【オランダ】学校が子どもの夢を守り抜く

子どもの頃、皆さんはサンタクロースの存在を信じていましたか?
サンタクロースの存在を信じさせてくれる大人たちの中で育ちましたか?

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今週の水曜日のことでした。
娘をいつも通り学校に送って行った時、校内の電気が全て消えていました。

「あれ?停電かな?」
と思ったのですが、よく見てみると学校の入り口の螺旋階段の上の方からトイレットペーパーが垂れ下がっていて、ひらひらと保護者の頭に落ちてきているのです。

「ん…何だこれ」
とりあえず校舎に入ってみると、それはそれは散らかり放題!!!!!!
紙は散乱しているし、
トイレットペーパーはあちこちにぶら下げられているし、
教室内にあるはずの教具は廊下の方まで出てきているし…

実はこれ、オランダとベルギー版サンタクロース…
その名も”シンタクラース”に関連している、ちょっとしたイベントでした。

サンタクロースの紛い物…そう思われても仕方のない、シンタクラースの説明を少し。

シンタクラースはスペインからピートという大勢の仲間たちと一緒にやってくる、オランダとベルギーにだけ存在する(?)この季節には欠かせないイベントの主役です。
シンタクラースは大勢のピートとやってくるのですが、悪い子はスペインに連れて帰ってしまうという言い伝えがあります。(怖っ…しかも何故スペイン。爆)
そして、大勢のピートの中にも色々なキャラクターがいます。
白雪姫の小人みたいな感じですね。
その中に”いたずら好きのピート”がいて。
彼が学校にやって来て、いたずらをして帰ったのだとか。

ちなみに、オランダにとってこのイベントはとても重要なもので、日本のEテレにあたるような局の番組で、毎日シンタクラースの様子が伝えられます。
今どの辺にいるか、とか
どんなアクシデントに見舞われているか、とか
ニュースキャスターに扮した女性が大真面目に、シンタクラースとピートの状況を毎日伝えてくれます。

このシンタクラースが、サンタクロースの代わりのようなものなので、子どもたちは毎日ハラハラドキドキ。
「ちゃんとプレゼントは届くのかな…?!!?!」
と、この番組を見るそうです。
その番組制作の力の入れようといったら、本気です。
大人が本気だからこそ、その本気具合が子どもたちにも伝わるのだと思います。

さて、その日の話に戻ると…校舎はこんな感じで荒れていました。

娘の教室の前では、いつもは教室内にいる担任がドアを閉めたまま外に立っていて。
もうこれだけでいつもと様子が違う…そして先生は困惑した表情をしているのです。
「もうどうなってるのかわかんない!みんなこれは何なの!?」
という感じで、子どもたちに話しかけてくれます。

子どもたちが登校してくる8:30を見計って彼女が教室を開けると…
これまた大惨事~!
「何これ?!もしかしてあの悪いピートの仕業!?」
と、子どもたちに問いかけます。

唖然とした様子の子もいれば、
なんだこれー!」と喜ぶ子、
この状況を嘆き涙する子…
とにかくみんなが“Oh nee!!(なんてこった!!)”な状況には間違いありません。

シンタクラースが各家庭を訪れ、プレゼントを置いて行ってくれるのは12/5なのですが、小学校ではその日を迎えるにあたり、約1ヶ月前からシンタクラースの歌を唄ったり、絵具でプレゼントの絵を書いたり、毎日放映される”Sinterklaasjournal”という番組を見て、”シンタクラースの今”を追い続けます。

街中どこへ行ってもシンタクラースの歌が流れているし、店頭に並ぶ商品はシンタクラースに関するものだらけ。
もちろん娘は1日1回…いやそれでは済まないくらい、シンタクラースの話をします。

これだけどこもかしこもシンタクラースに染められたら、そりゃもう「いる!絶対にいる!」と思うに違いありません。笑
そんな子どもたちが目の当たりにしたピートのいたずら。
娘はただただ教室に立ち尽くしていました。笑

ちなみに、サンタクロースを迎えるにあたり、クッキーを置いたり靴下を置いたりしますが、シンタクラースの場合にも、同じようにオランダ版のクッキーや靴などを置いて、プレゼントを待ちます。

…ということで、教室をよく見てみると子どもたちの体育館シューズにはマンダリン。
そして、どうやら一人ひとりにシャボン玉を置いていってくれたようです。
これで”いたずらピート”の株価も上がったような……

私としては、学校がここまで散らかっている状況を飲み込むまでに少し時間がかかりました。笑
学校というものはきれいに整頓されていて、物が大切に扱われる場所…
学習教材なども平気で床に落ちまくっているし、少したじろぎました。笑
「先生たち、本気でやりましたね…」という感じ。

しかし、私の感情とはよそに、子どもたちの表情は”夢を見ている”という感じ。
シンタクラースの世界を本物の世界だと思い、その世界に入り込んでいるようでした。

「今、この時間は子どもたちにとってファンタジーと現実を繋ぐものなのかなぁ」
などと思いながら、
“子どもには子どもなりの夢を持たせてあげる”
ということに大人が力を尽くすことは、リスクがあったとしても(物が壊れるとか)、守ってあげるべき聖域みたいなものなのかもなぁ。と思ったのでした。

とにかく、散々な状況には少し気持ちが追いつかないままに、娘をそのまま教室へ残し。
この日は、12/5に子どもたちに配るプレゼントのラッピングをするという学校のボランティアに名乗りをあげていたので、その部屋へ向かったのでした。

そこには男女15名ほどの保護者が。
オランダ語でやりとりをしているのですが、私はとりあえず状況を読む!
そして、ついにラッピングの準備が整ったので、みんなで取り掛かることに。
恐らく(?)低学年~中学年のおもちゃがあったはずです。
大小様々なおもちゃたち。
しかもホッケーのセットやボードゲームなど、
「え?これ学校からもらうの?!」
というレベルのおもちゃたちが本当にたくさんありました。
このお金一体どこから出てるんでしょうか…税金?

とにかくオランダママ/パパたちはとても手際がよく、最初はとても多く感じたプレゼントでしたが、あっという間にラッピングは終わり。
時計を見たら1時間程度で終わっていたのです…
効率を重視するオランダ人とは聞いていましたが(いつもそうではないにせよ)、何となくそういった雰囲気を学校のボランティアで味わったのでした。

各学年、各クラスから1名程度で集まっていたので、顔馴染みの保護者はいなかったのですが、少し話をしたりして、翌日からは挨拶をするような仲になれた保護者もいたので、それはそれで参加して良かったな~と思うのでした。

ちなみにこの日の学校帰り、娘に散らかったものをどうしたのかと聞くと、
「マルピーチェ(恐らくいたずら好きのピート?)はお片付けの仕方わからんみたいやから、みんなで片付けてあげたよ。もー!」
と言っていました。笑

誰かがしたいたずらを、みんなで片付けてあげる。
ま、そこから学ぶこともあるかなぁ。なんて思ったのでした。

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