【オランダ】オランダの小学校にある教具<その1>
娘が通う小学校は、オルタナティブ教育を行っている小学校ではなく、ごくごく一般的なカリキュラムに則って教育活動が行われている小学校です。
しかし、これまで多くの小学校視察を行って感じたのは、オルタナティブ教育を行う小学校ではなくても、オルタナティブ教育の教具を使っていることはある。ということでした。
例えば、モンテッソーリ教育でよく使われているような教具が、一般的な小学校に教具として置かれていることはよくあります。
ひょっとすると、その教具だけを見れば、
「この小学校はモンテッソーリの小学校ですか?」
と思う方もいらっしゃるかもしれません。
「都合が良い」と言うと聞こえが悪くなるかもしれませんが、ある意味「良いとこ取り」というかたちで、他のカリキュラムで使われている教具を採用している小学校も多いように思います。
さて、それでは娘の小学校にある教具を紹介していきたいと思います。
<昨日、今日、明日という概念>
これは、1週間という時間の流れをつかむための教具です。
日本の”しまじろう”とは違うのですが、娘の小学校では”ポンポン”というキャラクターが出てくる教材を採用しています。
例えば、この日は5月29日(金)だったということがわかります。
娘によると、朝サークルを組んで座っている時にこのボードの確認がある。とのこと。
日本でも、黒板の右端に書かれた月日や曜日を確認することはありますね。
この日は”vrijdag(金曜日)”だったため、その前の日は”donderdag(木曜日)”となります。
木曜日には黒丸印がついていて“昨日”という概念を学んでいるのだということがわかります。
また、その反対に翌日の土曜日には白丸印がついていて、“明日”だということがわかります。
少し見えにくいかもしれませんが、週末である土曜日と日曜日の絵には、ポンポンとルルが描かれていて、”school(学校)”と書かれたドアが閉まっています。そして、そのドアの前にカバンが置かれていて、学校に入れていません。
つまりこの絵は、“学校がお休み”だということを示しています。
4、5歳の子どもたちはまだ、”昨日”や”明日”という概念が定着していないことが多い年齢です。こうやって毎日変化するボードを通して、曜日が前に進むということを学んでいるのかもしれません。
<今日の予定>
曜日の下には、可愛い絵がいくつか並べられています。これは左から順に今日の予定です。
学校に来る
↓
サークルを組んで座る
↓
室内教具で遊ぶ
↓
スナックタイム
↓
外遊び
↓
昼食
↓
室内教具で遊ぶ
↓
外遊び
↓
スクリーン学習をする
↓
帰る
という予定が、言語がわからなくても目で確認できるようになっています。
<日直>
少し見えにくいかもしれませんが、このボードには今日の日直の写真も貼り付けてあります。
モザイクのかかった2人の写真がありますが、この2人が今日の日直のようです。
<キャラクターの教具はほとんどない>
まず、オランダの幼稚園や小学校にある教具を見た時に一つ気がつくことがあります。
それは「キャラクターものがない」ということです。
これについては、フィンランドも同じだと友人の元保育士も言っていました。
例えば、アンパンマンの人形やディズニーキャラクターのおままごとセット。
そのようなものは、ほとんどありません。
娘のクラスにある教具の中で唯一のキャラクターものは、LEGO classicの中にあるエルサでしょうか。それも、一体か二体程度に留められています。
<プラスチック製の教具も少ない>
また、プラスチック製の教具もほとんどありません。
多くは木製で、教具それぞれが木製の箱に入っていたり、きちんと片付けられるようになっていることが多いです。(LEGOは例外)
さて、このボードはオランダではよくある、”kiesboard”というものです。
英語にすれば”choosing board”、日本語にすれば”遊び選択ボード”といったところでしょうか。(ネーミングのセンスのなさ。笑)
最初の頃、このボードの役割を知った時はとても衝撃的でした。
教具の選び方がすごく特徴的だったからです。
まず、このボードの横にはクラス全員の名前が書かれたネームカードがあります。これらのネームカードには磁石が付けられています。
ボードを見てみると、様々な教具を使った遊びの種類があることがわかります。
・マットの上で、車などを使う教具
・数字とドットのマッチングをする教具
・パズル
・絵本読み
・塗り絵やお絵かき
・粘土遊び
・線路や電車の教具
・人形遊び
上の列にも数種類あるので、全部で12個ほどあるのかもしれません。
そして、面白いのは、全ての教具において遊ぶことが可能な人数が指定されているということ。
例えば、上の列の遊び(写真が切れていて何の遊びかはわかりませんが)については、遊ぶ人数が”2人”に限られていることがわかります。下にある2×2のマス部分には”バツマーク”が貼り付けてあるため、2人以上は遊べないのです。
このようにして、1日のスケジュールに2回ある“教具で遊ぶ時間”の中で出来るものは1日2種類までとなります。
そして、どの教具を誰が選ぶかは、担任が生徒の発達状況や興味関心に合わせて、バランス良く当てはめていくか、時に話し合いを行うそうです。
…しかし、その中でも「その日の日直」はまず最初に教具を選ぶことができるそうで。笑
娘は遊びたい教具がある日は、
「あぁ〜、今日日直じゃないかなぁ〜」
と朝からぼやいています。笑
ここで私が思い出すのは、自分の幼稚園時代や娘が通っていた日本の保育園のことです。
子どもたちの「遊び時間」と言えば、おもちゃのカゴをひっくり返したり、フタを開けたそのおもちゃが皆んなで取り合いになったり…
自由な遊び時間において「自分”だけ”がするもの」という教具は少なく、
反対に「みんなでシェアして使ってね」という共通概念が個々の中にあったように思います。
その反面、娘の小学校ではボード上の絵でこそ「室内遊び」となっていますが、実際のところは「自由遊び」ではなく「教具を使った遊び」になっています。つまり「学び」です。
そして、自分が担当することになった教具以外の教具で遊ぶことは禁じられているそうです。
隣でLEGOを楽しそうにやっている子がいて、自分の教具が「パズル」の場合、
隣の子に「そのLEGOで一緒に遊んでも良い?」と言って遊ぶことは禁じられています。
よって、悪く言えば「遊びたくもない教具」であったとしても、決められた一定時間はそれと向き合い、時間潰しをするしかない。ということです。
そのせいか、オランダの幼稚園や小学校において、室内遊びの時間は比較的静かです。
各自が自分に与らえた教具に向き合い、集中している光景が広がっていることも多く、
「何でこの子たち、こんなに静かなんだ…」
と、不気味に思うこともあります。笑
また、それらの教具は子ども自身が考えて達成できるレベルの教具になっていることが多いように思います。つまり「これできないー!」と教師のところへ駆け寄って解決しなければいけないような教具は少ない印象です。
子どもたちが各々で教具に向き合っている時、担任はPCに向かい、次に使う教材やメールの返信、必要なペーパーワーク等を行っているそうです。
喧嘩等があれば担任は駆けつけますが、教具と向き合う時間は基本的に子どもたちと関わらないそうです。子どもたちもそういう時間だと理解して、教具と向き合っているのかもしれません。