【オランダ/アムステルダム】教師不足から新たなスタート:タレントデー
朝起きても真っ暗、もうすっかり冬時間のアムステルダムからこんにちは。
娘たちの学校では、 “talentendag”(タレントデー)というものがあります。
毎週水曜日、多種多様なジャンルの外部講師が来てワークショップをしてくれる日のことです。
これは2020年からスタートしたまだ2年目の試み。
通常授業はなく、先生方も校内にいますが、ミーティングや授業研究・授業準備など諸々のお仕事をされています。
もともと水曜日は午前中だけの日ですが、タレントデー導入によって減ってしまう水曜日分の授業時間を補うため、月火木金が30分ずつ延長されました。それによって一週間で2時間分を取り戻している計算です。
長女はこのタレントデーを「遊ぶだけの日!」と楽しみにしており、お友達の中には「水曜日だけ学校に行きたい!」と言う子もいるそう笑。
一見とても素晴らしい印象を受けるこのタレントデー、実はオランダが抱える『教師不足』が背景にあります。
私たちのいる南東部はアムステルダムの中でもより教師不足が深刻なエリア。娘たちの学校ももちろん例外ではありません。そこで、2020年 ‘Noodplan Lerarentekort Amsterdam’(アムステルダムにおける教師不足のための緊急計画)において提案された3つモデルのうち、最も学校のコンセプトに適したアプローチとして採用されたのが『1週間のうち1日(または一部)、生徒に代替プログラムを提供する』つまりこのタレントデーのチャレンジなのです。(”talentendag”というのは学校が付けた独自の名称です)
先生方は水曜日を有効活用し過重労働を軽減することができ、同時に外部講師にとっての雇用拡大の意味合いも持ちながら、何よりも子どもたちが多種多様な経験をすることができる、そして結果的に全体としての教育の質・モチベーションが向上することが期待されています。
具体的にどんなことをしているのか、長女の様子をご紹介します。
・Puzzelen(パズル)
・Judo (柔道)
・Fotografie(写真)
・Haken (編み物)
これら4つのアクティビティのうち、毎週3つが行われています。
パズルは、いわゆる普通の絵合わせのパズルのようです。家でもできるのになぁ…なんて思っておりましたが、話を聞いてなるほど、色分けしてからやるとか、形を分けてからやる等、グループで戦略を持ちつつ力を合わせて取り組むようです。一つ完成するとさらに難易度の高いミッションへ!
グループワークによって家とは異質の体験をしている様子でございます。
柔道や空手はこちらでも人気!クラスメイトで習い事をしている子もちらほらいます。ちなみにオランダ語の発音だと柔道は「ユードー」です。(違和感!)「先生が『礼っ』と言うんだよ〜!」と随所で日本語が使われることを長女は喜んでおります。私もなんだか嬉しいです。
先日の写真のワークショップでは、自分の顔を撮影し、顔を左右半分に分け、左と左/右と右を合成し、違いを楽しんだそうです。自分の顔を鏡で見ている分にはあまり気づくことができませんが、顔の左右差って意外とありますよね。写真を媒介することで、視点を変化させながら新たな自己像・他者像を楽しく発見しているようです。
4つの中で彼女が一番気に入っているのは編み物です。編み棒は使わず、手で結っていくような初歩的なものをおばあちゃん先生に教えてもらっています。
私は編み物がとてつもなく苦手分野ですので、娘たちと編み物をしようなんて日は訪れないはず。我が家の中では、そして従来の授業時間では育たない類の興味関心の種が芽生えてる!タレントデーの醍醐味を感じております。
ワークショップという性質上、ダイレクトに養分を吸収しやすいのもとっても良いです。どんどん育っていただいて、いつか私にセーターかなにか編んでください笑。
学校側もタレントデーに手応えを感じているようで、たとえ将来的に教師不足が解消されたとしても、カリキュラムに持続的に組み込んでいきたい、より自分たちのものにし、発展させていきたいと意気込みを持っています。
最後に、校長先生の言葉を。「現在の教師不足を含むあらゆる緊急事態は、新たなスタートへと状況を変えることができます。泣き言を言う代わりに、美しいものを作り出しましょう。」
泣き言名人、肝に命じます!
この記事を書いたボーダレスライター に
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有川 敦子
Atsuko Arikawa
- 居住国 : オランダ
- 居住都市 : アムステルダム
- 居住年数 : 4年
- 子ども年齢 : 7歳、5歳
- 教育環境 : 現地公立小学校(ニューカマークラス、ダルトン・プラン)