【オランダ/ハーグ】学校行事に見るオランダの教育文化
こんにちは!ここのところ雨も降らず晴れた日が続いているオランダ。
観光客に人気のキューヘンホフ公園は人々で賑わい「コロナは終わったのだ!」と思わせてくれます。
さて、娘はイースター休暇でこれまでの疲れが出たのか一気にダウン。
4連休にたくさんのお誘いをいただいていたのに全てキャンセルして療養に努めていました。イースター休暇後は数日欠席するだけで済みましたが、平日は気を張って頑張っているんだろうな〜と思った次第です。
子どもだって毎日をサバイブしています。楽しそうだからってそれを忘れてはいけないな〜と思います。
さて、今週の土曜日からオランダの多くの学校はmeivakantieと呼ばれる約2週間の休暇に入りました。インターなどでは3週間のところもあるようです。そして、休暇に入る直前の昨日の金曜日、娘の学校ではミュージカルの発表会がありました。コロナが始まって以来、初めての保護者が集まった学校行事となりました!
準備期間は約1ヶ月。”Lion King”のテーマに挑戦
「これから1ヶ月、学校全体でミュージカルに取り組みます!」
そんなお知らせがきたのは4月の初旬。それからというもの、娘は家でも”Lion Kingの曲かけて!”と言い、ダンスを練習していました。
オランダの学校行事はほとんどの場合、日本ほど「きちんとした」ものではありません。そもそも、小学校の体育館は日本の半分以下のサイズのところも多く、全校生徒が集まれるような体育館を持っている学校はかなり稀です。
それはつまり「行事」は学校全体のものであっても、実際に演技を行うのは学年だったり、クラス単位だったりするということだと理解できます。
「緑っぽい服で」というゆるい指示
学校によっては、年度末に向けて「大きなプロジェクト」として演劇をする学校がありますが、その学年はgroep8、日本で言うところの小学6年生に限られていることが多いようです。日本のような厳かな卒業式もないこの国では、ミュージカルはつまり「卒業制作」のような観点で行うようです。
今回は年度途中の「ちょっとしたイベント」であって、最終学年でもないので、全体的にゆるいイベントでした。
「当日は緑っぽい服、ジャングルっぽい服、それがなければ普通の服でも構いません!子どもたちはそれぞれが作ったマスクを着用します。」
…ということで、イースター明けで体調不良が続き何の準備もできていなかった我が家は「緑っぽい服」で参加しました!
「え、これは完成形ですか?笑」…でも子どもたちは満足気!
娘のクラスの発表は8:30から。と、その日のトップバッターでした。
学校に送り届けた後、そのまま校門前で待ち、体育館へ案内され入館。
体育館は「ジャングルっぽく」デコレーションされ、保護者たちは用意されていたベンチに腰掛けて子どもたちの登場を待ちました。
女性の校長先生が現れ、
「今日はようこそ!子どもたちはとても興奮しています。なかなかこうやって保護者の方々に何かを見せるということがなかったですからね。それでは、楽しんでください!」
と、保護者は歓声と拍手で子どもたちを迎えました。
全体を通して15分程度だった彼らの演劇は、ライオンキングの音楽に合わせて歌ったり踊ったり。途中、何名かの生徒がセリフを言ったりしました。その完成度と言ったら「これは練習ですか?笑」と言わんばかりの出来でしたが、子どもたちはとても自信満々だし、保護者たちも笑顔で観覧し、最後は最初と同じく歓声と拍手で見届けました。
「頑張る」のではなく「楽しむこと」が大切
私たちはこの国にきて、娘に「頑張ってね!」と声をかけて送り出すことがほとんどなくなりました。それはこの国の影響が大きいと思います。
この国では子どもたちを学校に送り出すとき、
“veel plezier!”
と声をかけることが多いのですがこれは日本語に訳すと、
「楽しんでね!」
になります。
そう、この国では頑張ることよりも「楽しむ」ことの方が大切。
ここにも文化の違いを感じます。今までやってきたことが発揮できることも大切かもしれませんが「楽しかった〜!」と実感できれば、それってサイコーじゃん?ということなのだと思います。
全体の完璧よりも、子どもたちの心一つひとつに”感じる力”を
前述した通り、オランダの小学校には全校生徒が集まるような体育館があることは稀で、物理的に「学校全体で」というような意識を子どもたちが持つことは難しいように思います。これは日本と大きく異なるところです。
どちらが良い悪いではなく、オランダではそういった感覚を持つことが物理的に難しいため、また文化的に日本ほど協調性というものを重視しないため、全体で整えることよりも個人主義が加速しやすい背景があると思います。
今回の演劇はまさに「60点!」という感じでしたが、何ヶ月もかけて全体の完璧を目指すことよりも、小さい発表の場やイベントの場をいくつも用意することの方を優先している文化なのだと理解できました。
小さなハードルをいくつも用意することで、子どもたち一人ひとりが失敗や成功を何度も繰り返し、その度に「こころ」で感じる何かを学び得ていく。「みんなで揃えること」よりも、一人ひとりのこころの成長に寄り添える機会を何度も作っていく。それがこの国の教育文化なのかもしれません。
少なくとも3年ぶり?くらいの発表の場で子どもたちは緊張している様子にも見えましたが、保護者の歓声や拍手を受けてとても誇らしそうに去っていった子どもたちの背中に成長を感じた日でした!
さて、明るい5月のmeivakantie!
自宅近くもホリデームード。日の長い過ごしやすい日々を楽しみたいと思います!
この記事を書いたボーダレスライター に
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税所 裕香子
Yukako Saisho
- 居住国 : ドイツ
- 居住都市 : ザールランド
- 居住年数 : 1年
- 子ども年齢 : 6歳、3歳、1歳
- 教育環境 : ワルドルフキンダーガルデン