【オランダ】オンライン学習になっても焦らないオランダの学校教育
オランダ全土では3/16(月)から4/6(月)まで学校が休校となりました。
それからというもの、学校の授業はオンライン学習に移行。
…ただ、その移行措置が(うちの娘の学校の場合)、とてもスムーズだったのです。
スムーズと言っても、娘はまだ4歳で、オランダではgroup1という1番下のクラスのため、
そもそも娘の通う小学校からは、
「オンライン学習をするために、デバイスの前にみんなで集まって何かをしましょう!」
という提案がありませんでした。
(ひょっとしたら、group1であってもオンライン集合のようなものをしている学校もあるかもしれません)
一言で”オンライン学習”と言っても、やり方が千差万別なのがオランダの教育。
“オランダ全土の小学校で使われているアプリはこれ!”
というようなものは存在していないはずです。
よって、普段から教育内容が学校で異なるように、オンライン学習に関しても学校ごとに異なります。
これから書く内容はあくまで”娘の通う小学校”の話であって、オランダ全土の話ではありません。
さて、前のブログで紹介した通り、娘が通う小学校では学校と保護者を繋ぐアプリがあります。
その名も”Social Schools”と言うのですが、簡単に言うとFacebookのようなものです。
出欠に関する連絡や、面談の予約などもこのアプリを通してできるのですが、
Facebookのように投稿に関する機能としては、
基本的な権限者は学校側にあります。(もちろん保護者側からの投稿も可能)
つまり、ほとんどの場合は担任から娘のクラスへの投稿が表示されています。
ただ、時に校長から保護者全体への投稿も表示されます。(全校生徒への連絡です)
私の画面上では他の学年の投稿は表示されないので、情報がスマートに集約されています。
休校が決まってからは、担任から毎週金曜日に翌週の宿題に関する投稿がなされてきました。
そこには担任からのメッセージと、PDFやWordの添付ファイルがつけられています。
例えば、休校が決まってすぐの1週間の投稿では、
・担任からのメッセージ
・担任が学校に勤務している時間帯の情報(オンラインで質問が可能)
・外遊びのヒント7つ(wordファイル)
※この時はまだ、外出規制もそこまで厳しくなかったので可能な時間で外遊びが奨励されていました
・1日の過ごし方アドバイス(PDF)
→何時に起きて、何時に学校の宿題をして、昼食やテレビの時間などのタイムテーブル例
・粘土の作り方レシピ(word)
・オススメのオンラインアプリ、動画サイト集リスト(PDF)
・月曜〜金曜まで、それぞれ1日のうちにやるべき宿題リスト(PDF)
・”家族”というテーマに沿ったワークプリント(各家庭で印刷してやるもの)(PDF)
・1日のスケジューリングをするためのシート(PDF)
↓こんなもの
これらの情報がアプリ上に投稿され、保護者はこの投稿をスマホやタブレット、PCなどで確認して、必要があるものを各家庭で印刷し、子どもに宿題をさせる…といった感じです。
こういうことをすると、
「うちにはプリンタに接続できるデバイスがないのにこんな宿題出されても困る!」とか
「そもそもインターネットがない!」とか
「プリンタがないのに、ワークプリントをどうやってさせたら良いんだ!」
というような、
「その環境自体がない人たちのことが考えられていない」
発言が聞こえてきそうですが、恐らく、オランダではそういう意見はほとんど出ないと思います。
もちろん、学校側が「そんなこと知らん」とは言わないとは思うので、相談も可能だと思いますが。
インターネットなどのインフラ環境が当たり前に整っている世帯が多いこともオランダの特徴ですが、
「ないなら、ないなりに各自で何とかする」
という感覚が広く行き渡っているような気もするのです。
お隣さんに相談してみるとか、近所の同じ学校に通う家庭を頼ってみるとか、
保護者の仕事場で印刷してもらうとか….
そうやって「自分でできるようにもっていく」という意識が浸透しているように思います。
そういったインターネットやタブレットやPCなどの環境が比較的整っている家庭が多いからか、
外出に関する規制が強まり、多くの業種において在宅ワークへの切り替えが指示された時も、
オランダではそこまで多くの混乱はなかったように思います。
また、”在宅ワーク+子どもたちのオンライン学習”が始まってからも、各社でネットの回線がダウンした。
というようなこともとりわけありませんでした。
これに関しては、オランダという国がこういった状況を予測していた…とは言いませんが、
このような事態になった時にも対応できるような国家の在り方を築き上げてきた。
と言っても過言ではないような気がしています。
もちろんこのような情報機器を扱えることに関しては得手不得手があるとは思うので、
「どの家庭も困っていない」ということではないと思うのですが、
こういったオンライン学習への移行措置に対して、
「はい、わかりました〜」と言える家庭が多いのも事実だと思います。
休校措置が取られてから、娘に課される課題はとても面白く、
QRコードを読み取ると、クラフトの動画が流れてきたり、
学校で導入している教材のアプリをDLすることで学習ができたり、
学校が採用している企業のアプリをDLしてオランダ語や算数の学習ができたり…
と、そのアプリ自体も子どもの学習意欲を掻き立てるような、良くできているアプリであることも多いです。
今日は金曜日だったので、来週用の宿題が送られてくる日でしたが、
・担任からの動画メッセージ(自宅の庭で撮影されたもの、飼っている犬の紹介)
・音楽の先生がギター片手に、音楽の授業で習った歌を唄ってくれる動画
・体育の先生が自宅でできるエクササイズを撮影した動画
・保護者と一緒に楽しめる手遊びの動画
・今週のテーマ”春”に基づいたクラフトを紹介した動画
・月曜〜金曜のプリント(PDF)
など、動画がメインで送られてきていました。
娘は音楽の先生が歌うその曲がお気に入りの1曲だったようで、動画を見ながら歌っていました。
このようにして、完璧ではないにしても家にいながらできる課題を学校は送ってくれています。
もちろん学校で学習する以上の効果はないにせよ、教材を見ることで、
「こんなことを勉強しているんだなぁ」
というのが手に取るようにわかるのも事実です。
また、アプリには色んな仕組みがあり、様々な角度から多様な能力を伸ばそうとしているのがわかります。
休校中の日本でどのような家庭学習が進められているかは分かりませんが、
娘の小学校の他の学年では、オンライン通話が頻繁に行われていたりして、
授業の場所が自宅になり、画面上でクラスメイトが集まるようになった。
というようなかたちで1日何時間か授業をしているところもあるようです。
学校側も、そして家庭側も、
「この状況ならオンラインでいきましょう」
という合意形成がとても当たり前に行われています。
そしてその裏側には、このような環境を浸透させるために、
インフラ整備に力を入れ、企業でのリモートワークを押し進め、
多くの人がインターネットやデバイスの扱いに慣れるようにしてきた…
という政府の賢いやり方が見えます。
そして、それがついに教育にまで浸透しているような気がしています。
学校にプロジェクターがない
WiFiが飛んでいない
各教室にPCがない
生徒が使える十分な台数のPCがない
カラープリンターがない
生徒が学習に使えるデバイスがない
そういった日本の学校現場を考えると、オランダは随分と先をいっている気がします。
それもこれも、この国の税金が高く、教育への予算が多く取られているからこそなのかもしれません。
この状況で大きな混乱もなく、オンライン学習が当然のこととして受け入れられているオランダ。
そうなった道筋をもっとよく調べてみたいと思います。