【オランダ】フィンランドからのお客様
先日、フィンランドの保育園で1年間ボランティアとして働いていらっしゃったお客様のためにオランダの教育現場視察をコーディネートしました。
1年間のボランティアを終えて帰国するまでに、オランダの教育現場を視察してから帰国したい。とのことで、希望の校種に合わせて様々なカリキュラムの学校をご用意しました。
1週間の視察で、真ん中の水曜日は私の学校視察に同行したいとおっしゃって頂き、近所の小学校の説明会に同行していただきました。その際、フィンランドの教育について色んなお話を聞くことができ、私自身とても勉強になりました。
お客様自身は実際に日本で長い保育士経験をお持ちで、過去には園長を経験されたこともあるそうです。
しかし、精神的にも体力的にも行き詰まり、日本の保育の在り方や、保育士としての働き方を見直すために、一度退職しボランティアを志願されたのだとか。
お話を聞く中で、日本の保育とフィンランドの保育の違いに関する印象的なエピソードがあったので紹介します。(ご本人の承諾を得て書いています)
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実際にフィンランドで保育をされていた時のことです。
フィンランドの保育園には「これはちょっと子どもには危ないんじゃないの?」というくらいの高さの遊具が結構あるそうで。
それも子どもが「ここまでなら大丈夫」「ここからは危ない」という感覚をきちんと自分で身に付けるためなのだとか。
ある日、そこそこ高い”うんてい”から男の子が落ちたそうです。
落ちたと言っても、その瞬間を見ていた保育士はおらず、男の子もそのことを保育士に言うことはなかったのだとか。
それから彼は家へ帰ったそうなのですが、家に帰ると頭が痛み始め。
その時初めて、家族に「今日うんていから落ちた」と伝えたそうです。
それを聞いた家族は、保育園へ電話をしたそうで。
それは”クレーム”というよりは、事実確認の電話だったようです。
前述したように、園でその瞬間を見ていた保育士は誰もおらず。
その電話のあと、ミーティングが開かれました。
しかし、そのミーティングの内容がまるで日本とは異なったそうです。
日本であれば、
「何故そのようなことが起きたのか」
「未然に防ぐことは出来なかったのか」
「何故誰も見ていなかったのか」
そういったところにフォーカスしたミーティングになるだろうと思う。とおっしゃっていました。
しかし、実際に話し合われたのは、
「何故、男の子は周囲の保育士にその話をしなかったのか/できなかったのか」
…ということが議論の要だったそうです。
その男の子にとって、私たち保育士はそういったことを話せない存在なのか?
自分の身に起きたこと、痛かったこと、悲しかったこと、嬉しかったこと…
保育士とは、そういったことを話せる存在であるべきではないのか?
仮にこれが日本であれば、ひょっとすると、
「あの遊具はやっぱり危ないから、遊べるのは”○歳から”にしましょう」
「あの遊具を使う子どもがいる場合は、そこに保育士を1名配置しましょう」
そういった流れになるのかもしれません。
しかし、フィンランドの教育は子どもが怪我をしないように保育士ができることには限界がある。と考えているように思えました。
怪我をしないように見張ることは、保育の本質ではない。
そんな風にも聞こえました。
よくよく考えてみれば、大人数名で遊びまわる子ども全員が怪我しないように見張るというのは不可能に近い話です。
そして「転ばぬ先の杖」は本当に子どもを成長させるのか。
「これ以上はダメだ」「ここまでならいける」「もう少しやってみよう」
子どもは常に実験と検証を繰り返しています。
そういった経験や挑戦の種を、大人のリスク回避のために取り除いていいのか。
しかも、時にその”禁止”や”規制”大人の都合によって…だったりもします。
子どもが繰り返す挑戦には失敗がつきものです。
ただ、大怪我に繋がらないための配慮をしながら、たくさん失敗をさせてあげる。
そして、子どもと保育士の人間としての関係性を見直す。
子どもにとって保育士が何でも話せる存在であるために出来ることとは何か。
安心して接することが出来る大人であるために何をしなければいけないのか。
子どもの学ぶ力を信じ、自ら学ぶ力を発揮できるように保育士との関係を見直す。
フィンランドの保育の中心にはいつも”子ども”がいるようでした。
実際、この話を聞いた時、鳥肌が立ちました。
国が変わればこんなに保育は違うのか。と。
もちろんこれは、私がお会いした方が経験されたことであって、
じゃぁフィンランドの保育全体がそうなのか。ということではありません。
ただ、保育者の意識の違い、教育の捉え方の違いは確実にありそうだな。と感じました。
他にも色々と話は尽きなかったのですが、本当に様々な話をさせて頂きました。英語もほとんど出来ない状態から、保育を勉強し直したい!と思い立ってフィンランド行きを決められたことなどに勝手に親近感が湧いたものです。
「世界に出ると自分が思っている以上に、同じような気持ちの人に出会えるんだなぁ」と、改めて実感しました。
これから日本に帰国して、自分の経験を活かして日本の保育に貢献したいとおっしゃっていたので、その姿を応援したいと思います!
…ということで、さっそく名古屋でワークショップから始められるそうです!
ヨーロッパの教育について考えるワークショップ↓
お近くにお住まいの方は是非参加されてみてください*