【オランダ】“学校に行くのが不安”という気持ちはワガママではない

何度もブログで書いているのですが、5/11(月)から部分的に小学校が再開します。
これに伴って、昨日今日と小学校から様々な連絡が届いています。

多くは現実的な連絡で、
何時にどのクラスがAかBどちらの校門から登校するか、
学校に持ち込む荷物はどのようにすべきか、
学校に遅刻した場合の対応、
忘れ物をした場合の対応、
昼食時に一時帰宅する生徒の対応、
などです。

しかし、その中に、
「学校に行くのが不安な場合は」
という項目がありました。

これは、保護者だけでなく、生徒に向けたメッセージでもあります。
つまり、この数ヶ月の様々な経験を通して、
「まだ学校に行くのは時期尚早ではないか」
「自分が学校に行くことで、誰かに感染させてしまったらどうしよう」
「ひょっとすると、誰かから菌をもらってしまうかもしれない」
そういった不安を抱いている場合への対応です。

いくら国が”学校再開”を許したとしても、これは個々の命に関わる問題です。
よって、もし不安を抱えながらも「学校に行かなければいけない…」と思っているのであれば、学校と相談しましょう。ということなのだと思います。

「やっと学校が再開するんだから、みんな来なければいけない」とか、
「政府が発表したことなんだから、きっと大丈夫だってことだと思わなければいけない」とか、そういう問題ではない。ということを意味していると思います。
学校からの連絡には「そういった不安を抱えている場合、連絡をしてください」
とのメッセージが込められていました。

人間は千差万別、十人十色です。
よって、“考え方”には色々あっても良い。と誰もがどこかで思っています。
しかし、“行動”はどうでしょうか。
意外と多くの人が簡単に「こうしなければいけない」「みんなそうしている」という発言をしてしまいがちのような気がします。

そして、多くの場合「こうすべきだ」という判断の根拠になっているのは多数決にあり、
個々の心に寄り添った判断ではないことも多くあります。

また、子どもに判断を委ねるかどうか。は、年齢によって異なると思われがちです。
例えば、高校生くらいになれば「自分のことは自分で」という判断が多くなり、
小学生くらいであれば、保護者が主に判断しなければいけない。というような考え方です。

しかし、この国の教育においては、年齢に関わらず、子ども自身がどう思っているか。ときちんと向き合って、無理強いはしない。という考え方が浸透していると感じることも多くあります。

これまでも何度か書いてきたのですが、
子どもは保護者の所有物ではなく、1つの人格を持った存在だということ。
“1人の子どもを1人の個として認める”という意識が強いと感じるのです。

そして、これは本当にその通りであるべきだ。と私も思っています。
つまり、「みんなそうしているよ」という言葉を、子どもを導く言葉として使わない。ということです。

私も教育現場において、多くの生徒と話をしてきました。
“長い物には巻かれろ”が悪いとは言いませんが、時に”巻かれたくない”と主張する生徒に対して「あいつはわがままだ」とジャッジする大人も少なくなかったように思います。
前述した通り、”考え方”なら許される部分が多いのに対して、
“行動”に関しては許容されないことがさらに多くあったように思います。

例えば、
クラスレクレーションに参加したくない。とか、そういった”行動”に関わるものです。

仮に、オランダでそういったことがあれば、多くの教師はきっと誘ってみるとは思います。
しかし比較的簡単に「じゃあそこで見ていたら良いよ」と言う気もするのです。
それは、娘の校外学習に引率した時にも感じたことでした。

“子どもを一個人として尊重する”というのは、
言葉で言うのはとても容易く、大人は実行している気になっていることがあります。

しかし、本当の意味での”尊重”とは、その人間にカスタマイズする。ということだと思うのです。
もちろん全てを「君の判断で良いよ」と認めることが、その人間のためになるとは思いません。

ただ、「君の考え方や行動に、きちんと向き合うための機会があるよ」ということをきちんと本人に伝えてあげること。
そして当たり前ですが、そういった姿勢を見せる教師側に余裕がなければ、ゆっくり向き合って話を聞くこともできません。

大人の都合で言葉巧みに誘導し、”長い物に巻かれる”という行為があたかも善行であるかのように見せるのではなく、個々で異なる考え方に寄り添い、どこにも答えは見当たらないけれど、話をしながら答えを見つけていこうか。
という姿勢を全面的に表す。ということ。

これが、”人間は一人ひとり異なる”
という理解へのアプローチなのだと思います。

今のところ、娘は学校再開を楽しみにしていますが、
そうは思わない子がいてもおかしくないと私自身は思っています。

「あなたの気持ちを大切にしよう。話を聞かせて?」

学校再開を前に、不安を抱えるオランダの子どもたちの話を聞いてくれる先生がたくさんいますように。
学校からの連絡を通して、そんな風に思うのでした。

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