【オランダ】オランダへの海外移住で失われたもの①
コロナの影響もあってか、日本でも「海外移住」が話題になっているようで、clubhouse上でもルームがいくつも立ち上がっているように見えます。
インターネットが普及したおかげで「ネット環境さえあればどこでも働ける」というライフスタイルを提唱する人たちも増えてきました。
「オランダの子どもたちの幸福度は世界一」や、オランダに関するキラキラした記事などが多いことも事実ですが、そのキラキラした部分が時に日本とは比にならないくらいキラキラしていることで「オランダって最高らしい」という表面的な情報が横行していることも確かではないでしょうか。
私自身、2年前まで日本で暮らしていたこともあり、海外生活が長い在住者の方々よりは「今の日本」についての情報が比較的新しいほうだと思います。
ただ、それもすぐに「違うもの」になっていくでしょう。
人が同時多発的に二国間を生きることは難しく、主観的な考えはいつもどちらかに偏っている…と個人的に感じています。
さて、今日は私が個人的に感じている「海外移住で失ったもの」や「手に入れることに難しさを感じるもの」を書きたいと思います。
個人的に、海外移住で失ったものもたくさんあると感じています。もちろん得たものもたくさんありますが、それは単純に「数」では計れません。
今日は最初の3つを書きたいと思います。
1) 自分の両親(子どもにとっての祖父母)や兄弟と会う機会
これは海外移住や国際結婚をされた方々にも言えることだと思います。
自分の両親と一緒に”二世帯海外移住”をしない限り、自分たちにとっての親に会う機会はかなり減ります。
私たち家族のケースで言うと、両方が教員として働いていたことで、子どもが熱を出したり、帰宅を余儀なくされた場合に保育園へ出向くのは、私の両親でした。
また、一時期には私が片道2時間半の通勤、彼が片道2時間の通勤だったため、実家に泊めてもらったりすることが多くありました。
姉世帯も含め、何かのお祝い事の時には家族が集まることが多かった私たちにとって「家族みんなで過ごす機会」が減ったのは、失ったものとして1番大きいように思います。また、オランダでは家族が助け合い、おじいちゃんおばあちゃんが小学校へのお迎えに来ているところを見ると、娘がその様子を羨ましがることも理解できます。
周囲と比べる訳ではないのですが、私自身が「海外移住とはこういうこと」と受け入れるのに最も苦労しているところだと思います。
2) (子どもにとっての)日本語の言語環境
これはある意味当然とも言える「失われるもの」ではありますが、海外で暮らすと、いかに日本での暮らしの中に「日本語を自然と吸収する環境」があったかということを思い知らされます。
子どもたちは身の回りにあるものから自然と言語を吸収しようとすることが多いです。
それは本当に些細なことですが、バス停の漢字やひらがな、道路標識、お店の看板、飲食店のメニュー、テレビのテロップ、スーパーの商品パッケージ…子どもというのは言語に関わる多くの情報を目から、耳から入れながら、自分の理解したものと、起きた事象に対して、いわば「答えあわせ」をしながら言語を確立していく部分があります。
そういった意味で、海外で暮らすとそういった環境はなくなります。もちろん、アメリカからオーストラリア、イギリスからカナダなどのように、基本的な言語が共通している場合は、言語に関して言えばそこまで大きな影響はないのかもしれません。(それでも文化の違いは大きいと思いますが)
海外生活において特に家族内の言語が1つに限られている場合、その言語が精神的な家族の繋がりにもなることを考えると、年齢とともにその言語をアップデートしていく必要が出てきます。つまり、精神的発達に即して使用する言語の難易度もアップデートしていく。ということです。
しかし、それは決して簡単なことではありません。
参考になるかはわかりませんが、アメリカの国防総省は英語から他の言語がどれくらい遠い場所にあるかということをHPで紹介しています。
https://2009-2017.state.gov/m/fsi/sls/orgoverview/languages/index.htm
このサイトによると英語からの距離が最も近いところにある言語(Level 1)にオランダ語が含まれており、英語とオランダ語は最も近い言語距離にあるということがわかります。
一方で、日本語は…というとLevel 5。英語から最も遠い位置にある言語だと書かれています。これからわかることは、
・オランダ語は英語に違い言語(英語→オランダ語(Level 1)
・オランダ語から日本語は遠い言語(オランダ語(Level 1)→日本語(Level 5)
ということかもしれません。
少し話はずれましたが、オランダ語を学びながら日本語を習得することはとても難しいはずです。何故なら言語の距離が遠いということは、言語だけでなくそれを取り巻く文化もまた対極にあるということであるように思えるからです。
日本語を学習するために「日本語補習校」というのがオランダにも存在しますが、文科省のHPにいくと「補習校とは駐在家庭の子どもたちが日本に帰国した際に日本の教育にスムーズに移行できるように、という目的で設立された」と明文化されています。
つまり本来、補習校は永住目的や国際結婚家庭のために設立された場所ではありません。補習校が完全私学でない限り、日本の教育予算(いわゆる税金)の元で運営されていることを考えると、目的や設立意義にそぐわない私たちのような子どもが通う場所ではないと考えています。
特に、補習校に通う帰国予定の子どもたちの補習を行っている身としては、目的とその設立意義に準じた子どもたちにとっての教育の場であって欲しいと強く思っています。
3) 文化の継承
日本には四季があり(最近では冬と夏の二極化が始まっていますが…)、昔から大切にされてきた歴史的行事が多く存在します。幼稚園を含む初等教育では「季節行事」が大切にされることも多くあります。
補習校という選択肢をなくした場合、これらは各家庭で行うか、保護者自身がコミュニティ形成をして自分たちの力で維持していくしかありません。
子どもにとって「日本(人)」としてのアイデンティティをどのように理解するかは、各家庭の判断によるとは思いますが、これまで教育に委ねられていた部分が、家庭が担う部分に変化します。
言い方を変えれば「わざわざ」季節行事を行わなければ、その季節行事はその家庭や子どもにとって「ないもの」として扱われます。もちろん、それが良い悪いということではなく「家庭に委ねられる」というのがポイントであると感じています。
続きは後半に…
私たちがオランダへ移住して「失われた」と感じたことや「わざわざ意識しないと得られないもの」は他にもあります。
今回はここまでにして、また次回続きを書こうと思いますが、海外移住を検討されている方々がフェアに物事を判断するため、これらが少しでも有益な情報になればと思います。
この記事を書いたボーダレスライター に
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税所 裕香子
Yukako Saisho
- 居住国 : ドイツ
- 居住都市 : ザールランド
- 居住年数 : 1年
- 子ども年齢 : 6歳、3歳、1歳
- 教育環境 : ワルドルフキンダーガルデン