【オランダ】娘にとって初めての宿題

少し前の話ですが、娘が学校から初めての宿題を課されました。
その宿題とは、“ポンポンと週末を過ごそう!”というもの。

まず、ことの始まりは金曜日。
娘を迎えに行くと、彼女が興奮気味でこう言うのです。
「お母さん、ポンポンが来たよ!」

…..”ポンポン”?
あぁ、ポンポン!
というのも、娘が小学校に通い始めた当初に全体向けの保護者会とクラス向けの保護者会があった訳ですが、その時に”ポンポン”というキャラクターの動画を見るプログラムがあるという説明を受けていました。
娘の学校では、このキャラクターを題材にした教材のもと様々な学習をするそうで、道徳教材としても活躍しているようです。
娘のオランダ語はまだ習い始め…ということもあって、たまに、家でも娘と一緒にポンポンの動画を見て、オランダ語を吸収したりしていました。

前置きが長くなってしまいましたが、その”ポンポン”が来たと言うのです。
でも一体…どこに?笑

娘は興奮を隠しきれない様子で何やら大きな藁バッグを持ってきました。
「見て!ポンポン!!!!!!」
そこには彼女と同じくらいの背丈のポンポン人形が横たわっていました。
そして、黒いバインダーも一緒に。

娘の説明だけではよくわからない私…
その場で中にあるフィアルを見て、状況を把握しようと努めました。

ファイルによると、どうやらポンポンは今まで色んなお家にお邪魔してきたようで…彼が各家庭でどんな週末を過ごしたか…ということを日記のようにA4の紙にまとめる…という、いわば”保護者”の宿題のようです。笑

娘の担任に確認してみると、
「ポンポンと週末を一緒に過ごす。という初めての宿題よ!別に特別なことはしなくて良いから、ただ出かけるところに彼を連れていってあげて欲しいの。一緒にご飯を食べたり、一緒に公園に行ったり、一緒にお風呂に入っても良いわよ!少し汚れてきたみたいだから。笑 とにかく、ポンポンと週末を過ごしてあげて。そしてその様子を何枚か写真に撮って、日記のようなものを作ってきて欲しいの。プリンターがなければ学校で印刷するからメールにファイルを添付してね。月曜日にみんなに紹介するから!」

…そうか、そういうことですね!
ということで、娘は大事そうにポンポンを抱きしめ、一緒に家に帰ってきたのでした。

家に帰ってからも娘はテレビをみる時も、トイレに行く時もポンポンを連れて行き、話しかけたり、抱きしめたり、キスをしたり。
とにかく、とても熱心にお世話をやいていました…

翌日はUtrechtからオランダ人の友人たちがやってきて、シンタクラースのパレードを見に行き。

何をする時もポンポンと一緒に過ごしたのでした。

担任曰く、この宿題はオランダの多くの小学校で行われているものらしく。
詳しくは聞けていないのですが、家庭の違いや多様性を学ぶためのもののようです。

考えてみれば、子どもたちは子どもたち同士で友だちになるわけですが、もちろんどんな家に住んでいるのか、家族構成はどんなものなのか、普段は何をしているのか…
そういった各家庭のバックグラウンドまでは詳しく知らないでしょう。

オランダでは同性婚がきちんと認めらていたりしていることもあって、”家庭”と言っても様々な家庭があります。
“お父さんとお母さんがいる”ということがいつも当たり前とは限りません。
“パートナー”と呼ぶ人と家庭を共にしている場合もあります。
週末だけ元父親と会うようなスタイルを築いている家庭もあれば、
もちろんシングルマザー/ファーザーの家庭だってあるわけです。
宗教によっては週末の過ごし方も様々だし、ひょっとしたら食卓に並ぶ食事にも宗教上の違いが出るかもしれません。

“色んな家庭があって、色んなかたちがある“
それを自然と学ぶ場を設けることがこのプログラムの目的なのかもしれない。と思いました。

オランダの教育は“みんなちがってそれで良い”ということを便宜上ではなく、きちんと教育活動の中で実践しているところに、私はいつも感動を覚えます。
それは時に、“家庭に入り込む”という意味で、とてもプライベートな側面を持つのかもしれません。

オランダがこういった”多様性”に関する教育に力を入れるのは、もちろんオランダという国が比較的多くの移民を受け入れることで維持している国であるということも関係していると思うのですが、同性婚や働き方の多様性など、
“何が当たり前かを強く設定しない”
ということに、ただならぬ信念を感じます。
多種多様な人々が集まり、多種多様な価値観が生まれれば、それこそ様々なところで”違い”による”いざこざ”が生まれると思うのです。

しかし、そういったいざこざが起きることは当たり前とし、その時にどういったアプローチで解決していくのか。ということを教育で教えようとしている感じがします。

“違い”によって生じる揉め事は、相手を知り、互いに受け入れる姿勢を育むことで、ゼロには出来なくとも、最小限にくい止めることができる。

子どもたちが様々な家庭の様子を写真で見て知ることで、
「うちの家ではこんなことしない」とか
「家でこんなことをするの?」など、
子どもだからこそ生まれる無垢な考えや発言がきっとあると思います。

しかし、このプログラムは子どもたちのそういった疑問や違和感を閉じ込めることなく、そういった想いを出し切って、
「そういうおうちもあるんだよ」
と、単純に受け入れることから始めるためなのかもしれません。

…とにかく、娘にとってみたらポンポンが来てくれた楽しい週末でした。
そして、私は娘が寝静まった日曜日の夜に、夜な夜なレイアウトを考えていたのでした。笑

前述した通り、ファイルに入れられたA4の紙は月曜日に子どもたちに紹介されます。
「ポンポンは◯◯の家でどんな風に過ごしてきたのかな~?」
という感じでしょうか。

月曜日、娘がポンポンとファイルを担任に渡すと、子どもたちは担任に群がり興味津々でした。どうやら子どもたちもこの時間をとても楽しみにしているようです。

放課後の帰り道、自転車の後ろから、
「今日、みんないっぱいファイル見てくれた~!」
と嬉しそうに話す娘の声を聞きながら、何とも言えない喜びに包まれたのでした。

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