【オランダ】“子どもも”自分に合った政党探しができる”StemWijzer”

オランダでは先日、選挙が行われました。30以上の政党が並ぶこの国の選挙では「一体どこに投票したら良いのかわからない」と悩む人も多いと聞きます。そんな時に役立つのが“StemWijzer”だと教えてもらいました。

今回の選挙の投票率はなんと約80%!

コロナによって国の舵取りが問われたのはどの国も同じで、オランダも例外ではありません。21時以降の外出禁止令がまだ解除されず、1日の自宅訪問者が設定されたり、飲食店はテイクアウトのまま。食品や医療品などを除く小売店への入店は未だに予約制です。
これからのこの国を誰が導いていくかは、正直自分たちの生活がどうなっていくのかに直結しているとも言えます。

そんな今だからか、今回の投票率はなんと約80%!

もちろん選挙権はオランダで暮らす全ての人々には与えられず、オランダ国籍を持っている人たちなどに限られています。よって、私たち移民と呼ばれる人たちに投票する権利はありません。
…にしても、投票率80%超えというのは驚異的な数字に感じます。

選挙については多くの学校でも議題に

選挙の話題は学校でも取り上げられ、市民教育の一貫として扱われることも多いと聞きます。例えば、オランダにある小学校では、”Nuewsbegrip”という学習ツールがあり、そこではエビデンスベースの最新のニュースについて知り、学ぶことができます。日本で言う「子どもニュース」のようなものでしょうか。マテリアル等も用意されており、新聞記事に対して「事実と意見の違い」などについても学習するセットが用意されています。

ある教室では「自分ならどの政党に投票するか?」という問いに対して、根拠に基づいた議論が行われると聞きます。
その結果…かもしれませんが、私の夫は日本語を教える生徒から、「で、先生はどの政党を支持しているの?」と聞かれたそうです。小学生が大人に向かって政治の話をするところに、社会を専門とする夫はたいそう感心したと言っていました。

学校の授業の話に戻ると、もちろんその場で教員が子どもたちを自分の支持する政党へ誘導する…というようなことも可能であり、100%ないとは言い切れないかもしれません。
しかし、教育においての公平性を欠いた民主主義に対して、この国は冷たい視線を送る雰囲気はありそうです。日本にも教育基本法14条という「政治的中立」に関する文言がありますが、公教育に携わる人間は民主的な市民教育とは何かを理解した上で、学級においての発言を行わなければいけないでしょう。

政党を選ぶのに困った時の”StemWijzer”

冒頭にもあったように、30以上の政党があるオランダで自分が投票する政党を選ぶのは大変です。私も日本の選挙で、特定の政党のマニュフェストを読むことに苦労した経験があります。

そこでオランダで用意されているのが”StemWijzer”というサイトです。

StemWijzer
https://tweedekamer2021.stemwijzer.nl/#/

このサイトではテーマ(環境、教育、健康など)に基づいた30個の質問がなされます。それらの質問一つひとつに対して、「賛成」「どちらとも言えない」「反対」のいずれかを選ぶことができます。(Skipもあり)

また、その質問に対して各政党がそれら3つの回答のうちどれを表明しているかも同時に見ることができます。
例えば、1つ目の質問として表示されたのは、
「イベント主催者は、入り口において参加者のワクチン接種の有無を求めるようになるべきだ」
という質問でした。

それに対して、各政党がどのように考えているかを表示できます。

ここに表示されているのは一部ですが、スクロールすると反対派の政党が多いということがわかりました。

このようにさまざまな質問に回答していくと、自分に適したと判断される政党名が表示される仕組みになっています。

選挙以外の時に使える”PartiesWijzer”

StemWijzerは、まさに今行われる選挙について自分に合った政党を選ぶことに使えるサイトですが、それ以外の場合には”PartiesWijzer”というサイトで自分に合った政党を選ぶことができます。

PartiesWijzer
https://partijenwijzer.nl/

ここでも、テーマに基づいた12個の質問があげられ、それに対して自分の回答を複数の中から選びます。その時には、金銀銅のメダルが用意されており、自分で回答の優先順位をつけることができます。

例えば、最初の質問は「経済について」でした。
回答のうち、どの順序で優先順位をつけるかと問われます。

StemWijzerと同様に、12個の質問を終えると自らの主張に適していると判断される政党が表示される仕組みになっています。

政治をもっと身近に、もっと”自分ごと”に

“選挙カー”を走らせ、市民に主張を訴えることも選挙活動の一環として有用かもしれませんが、どんな立場の人も場所や時間を問わず自分たちの未来について考える機会が用意されている点に関して、このStemWijzerやPartiesWijzerはとても良いツールだと思います。

特に若い世代にとって「わかりにくい」「めんどくさい」とされる選挙をもっと身近なものにし、アクセスしやすくすることで”自分ごと”と捉えられるように工夫することは、ある意味、国の責任とも言えるかもしれません。

投票権のない私としては、この国の行方は別の人々の手に委ねられていると言っても過言ではありません。しかし、どういった経緯で国を導く人々が選ばれるのか。その方法にこれからも注目していきたいと思います。

この記事を書いたボーダレスライター に
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三島 菜央

Nao Mishima

  • 居住国 : オランダ
  • 居住都市 : ハーグ
  • 居住年数 : 5年
  • 子ども年齢 : 8歳
  • 教育環境 : 現地公立小学校

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