【オランダ】オランダ ≠ イエナプラン教育
最近、日本に住んでいる友達と話をしたときに、
「イエナプランの小学校、どう?」と、聞かれました。
実は日本では「オランダの教育は良いらしい!」という言葉の次に、
「オランダの教育はイエナプランだ!」という言葉が続くようです。
とは言っても、私もオランダに移住する前はリヒテルズ直子さんの本をたくさん読み、「オランダのイエナプラン教育良さそうだなー」と思っていました。
オランダの教育に関する本を調べると、ほぼほぼリヒテルズ直子さんの本で埋め尽くされます。
…よって、オランダ=イエナプラン教育ということになってしまうのかもしれません。
しかし、私が移住する前、実際に学校探しを進めてみると、意外と”オルタナティブ教育”と呼ばれる教育を実践している学校は少ないことがわかりました。
それでも、日本の感覚からすると格段に数は多いです。
家の近くにモンテッソーリ教育の小学校があったり、シュタイナー教育の小学校があったり…というのがオランダでは当たり前です。
移住する前の頃は「イエナプランが良いかなぁ」とぼんやり思っていたわけですが、なんと、私たちが住むハーグにはイエナプランの小学校が1校もないことがわかりました。
ハーグはオランダでも第3~第4の都市と言われていて、行政がある場所です。
日本で言う東京、アメリカで言うワシントンDCのような都市でしょうか。
しかし、そのハーグにイエナプランの小学校は1校もありません。
こう表現すると「あ、そうなんだ…」と少し落胆させてしまうかもしれませんが。笑
実は、オランダにおいてオルタナティブ教育を実践する小学校の割合は約10%~20%という風に言われています。あまり教育に精通していないオランダ人に「イエナプラン教育が…」と言うと「イエナプランって何?」と言われることもあるそうです。それくらいマイナーなのだとか。
そして、うちは結局色々考えた結果、オルタナティブ教育ではなく、ごくごく一般的な小学校を選びました。
「何故モンテッソーリ教育を選ばなかったのですか?」
「シュタイナー教育はダメですか?」
「ダルトン教育だと何が不安ですか?」
というような質問にも繋がりかねないとは思うのですが、「オルタナティブ教育じゃなくても良い」というのが私たち夫婦が出した結論でした。
つまり、色々調べれば調べるほど「オランダの一般的なカリキュラムも良さそうだね」という結論に至ったのです。
いろんな方々に話を聞くと、オランダのイエナプランのイメージは強いようで、そうではなくてもオルタナティブ教育を受けさせたい!きっと良い教育に決まっている!という思い込みで移住を決意する人も少なくないようです。
日本で“モンテッソーリ教育”と調べると、検索結果には“モンテッソーリ教育 有名人”という風に検索ワードが上がります。そして、そのサイトに飛んでみると、
オバマ大統領、ラリー・ペイジ(Google創始者)、ビル・ゲイツ(Microsoft創始者)、ジェフ・ベゾス(amazon創始者)、藤井聡太(将棋棋士)…などの、私たち日本人でも知っている有名人がモンテッソーリ教育を受けてきた。ということが書かれています。
教育には答えがないため、誰もが不安になります。
しかし、特に批判的思考が備わっていない日本人にとってこれらの情報を鵜呑みにしてしまう確率はとても高いのではないか。と私は感じています。
とても危険です。
実際オランダに来て、ブログには書ききれていないくらい様々な小学校を見学してきた訳ですが、結局、理念があってもそれを実践するのは“教員”です。
「でも、オランダの教員はかなり高度なことを学んできているのでは?」
と、次の疑問が湧いてくるわけですが、オランダは深刻な教員不足に悩んでおり、また、私たちを含め様々な移民が持つ言語や文化が混在する中で、十分な教育活動を実践できていない小学校も多々あります。
理念を掲げていても、教員に資質があったとしても、今オランダが実際に抱えている環境を乗り越えられる学校もあれば、乗り越えにくさを感じている学校もあります。
よって、やはり学校というのは実際に足を運び、ポイントを押さえながら、子どもたちや教員の働く様子を見なければ「この学校が良いなぁ」という良い結論には落ち着かない。と感じています。
また、私自身が「この学校が良いなぁ」と感じたとしても他の人は「いや、あんまりだったなぁ」というように、人の趣向や教育観によっても「自分の子どもを通わせたい学校」は変化します。
様々な教育現場を見学する中で、やはり“完璧な教育”というものはないと感じます。
「そりゃそうでしょう」と思われる方も多いとは思うのですが、日本では学区制に基づいて小学校は決められていることもあり、“自分の子どもにあった公教育”を選ぶ機会がまずありません。
だから日本の制度は悪いということではないのですが、一度立ち止まって「我が子に合う学校とは」と保護者が考える機会を与えられるか与えられないか…ここに、
「オランダの保護者と日本の保護者の教育に対する姿勢の差」を感じます。
考えたくなくても、制度上考えなくてはいけない時がくるのです。
それは誰もが”子どもの教育”という、答えのない問いに向かって一度立ち止まらなければいけない。ということです。
もちろんオランダの保護者がみんな熱心に子どもの小学校選びをしている訳ではないし、日本の保護者が教育選択を怠けている。ということではありません。
しかし、社会的制度が違うだけで、保護者の感覚には差が生じるんだな。と感じています。
さて、少し話はずれましたが、一般的な公立小学校であれ、オルタナティブ教育であれ、理念があり、それを踏襲すようとする教員がいることは確かですが、オランダの教育は変化しやすく、脆さもあります。
だからこそ、慎重に学校を選ぶ必要があり、保護者が教育にきちんと向き合えるかどうか。ということが問われます。
日本では考えられないくらい多様性があるオランダです。
その一つとして、
オランダの教育 ≠ イエナプラン教育
これを覚えておいてもらえたら。と思います。