【イングランド/ノッティンガム】イギリス中学校のポジティブフィードバック -後編-

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レポートカードは成長のためのコミュニケーション

最近読んだヴィランティ牧野祝子さんの著書「ポジティブフィードバック」(あさ出版、2022年)によると、「ポジティブフィードバック」は成長のための良質なコミュニケーションを指し、単に人への反応・意見・評価といった「フィードバック」とは異なるものであると説明されています。まさに、レポートカードのコメントはこのポジティブフィードバックの一例と捉えられます。

ポジティブフィードバックは、著者によれば以下の4つの「承認」を基軸としています。

1.成果・結果に対して、承認する【結果承認】
2.相手が行った行為(まだ結果がでていないものも含む)に対しての承認【行為承認】
3.相手の存在を承認し、大切に扱う【存在承認】
4.将来の可能性について信じ、期待し、それを肯定的に応援する【可能性承認】

先に紹介した教師のコメントを、これらの「承認」の基軸に基づき以下のように当てはめてみます。

  1. 【結果承認】
    • 「彼の書く英語は現在、とてもよくまとまっており、大きく上達してきました」
    • 「呼吸と光合成のトピックを非常によく理解している」
    • 「圧力のトピックにおいて、彼の計算は非常に的確で素晴らしかった」
    • 「この教科の理論的な側面をしっかりと理解しています」
  2. 【行為承認】
    • 「彼は静かながらも勤勉さと意志をもって英語学習に取り組んでいる」
    • 「トピック終了時のテストでは、効果的な復習と想起が頻繁に見られます」
    • 「学校を代表して、いくつかの活動に参加しています」
  3. 【存在承認】
    • 「彼はクラスの楽しい一員です」
    • 「彼は努力家であり、仲間からも好かれている」
    • 「彼は所属するチームでの人気者です」
  4. 【可能性承認】
    • 「”Upthrust”や”Forces”のようなキーワードや定義をさらに学習するとよいでしょう」
    • 「さらなるレベルアップのため、教師からのフィードバックを積極的に求めるとよいでしょう」

自身の強みを知る効果

ポジティブフィードバックを受けることで、前向きに進む励みとなります。これを繰り返し受け取ることで、自分の強みを深く理解すると同時に、「自分はまだ成長できる」というマインドセットが育まれると、著者は指摘しています。

イギリスの中等教育は、日本と同様に約10教科の幅広い基礎科目の習得が求められます。しかし、セカンダリースクールを卒業した後は、大学入学を見据えて個人の興味に基づき3-4科目(必須科目は特に設定されていない)を選択し、それらの科目の専門知識を2年間で深める方向へと学びが進化します。つまり、16歳頃からは、自分の興味や得意分野を中心にした学びが強調されるのです。中学校でのポジティブフィードバックは、将来の進路を考える際、自分の強みや得意分野を明確に認識するのに非常に役立つでしょう。

息子は、スコアや偏差値という明確な評価基準に慣れているため、このような新しいコミュニケーションの形式にまだ適応していないように見えます。今後、彼がポジティブフィードバックを率直に受け入れてその効果を体感できることを私としては望んでいます。

最後に、校長から直筆でレポートカードに同封されていたコメントを紹介します。これはとても高い存在承認を示すポジティブフィードバックと言えます。彼女は実際にも非常にポジティブであり、強い影響力を持つ人物ですが、その力強さがコメントからも伝わってきます。

”Dear XXX, this is a wonderful report- you are dearly moving hard and making excellent progress. We are so lucky to have you in our school! “

参考:国際エグゼクティブコーチが教える 人、組織が劇的に変わる ポジティブフィードバック ヴィランティ牧野祝子 (著)

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秋吉 良子

Ryoko Akiyoshi

  • 居住国 : イングランド
  • 居住都市 : ノッティンガム
  • 居住年数 : 2年
  • 子ども年齢 : 13歳
  • 教育環境 : 現地私立中学校

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