【オランダ】娘のHolidayCampの値段は…

8月の最終週、つまり現地校に通う直前の月曜日から金曜日、娘は8:00~18:30までオランダのHolidayCampに参加しました。
5月初旬にオランダへ引っ越してから約3ヶ月半…初めて娘と離れて過ごす日々でした。

当初は「初日はやっぱ泣くか~」と思っていたのですが。
HolidayCampが始まる前日の日曜日。
彼女のベッドから飛んできた質問は、
「あしたからいくところは英語やね?日本でいってた保育園みたいなところやね?」
でした。

インターの保育園に約3年間通った娘ですが、この時ばかりは、
「インターに通わせておいてよかったなぁ」と感じました。
無論、通わせた当時はオランダに移住する予定などなく、夫婦で教育について話し合った結果でインターに通わせていた訳ですが。
ただ、今回HolidayCampに参加することになり、娘の中で、
「あぁいう感じのところね。はいはい、じゃあ行ってみましょうかね」
というイメージが出来たのは、インターに通った経験があったからなのでは…?と思いました。

もちろん、そんな経験がなくてもあっさりと参加していくようなお子さんもいるとは思うのですが。娘の性格上、インターの経験がなかったら、周囲が英語で話すようなところにポンっといきなり入れられたら、かなり戸惑ったと思います。

…というわけで、娘は月曜日から金曜日までスキップをしながら、別れ際私とハグすることも、ハイファイブすることも忘れるくらい、楽しんで参加してくれました。
5日間のうち2日間は遠足で、大型バスに乗り、美術館や遊園地へ。
昼食も持たせる必要もなく、水筒も管理してくれて、毎日持っていくのは着替えのみ。(何なら朝ごはんも食べさせてくれる)
あれもこれも用意しなくて良いのはとても楽でした。

家に帰れば泥のように眠り、翌朝は目が覚めると「今日も楽しみ!」という感じ。
子どもが子どもらしく生きるとはこのことだな。と感じました。

…さて、そんなHolidayCampですが、5日間で約5万円。
「5万円?!」と、最初は一瞬思ったのですが。
でもその直後、
「うん。でもそれくらいするべきなんだよな、教育は」
と思いました。

小さい子どもを1日預かってくれるのに1万円を支払うのは高いでしょうか。
高いと思う理由は何なのでしょうか。

「小さい子どもを見る”だけ”なのに?」
「そんな未就学児にお金をかけたって意味ないのでは?」
「預けるしかない親の足元を見ているだろう」

様々な意見があると思います。

オランダは公教育費無償の国です。
よって、HolidayCampが5日間約5万円もするのは矛盾しているようにも思えました。
無論、このHolidayCampの主催は私立学校のグループ会社なので無理もないのですが。

ただ、このキャンプを通して思ったのは、教育とは本来お金がかかるべきものであって、適切に教育費が消費されるからこそ、良い教育が生まれるのだ、
ということです。

オランダの教育は無償ですが、オランダでは国家予算の多くを教育予算として配分しているからか、「税金が結構高いな…」と、感じることが多いです。

まず、軽減税率はあるにせよ、オランダは消費税が19%です。
そして、所得税は約40%~50%だそうです。
日本の場合は、8%…これから10%になろうとしています。軽減税率も導入予定。
所得税は約20%~40%ですが、一般的な家庭(年収330万~695万が20%、695万~900万が23%)では20%なので、オランダの約半分です。

かなり大雑把に言うと、普通のサラリーマン家庭でも、
100万稼いで40万~50万が税金でもっていかれるのがオランダ。
100万稼いで20万税金でもっていかれるのが日本。
ということになります。

人によって様々な税控除があるので、一概にとは言えませんが、オランダは諸々の税金が日本の約2倍だということがわかります。

そして、1番大切なのは、税金が社会福祉に還元されている。ということです。

つまり、
オランダで生活する人たちの税金は日本の税金に比べて高く、
その高い税金の一部が教育に使われることに納得している。
ということなのかもしれません。
(もちろん全員が納得しているとは言いませんが、政治に基づいた予算配分はそうなっています)

良い教育を施そうとするとお金がかかる。
実はそれは当たり前のことです。
「それをきちんとオランダ国内で生活する人で負担しよう」
という意識で成り立っています。

こうした中でオランダでは教育費が無償です。
…ということは、本来教育とはお金がかかるものなので、
多くの人が「夏休みは約2ヶ月バケーション!」というかたちで休みをとるオランダにおいて、娘が通ったHolidayCampような”特別な教育”を受けるためにお金がかかるのはある意味仕方のないことなんだ。と思いました。

だって本来は大人も休みの期間。
イレギュラーな教育費なので、高いのも当然なのです。
子どもが子どもらしく安心した環境でのびのび過ごすためには、
設備投資も必要で、保育士や教員の責任、安全面の管理も重要です。
何でも自分でできる大人が過ごす場所以上に、
子どもが生活する場所にお金がかかるのは当たり前なのです。

感覚的に、日本の教育費の負担は年々増加しているように思います。
教育費が無償になっても、教員の多忙は軽減されず、負担が重くなるばかり。
無理して働く教員が増えて、今ではありえないくらいの数の教員が病休を取得しています。
よって、適切な学習をカバーするために塾に通い、教育費を費やし…
大学の学費は年々増額傾向にあり、子どもたちは奨学金を借りて借金をします。

私たちにできることは何なのか、と考えた時。
きちんと政治(自分の生活に関わること)に関心を持つ。
ということだと思いました。

今は他人事かもしれないことは、十数年後、自分の子どもが大人になった時、
親になったときに、子どもの背中にのしかかります。
それを、「今の自分の問題ではないから」と先送りすることは、
果たして未来を生きる子どものためになっているのでしょうか。
今、目の前の政治(自分の生活に関わること)に関心を示さないことが、
未来に繋がっている。という危機意識が抱けないのは非常に情けないことです。

以前、オランダ人の女性たちが私の日本の家に泊まりにきた時、
「日本にはゴミ箱が少なすぎる。どこにゴミを捨てるの」
と言っていたことがありました。

「日本ではゴミは持ち帰る文化があるんだよ」と伝えたのですが、
「でも、税金は支払っているでしょう?公共にきちんと整備されるべきものが整備されていないのは、税金の使い方がおかしいのではないか?と問うべきでしょう?しかも、日本人ならそのゴミを持ち帰る文化がわかったとしても、外国人が日本を汚さないためにも、きちんとゴミ箱を整備するべきなのでは?」

と言っていました。
これは、きちんと政治に関心を持っていなければ出ない発言だと思います。
自分が納めた税金が何に使われるべきなのかということに関心があるということです。

私が出会ったオランダ人ほとんどが言います。
「オランダは税金は高いけれど、納めた税金がきちんと生活に必要なものに使われているという実感が持てるのは確かだから」と。
それは、オランダ人がきちんと政治に関わり、声を上げてきたからだと私は思います。

日本人は自分が納めた税金が皆に還元されるべき。という強い意見を持っているでしょうか。仮に税金の使われ方に疑問があるのなら、きちんと声を上げているでしょうか。自分が持つ参政権をきちんと行使しているのでしょうか。

結局それは、未来を生きる子どもたち、自分の子どもたちにのしかかる問題へと変化していきます。問題は子どもの有無ではなく、公共に対する想いです。
みんなで未来をよくするために、今できることをやろうよ。という想いです。

自分の手で世界を変化させていかなければ、
誰かの力で変わることばかりに期待してばかりいれば、
結局、自分に関わる人たちに過去の怠慢がのしかかってしまうのです。

しかし、そのことに気づくことが出来ない人間を大量生産したのもまた、教育です。
教育だけのせいとは言いませんが、原因の一端は教育にあると思います。

先日、私がtwitterで「教え子が選挙に行かない責任の一端は自分にあると思う」
と呟いた時、「行きました!!」と答えてくれた子たちがいました。

私はそうやって教育で日本が変わると信じたい。
その為に今、自分に何が出来るかを模索したいと思ってオランダにきました。
結局、日本に残された資源は”人”です。
教育で人を変え、意識を変えていかなければいけない。
根深いけど、諦めたくないなぁ……

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