【オランダ】「大学卒業後、親と同居」に眉をひそめるオランダ人の保護者たち

去年の話になりますが、娘のクラスの保護者たちとある夜に集まった時のことです。いわゆる「保護者飲み会」がある生徒の家で開かれました。
その時、「自立」というトピックで数名の保護者と輪になって話すことがありました。

18歳はもう大人。自分で色々決めてもらわないと…

オランダの保護者たちは子離れが上手だと聞きます。
これはオランダに限らず、ヨーロッパ全体で言えることかもしれません。

「18歳はもう大人。自分の人生は自分で決められる年齢よ」

ある保護者がそう言いました。

「もちろん相談には乗るけれど、余計な口出しは厳禁。だって、自立して生きていくには、自分で決めて、自分で行動していくことが1番のレッスンでしょう?」

オランダでは18歳になると保険が保護者から切り離されると聞きます。
また、フィンランドでは高校生だとしても、18歳になると学校の成績を保護者に見せない。という自由と責任が与えられます。

社会が18歳を大人として扱う。
ヨーロッパ社会では18歳を大人として扱うための教育をそれ以前から進めます。
また、実際に18歳になった時には「自立した人間である」ということを制度を持って伝えるようです。

大学卒業後、実家で同居!?勘弁してよ…

「日本には”ひきこもり”と呼ばれる人たちがいて、社会に自分自身を適応させるとこに難しさを覚える人たちが増えているの。その年齢は様々で、時には40代や50代であっても、ずっと実家暮らしで生活保護なんかを受けている人たちもいる。彼らの責任ではなく、社会全体の責任でもあるけれど、彼らが生活保護を受け、労働マーケットに参入していないことは国にとっても大きな損失であると言われているの」

そんな話をすると、

「え?!大学卒業後に実家で暮らす人たちがいるの?!勘弁してよ…子育ては卒業させてよ?笑」

という返答がたくさんありました。

これは、私自身の経験にも言えることですが、大学卒業後、就職することなく大学を卒業した私は、実家で両親と暮らしていました。
留学当時のアメリカの友人とSkypeで話をした時に、

「で、菜央は大学出て今どこで暮らしてるの?」
と聞かれ、
「実家の京都で暮らしてるよ!」
と言うと、

「え….どうしたの?大丈夫?」

と言われたのでした。
この「大丈夫?」というのは、彼女が私を心配してくれていたからなのですが、その「大丈夫?」の意味がすぐには理解出来なかったことを今でも覚えています。

私の友人が説明してくれた話では、
「アメリカで大学卒業後に実家暮らしをしている人は、働けない理由があったり、いわゆる健康上のリスクがあるから実家暮らしをしている。っていう風に捉えられることが多いんだよ」
ということでした。

つまり、大学を卒業すれば、

保護者は子を家から出すことで自立を促し、
当然のように、子ども自身も親からの自立を望む

というのが、当然である。ということなのでした。

今のアメリカでは当時(2010年頃)と社会情勢が異なるところもあるかもしれませんが、オランダでは未だに「実家暮らしはちょっと…」という共通概念があるように感じました。

自分の人生を楽しめるようにするのが子育ての役割

「子どもが自立して、人生を楽しんで生きられるようにするのが保護者の務め。オランダではほとんどの保護者がそう考えていると思うよ」

あるパパが私に話してくれたことです。

「オランダ人の保護者自身も自分の人生を大切にしたい。と思っているからね!子どもがいつまでも家族にべったりだと、こっちも自分の好きなことを好きなように出来ないし、それは困るよ!笑」

保護者自身が、
「子育てから解放されて自分の人生を好きなように生きたい」
と言うのは、決して、
「子育てがめんどくさい」とか、
「子どもがいない環境をいち早く望んでいる」とか、
そういった意味ではありません。

実際のところ、私が見る限り、周囲の保護者たちは子どもとの時間を捻出するために働き方を変えたり、子どもとより多くの時間を過ごすために様々な工夫をしているように思います。

ただ、彼らの中の共通認識として、
子育て=限られた時間
ということがあり、その時間の中で、
「子どもたちがいかに自分らしい人生を歩めるように子育てをするか」
というテーマに全力で取り組んでいるように思えるのです。

あれこれ手を出すことが「良い子育て」ではないということ

そういった意味で、私の周囲の保護者の中には、
「自立をするように子育てする」
というアイデアが常にある気がします。

自分で物事を決めさせたり、子どもの意志を尊重したり、
必要以上に手を出さない、ということも心得ているように思います。

子育て=限られた時間

「超合理的」とも言われるオランダ社会ですが、
その中で「限り」を見つめてベストパフォーマンスを心がける。

そういった哲学や社会の在り方がオランダの子どもたちを自立へと導いているのかもしれません。

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