【オランダ】大人たちの大芝居!オランダのシンタクラース祭
12月に入り、朝起きても真っ暗な冬のアムステルダムからこんにちは!
マスク嫌いのオランダも、やっと公共の屋内にて13歳以上のマスク着用が義務化されました。皆がマスクをしていることで多少の安心感はありますが、まだまだ数千人規模の新規感染者がいる状況に変わりはありません…
そんなオランダ、ここ数週間は、大人にとっては一大事・子どもにとっては大喜びのクリスマス週間でございました。
今回は、そんなオランダの独特なクリスマス事情と、学校での様子をお伝えしようと思います!
オランダのシンタクラース祭 (Sinterklaasfeest)
オランダでは12月25日のキリストの降誕祭とは別に、12月6日の聖ニコラスの命日が重要視されています。
聖ニコラスさんは、3〜4世紀に生きていたギリシャ人司教で、サンタさんの起源と言われているそうな。
オランダ語で聖ニコラスさん、つまりサンタクロースはちょいと発音が変わって「シンタクラース (Sinterklaas)」と言います。
シンタクラースさんは、早くも11月半ばに、大勢の従者・ピート(Piet)たちと共にスペインからオランダへ蒸気船に乗ってやってきます。(という設定です)
ピートについては、伝統的に黒塗りをし黒人に扮していたことがレイシズムを助長すると国際世論から批判を受け、現在は煤汚れを表現するムラ塗りへと変更されています。
日本の伝統文化にも多くの差別が内包されていますが、「伝統か差別か」という問いは普遍的なものであり、今後も随所で噴出するテーマだろうと感じます。
今年は11月14日、シンタクラース御一行様が無事に到着。
到着後は国をあげてシンタクラースを歓迎し、水上パレード開催の後、白い馬に乗ったシンタクラースが市街地を練り歩くのが通例だそうです。
今年はもちろんコロナのためにパレードは中止でしたが、5年前のアムステルダム滞在時には、わけもわからずシンタクラースを見に運河へ行き、それはそれは賑わっていた記憶があります。
もちろん、当時1歳の長女は何も覚えていませーん。
驚くべきは、シンタクラースさんがいよいよスペインを出航する時期になると、『シンタクラースジャーナル』というニュース番組がスタートし、日々シンタクラースの状況を配信してくれることです。
Sinterklaasjournaal
子どもたちは毎日シンタクラースジャーナルを観ながら、シンタクラースとピートのドタバタ劇を楽しみます。
そして大人たちはシンタクラースがオランダを去るまでの約1ヶ月間にわたって大芝居を打つというわけなのです!
各家庭の親にとっては、シンタクラースが無事オランダに上陸したその日からが大仕事の始まり始まり。
子どもたちは毎晩靴を暖炉や玄関の前に出す。
そこにシンタクラースが乗っているお馬さんへ人参やリンゴやお水などをお供え。
すると翌朝、お供え物は姿を消し、代わりにお菓子やプレゼントが入っている。
これを、シンタクラースが帰る12月6日まで3週間繰り返すのです…ひっひぇ〜〜〜!
今年がオランダ式クリスマスに初挑戦のワタクシ、最初は12月5日のイブだけのことかと思っていたのです。
まさかまさか3週間やりとりするとは…想像をはるかに超えておりました。(イブはイブで盛り上がります。歌や詩を唱え、さらなるプレゼントがシンタクラースさんから届きます…おっお財布がぁ…涙。)
もちろん各家庭によってルールは様々だと思います。毎日のおうちもあれば、数日おきのおうちもある。
我が家の場合は、なんとご近所さんのおじいちゃんおばあちゃんたちも参戦してくださったために、毎日毎日お菓子やギフトを靴に入れる日々でございました。
おじいちゃんおばあちゃんたちからいただいたものは数知れず。チョコレートやお人形、塗り絵やシール、時には謎の亀の民芸品もあったり…
(ご近所さんからのギフトで溢れた日も)
どうして娘たちにここまでしてくれるんだろう……本当に恐縮しきりでした。
私たち家族にとっての真のシンタクラースは紛れもなくこのご近所さんたちの存在だと思います。
学校でのシンタクラース祭
(学校にも靴を置きました。翌日楽しみに登校すると、万華鏡が入っていました◎)
今年はコロナによって例年通りの様式ではないようですが、小学校にも12月4日、シンタクラースとピートたちがプレゼントを持ってやってきました!
オランダ中の学校にシンタクラースが来ていると思われるので、一体総勢何人のシンタクラースが稼働しているのでしょうか…笑!
(シンタクラース祭仕様となった教室)
長女の学校では、全校生徒が集合してお出迎えするのを避けるため、校長先生がシンタクラースを探しに行く様子がライブ中継され、各教室でクラス毎に鑑賞するスタイルがとられていました。その動画はその後youtubeにアップされ、保護者も見ることができました。
シンタクラースを外で待つ校長先生。
ピートとは合流できるも、ピートもシンタクラースを探している!校長先生とピート、一緒に学校の中に探しに行くと…ある一室でカードゲームをしてくつろいでいるシンタクラースを発見!
というストーリー仕立て。
校長先生のコミカルな名演技が光っていました笑。
長女によると、その日は歌を歌ったりジュースを飲んだりお菓子を食べたりゲームをしたり、プレゼントをもらったり。
(学校からもらったプレゼント)
そしてメインは何と言ってもシンタクラースの教室訪問!
シンタクラースになんでも質問できるということで、長女は
「白い馬はスペインから蒸気船に乗せてきたのか?それともオランダの馬か?」
と聞いたそうです。
シンタクラースさんは、
「船に馬の部屋があってスペインから乗せてきたんだよ」
と答えたそうです笑。
それはカツラですか?とか聞く子はいないんだろうか…
そんな学校でのシンタクラース祭の様子を見聞きし、とにかく出てくる感想は「楽しそうだなぁおい!」に尽きます。
刻苦勉励の学校文化が染み付いている昭和生まれの私にはなかなか想像ができない世界です。
がしかし、自らも役者の一人としてこのシンタクラース公演に約1ヶ月出演してみて(笑)感じたのは、これはもはや「大人たちが童心に帰る1ヶ月 なのかもしれない」ということです。
子どもたちの喜ぶ顔が見たいのはもちろんですが、結局私もどこか楽しい。
そして奮闘している多くの大人たちを想像してはおかしみが込み上げてきて心が温まります。
子どもに関わる大人たちが皆で共犯関係となり、少しのいたずら心を持ち寄りながら、この時期だけは子どもたちと同じ世界を一緒に生きることができる、そんな1ヶ月なのかもしれません。