【オランダ/ハーグ】競わせない。”命を守るため”にある、オランダの水泳教室

こんにちは!
どんどん寒くなるオランダですが、ついに先月から娘の水泳教室が始まりました(こんな季節から始まるなんて…)。

実はこの水泳教室に申し込んだのは、約1年半も前のこと(白目)。
申し込んだ時点で、明るく「18ヶ月待ちです〜!」と表示されたことを今でも覚えています。←

そんなこんなで、1年半待ち焦がれた水泳教室が始まりました!

ビキニはダメよ、ビキニは〜!笑

市民プールから娘の水泳教室開始について電話がかかってきた時、
「何か持って行くものはありますか?」
と聞くと、
「水着ね!笑」
と言われました。

「あ、でもビキニはダメよ、ビキニは〜!笑」
と笑いながら言ってくれたおばちゃんですが、
実際通い始めてみると、ビキニの子どもが何人かおりました。←

子どもたちはディプロマを取得していく

さて、そんな話は置いておいて。笑

移民であれ何であれ、子どもたちは水泳教室に入ってディプロマを取得していく…これがオランダでは”当然のこと”かもしれません。もちろん頑なに水泳教室に通わない家庭もあるかもしれませんが、基本的には「ディプロマは取得するもの」として考えられています。また、このディプロマは国家資格として認められています。

日本の学校にとっては当然の「水泳」ですが、オランダの小学校においては、学校で水泳の授業をするか、できるかどうかは学校によります。ちなみに娘の通う小学校では水泳の授業はありません。よって、保護者は自分の子どもに学校外で水泳教室に通わせる必要があります。

日本では当たり前の「プール」ですが、オランダのほとんどの小学校は学校施設としてのプールを持っていません。学校によっては体育の中に水泳の授業が組み込まれていて、クラスで揃って学校から学校近くの(市民)プールへ移動して水泳の授業を行う学校もあります。

国土の4分の1が海面よりも低いと言われるこの国が水害に遭ったとき、無数にある水路や川に落ちたとき、自分の命を救えるだけの人間にしておくかどうかを考えれば、多くの保護者は「子どもが自分で自分の命を救えるようになること」を選択するのかもしれません。

決められた技術を身につけたら次のクラスへ昇進

オランダの子どもたちはある程度の年齢になると、最低でも「ディプロマA」という、自分で自分の命を救えるだけの水泳力を身につけておくことが望ましいとされていて、現在娘はその「ディプロマA」取得に向けて水泳教室に参加しています。

娘が通う水泳教室は毎回参加しているメンバーが異なります。というのも、ある一定の水泳技術を身につけると、「はい、じゃああなたは来週から○曜日の△時のクラスへどうぞ〜」と、エスカレーター式に子どもたち自身がクラスを移動していく仕組みになっています。こちらが水泳教室の予定に合わせなくてはいけないのが少し手間ではありますが、数週間後には、また次の曜日や時間に変わるので、その予定にこちらが合わせていくという感じでしょうか。

ということで、欠席出席も含めて「今日は10人だな」とか「あの子はどこへ行った?」とか「新しい子が入ってきたね」というような感じで、メンバーが入れ替わり立ち替わり変化し、何なら先生もコロコロ変わります。

ただ、プールサイドでiPadを持っているインストラクターは、水中に立つインストラクターと会話を交わしながら、子どもに「あれやってみて」と指示したりして、その子が次のクラスへいけるかどうかを判断しているようです。

競う必要はない。自分を守るための水泳。

初回から娘の様子を見ていても、子どもたちが競争するような様子は一切ありません。初レッスンの日、少しドキドキしていた娘のそばには、それを察してか1人のインストラクターがついてくれて、顔を水につける練習や水の中で目を開ける練習を個別で行ってくれていました。

それに安心したのか、最終的に娘は別の子どもたちの大きなグループに入り他の子どもたちと同じアクティビティを行えるようになっていました。

最初は水に慣れるためにプール内を走り回るところから始まり、水中に落とされたリングを拾ったり、設置された大きなフープを潜って通ったり…と、とにかく水に抵抗を感じなくなるようにレッスンが組まれています。

様子を見ていると、あくまでゲームのように「こんなのできる?」という感じで子どもたちはインストラクターの真似をしていくという感じでしょうか。

泳がなくて良い、まず浮きなさい(…ん?)

レッスンを見ていると、水に慣れた後にやってくるの「浮く練習」。
棒状のビート板に似た素材のものや、ブロック状のものを渡され、「こうやって浮いてごらん」と言われます。

水面上に身体を浮かすことって、私は結構高度な技術だと思うのですが、子どもたちは指示されたように、それらを使ってどんどん浮いていきます。
「浮く」って、確かに水に落ちた時に1番大切にしたい行為ですよね。変に泳いで助けを求めるよりも、落ち着いてとにかく体力を失わないようにすることが命を守る行動であることも頷けます。

あまり水が好きではなかった娘も、優雅に水の上に浮いて楽しそう。笑
「なんだか穏やかですねぇ」なんて思いながら、ぷかぷかと浮かぶ子どもたちを見つめていました。

ゴーグルはとりなさい(えっ?)

娘の水泳教室ではゴーグルを着用していると一旦回収されます。笑
そりゃそうですよね…思いがけず水に落ちた時、ゴーグルなんてつけていません。
オランダには無数の水路がありますが、足を踏み外して落ちた時「やったー!今日はゴーグルつけてた〜!」なんてことはあり得ません。←

ということで、水泳教室だと心を躍らせてバッチリゴーグルを購入してきた子どもたちは、インストラクターの「ゴーグル回収」の洗礼に驚きながらもレッスンは続きます。笑

プールサイドから水の中へジャンプインしなさい(えっ?)

日本のプールでは、プールサイドからプールの中に飛び込む行為は「決して許されない行為」だと理解していた私ですが、娘の水泳教室ではあえて子どもたちをプールサイドから水の中へ飛び込む練習をさせています。

もちろん大きくジャンプする必要はないのですが、プールサイドに立ち、その高さから水の中へジャンプインするように促されています。

何か必要に迫られて高いところから水の中へ飛び込む必要がある時があった時、きちんと抵抗なく飛び込めるように練習してくれているのかもしれません。

最後は着衣水泳で合格!

ディプロマの最大の試練は「着衣水泳」かもしれません。
長袖に長ズボン(長めのスカートも可)、そして靴を着用して入水することを求められます。

自分の学生時代を振り返っても、水泳の授業で着衣水泳をしたのはたった1回だったと記憶していますが、そこにも「何のために水泳をやるのか」という解釈の違いが感じられます。

ディプロマAとは何ができるようになることを指す?

オランダの水泳のサイトにあるものを日本語訳してみました。
ディプロマA取得時には、下記のようなことができるようになっているとされています。

ディプロマA

ディプロマAを取得することにより、子どもは基本的な身体能力を習得し、拠り所のないプールで、安全に移動するために必要な基本的なスキルを習得したことを示します。また、予期せず水に落ちた場合、子供は自分自身を救うことができます。ディプロマAはその先にあるディプロマBやディプロマCへ続く最初のステップにもなります。

▶︎服を着たまま入水した場合、水面上で向きを変え、次の水泳ストローク(平泳ぎ、片手/両手背泳ぎ、クロール)の1つ以上で基本距離を泳ぎ、独力で水から出ることができる。

▶︎さまざまな方法で入水することができ、水中で向きを変えて何かを泳ぐことができる。

▶︎4つの水泳ストローク(平泳ぎ、片手/両手背泳ぎ、クロール)の1つまたは複数で基本距離を泳ぐことができる。

▶︎技術的には、4つの水泳ストローク(平泳ぎ、片手/両手背泳ぎ、クロール)を十分に実行して、基本距離を十分に超えることができる。

▶︎仰向け、うつ伏せの状態で水に浮くことができます。水に入った状態を快適だと感じることができる。

▶︎腕と脚で立ち泳ぎをしたり、向きを変えたり、向きを変えたりすることができる。

人は救えなくても、少なくとも自分は救えるように

ディプロマB、Cと上位になっていくと、潜水が長い時間必要になったり、自分の命だけでなく、人の命を救えるようになる練習も入るそうです。

オランダという国が常に水と共に生きていることや、昨今の地球温暖化による海面の上昇が危ぶまれているとこから考えると、子どもたちに対して「せめて自分の命は救えるように」というとても現実的な理由から水泳クラスを受講させることはとても理に適っていると感じます。

水泳の目的が非常にはっきりしていて、何のために水泳教室に通うのかということが子どもたちにとっても明確なこのシステムはとてもオランダらしいとも感じます。

オランダの学校教育における体育もそうですが、子どもたちを無理に競わせることによって、個々の能力が伸びるというような期待はせず、何故それをやるのか、何のためにやるのか、どんな目的を持ってやるのかというところを明確にし、幅広く子どもたちに「生涯スポーツ」を経験させてあげるところにこの国独特の「スポーツの捉え方」があるように思います。

この記事を書いたボーダレスライター に
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三島 菜央

Nao Mishima

  • 居住国 : オランダ
  • 居住都市 : バーグ
  • 居住年数 : 2年
  • 子ども年齢 : 6歳
  • 教育環境 : 現地公立小学校

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