【オランダ/ハーグ】「勉強だけ」ができるのはリスクになり得る?

こんにちは!3月になりめっきり春らしくなってきたオランダですが、いかがお過ごしでしょうか?先週の約1週間は休暇でした。現地校の場合は1週間程度でしたが、インターの場合は2週間のところもあったとか。
「学校の休みが多くて大変!」なんて声もよく聞こえてくるのがこちらの特徴です。

我が家も1泊の旅行を2回してきました。

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さて、今回はオランダの中高一貫校において、最も学習意欲が高い生徒が進学すると言われる”VWO”の先生に聞いたお話しを書こうと思います。

小学校卒業時に次の進学先が決まるオランダの教育システム

オランダの中等教育(中高)は一貫校になっている場合が多く、現地校に通う子どもたちは日本でいうところの小学校6年生を修了した後、大きく分けて3つのタイプの中高一貫校へ進学します。ここでは、これまでの学力成果に合わせて、自分の学びたいことや適性に合わせて進学先を選ぶことが多いようです。

3つは、VMBO・HAVO・VWOと分かれており、最も学習意欲が高かったり学力が高いとされる場合、また、その後の進路に大学(university)への進学を視野に入れている場合はVWOへと進学することが多いと聞きます。ただ一方で進学後にVWOから進路を修正せざるを得ない生徒も多いようで、ここがオランダの教育の課題の一つだという声も聞こえてきます。

「勉強だけができる」がリスクになり得る?

「この学校のこのコース(VWO)に進学する生徒は比較的学習意欲が高く、学力が高いわけですが、どんな日々を送っているんでしょうか?」

VWOを訪れた際に発した私の問いかけに、校長先生は笑顔でこう返答してくれました。

「学力が高く、勉強”だけ”がよく出来る…それはある意味リスクだと捉えています。中高生の間はいろんなことにチャレンジできる環境があると良いですね」

「勉強”だけ”ができることがリスクになり得る…?」

そう疑問に思った私ですが、突き詰めていけばオランダの社会のあり方が見えるような気がしてきました。これについては、以前イベントでご一緒させていただいた、オランダで子育てをされている山本直子さんの記事も参考になるかと思います。

確かに「勉強だけ」を重視する流れは弱まってきている…?

最近、私が寄稿させていただいた野本響子さんの本(子どもが教育を選ぶ時代へ(集英社新書))にもそんなことが書いてありました。野本さんはマレーシアで子育てをされながら、教育についての記事や本を書いていらっしゃいます。

日本の外の教育の情報に敏感な方々に新しいのは、中国が学習塾の大規模な閉鎖を行ったことではないでしょうか。
他にも、

・小1と小2には筆記の宿題禁止
・反復練習などの認知の定着は学校で行う

など、中国では学校教育のあり方を大きく変えるような政策を打ち出しているようです。

睡眠時間を削るような熾烈な学習のあり方や環境を与えることは、長い目で見て国益にもつながっていない…”国益”と言うと言い過ぎかもしれませんが、「目先ではわかりやすいもの(点数)に見えることからの脱却」が方向性としてあるような気がしています。

心を病んでいる人を抱えるのは国としてコストが高い?

熾烈な点数争いを経験し「学力」や「学歴」だけにとらわれた時代はもうすぐ終わる….それは多くの人々が話していることです。一問一答や正解主義、知識偏重型の授業やテスト、入試の在り方に多くの疑問が呈されている中、実際にはその波の中で心をボロボロにしている(きた)子どもたちや大人も多いのではないでしょうか。

一方で、少し話がずれるようですが、私がオランダに来て驚いたのは、「高齢者がいきいきと生きている」という景色が広がっていたことでした。これは、子育て中のママたちにも言えることで、「オランダ人のママは強い。苦笑」と声を漏らす日本人ママも少なくありません。笑

これはもちろん教育だけの影響ではないと思いますが、基本的にこの国で暮らす人々は熾烈な点数争いを経験していないように思います。心をボロボロにさせられるような経験もほとんどなく、人生をいきいきと生きる軸を持たされているように見えます。さらに、「自分で自分を整える方法」を知っているように見えるのです。

この国の人々と社会を見ていると「人生のバランスが取れている」ということを重視した方が、人をいきいきと生かすことにつながり、それは医療コストを減らすことにもつながる…そんな風に政府は考えているのではないか?と感じることもあります。

バランスを大切にした人間を育てる

「バランスが取れていること」が人の幸福感につながっているとすれば、VWOの校長先生がおっしゃった「勉強だけができること」は確かにリスクなのかもしれません。

一見「学力だけが極端に高いこと」はそれだけで「もう他に何も必要ない」というように見えがちですが、この国では「それって本当に豊かな人生って言えるのか?」という問いがつきまとうように思います。

そういった意味でも、中高生の間にいろんな寄り道をしながら、時には何か勉強以外のことに没頭したりすることも、「人生の豊かさ」という観点から容認される。詰め込むことからの脱却のような流れがあるように見えるのです。

一見わかりやすい「勉強だけができること」から少し離れて、well-beingや豊かさを中心にした「人としての人生のあり方」を中等教育から考えさせてくれた先生の言葉に感謝しています。

この記事を書いたボーダレスライター に
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三島 菜央

Nao Mishima

  • 居住国 : オランダ
  • 居住都市 : バーグ
  • 居住年数 : 3年
  • 子ども年齢 : 6歳
  • 教育環境 : 現地公立小学校

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