【オランダ】自分が受けてきた教育を説明できる15歳

先日、娘と一緒にセミナーへ行ってきました。
「オランダの教育の理想と現実」という内容で、オランダで子育てをしている人たちが何に留意して子どもの学校教育/家庭教育に関わると良いか。というセミナーでした。

以前、簡単に書いたかもしれませんが、オランダではgroep8(小学校6年生)の時の「CITOテスト」と呼ばれる全国模試のようなものの結果で、進学する中高一貫校が決まります。
要するに、小学校を卒業する段階で、自分はどういった進路に繋がる中高一貫校へ進学するかが決まるということです。

「え、中学校/高校って自分で選べないの?」
と思われるかもしれませんが、本当に平たく言うと、インターなどの特殊な学校を除き、オランダの小学校に通う小学6年生には全員、中学受験がある。という感じです。
そして、そのテストが”CITOテスト”と呼ばれ、その結果で「あなたはこれくらい/これが学べる中高一貫校へ進学しなさい」という感じで進学先が決まります。

オランダでは中学校と高等学校が一貫であることが多く、“中学校が決まる=高校が決まる”という感じになります。また、その中高一貫の学校というのはだいたい3種類に分かれており、レベル別と呼ぶことも出来ますが「何を学びたいか」もしくは「何に適性があるか」によって分けられているという感じです。

その仕組みについてはまだ勉強中のところなので、あまり明確に書くことは避けますが、オランダの”中学校~高等学校~大学”の教育課程というのは、日本にはないシステムです。
よって、「これは日本で言うこれですか?」というのがあまり通りません。全く別物….ということで比べるものではない教育課程だな。と感じます。

そもそもオランダは偏差値教育ではないので「A中学校に進学するということは、日本でいうどのレベルの中学校に進学することと同じですか?」というのは出来ません。
そもそも中高一貫校に入学する意図が「(卒業後)○○大学に進学するため」というものでもないので、繰り返しになりますが、日本の教育システムとは全く種類が異なります。

さて、話は戻って、そのセミナーに参加するため、朝6時に起きて娘を連れ、わざわざ約2時間ほどかけてセミナーに参加した訳ですが、私の満足度はほぼ100%でした。
スピーカーの方がきちんと大学で研究をされている方だということが明白で、かなり中立的にお話をされていたので、聞いていてとても気持ちよかったです。
日本の教育の在り方を完全に否定する訳でもなく「日本の教育には日本の教育の良さがある」とおっしゃっていて、私も強く頷きました。

私のブログを読んで「日本の教育に愛想をつかせて出て行ったんだろう、自分はオランダの良い教育を子どもに受けさせられて満足なんだろう」と思われる方も多いかもしれませんが(ひょっとしたらそう思わせてしまう文章の表現になっているかもしれませんが…)、オランダに移住した理由は子どもの教育環境だけが目的ではありません。

私には共に働いてきた教員の仲間がいて、私の元で学び、巣立っていった生徒たちがたくさんいます。5年先がどのような社会になっているかわからない。と言われる中で、私は単純に、より良い教育/未来を用意するために身を尽くして力になりたい。
ただそれだけです。

「このままではいけない」日本の教育の在り方に疑問を持ちならがも、日々忙殺される教員たちは、一体何から変えていけばいいのかがわかりません。
何かアクションを起こしたいと思っても、目の前の仕事を疎かに出来ない”仕組み”の中にいます。
山積みの書類や生徒対応に追われる中で、落ち着いて「これを変えていこう」という思考/行動にたどり着けない毎日なのです。

…とにかく、私は自分の安定した職を一度捨ててでも、何か日本の教育に貢献できる光を見つけに行きたい。そう思って退職することに決めました。

話はずれましたが、セミナーではオランダ教育の弱点や、これから子どもが大きくなるにつれてオランダ人ではない保護者/オランダ文化の中で育ってきていない保護者がどういった心構えの中で家庭教育に臨むべきか、またオランダの学校教育に何を期待し、何を期待してはいけないか。というお話をされていました。

内容はそれとして、セミナーの後半には実際にオランダの教育環境の中で育った生徒さんたち(高校生と大学生)が5~6名来てくれて、自分が受けた教育について話をしてくれました。

彼らのバックグラウンドは本当に様々です。
日本人×日本人の保護者の元で育った生徒、
日本人×ベトナム人の保護者の元で育った生徒、
日本人×オランダ人の保護者の元で育った生徒、
オランダ人×オランダ人の保護者の元で育ち、日本語を勉強している生徒さん…
オランダに来た時期もバラバラで、通っていた小学校、中学校、高校もバラバラ。
とにかくみんな様々な背景を持った生徒さんたちでした。

まず、驚いたのは彼らが話をするのが上手だったということ。
しかも、そんな話上手な彼らが、何百人という生徒の中から、
「あなたなら上手に喋れそうだから、セミナーで喋ってみてくれない?」
と言われてやって来た生徒ではない。
ということ…
にも関わらず、彼らの話は「一体何歳なの?!」というくらい大人びていて、
「こんなに上手に喋れる高校生なんていない…」と思うくらいでした。

そして、彼ら全員が“自分が受けてきた教育の特徴”をきちんと理解していることが本当に驚きでした。
つまり、「オランダの教育の良いところはこういうとこです。つまり、自分の経験からいくと…」と、自分が小学校、中学校で受けてきた教育の魅力点はここであり、それがどのように自分に影響して今の自分に繋がっているか。ということを理路整然と説明してくれるのです。

そして、彼らは決して日本の教育に対して否定的に話すのではなく、
「自分の受けてきたオランダの教育はこうである」という点に着目してとてもポジティブに話をしてくれます。
要するに“異質なものは比べない”というある種のルールみたいなものをきちんと理解しているのかもしれません。無論、日本の教育とオランダの教育や社会の在り方は全く異なるものなので、比較することは出来ませんが。

セミナーが終わり、少しだけ彼らと話をしたのですが、私はまた涙が出そうになりながら話を聞いていました。
「あぁ、教育って人を創るんだな」と改めて感じました。

やっぱり私は教育というものが国の未来が変わる一つのきっかけである。と確信しました。
もちろん教育が変わるためには、社会も変わらなければいけません。
ニワトリが先か卵が先か…という問題になるのかもしれませんが、どっちが先などということはほとんどなく、様々なことが同時に変化していく必要があると感じます。

さて、個人的にはセミナーを通して、私たちが娘をオランダで育てていく上での課題がかなり明白になりました。
あとは、それをどう解決していくか。という情報を集めながら、実践していくしかない。と思えました。

正直、オランダで子育てをすることは日本で子育てをするよりも何倍もしんどいです。
それは、オランダだからしんどいということではなく、違う文化で教育を受け育ってきた私たち日本人が異国で子育てをするということのしんどさだと思います。
これまでの教育の在り方に対する固定概念を捨て、しかも言語習得の部分を注視しなければ、子どもというのは地に足がつかない状態で育ってしまいます。
それは一人の人間の人生を無下にすることにも繋がってしまう…というプレッシャーです。

ただ、それをしっかりと乗り越えることが出来れば、オランダで教育を受けたことは子どもにとって、とてもプラスであるということには変わりなさそうです。
あとは、きちんとやり通すことができるかどうか。…やるしかない!!!!

今日出会った日本に何かしらルーツがあったり、日本に関する学びを続けている生徒さんたちは全員、日本にとても興味があると言っていました。いつか留学してみたいとか、長期間日本に住んでみたいとか、そういった想いが強くあるようです。

これは聞いていてとても面白く、人間というのは自分自身のことをきちんと知るようになればなるほど、自分のルーツや、自分がどこから来たのか、そこにはどんな文化があるのか。ということを知りたくなるのかもしれないなぁ。と感じました。
きっと彼らなら日本に長期間滞在したとても、上手く日本の良いところを見つけるだろうな。と思います。
ネガティブに捉えるだけではなく、良いところを発見し、改善すべきところの本質を見つめられそうな気がします。

自分の受けてきた教育をきちんと説明できる15歳。
ちょっと衝撃的すぎて、帰りのバスではボーッとしてしまったのでした。

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