : 現地公立小学校

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