【日本】“選びたくても選べない”学費問題

あれよあれよと、12月ですね。
師匠も走り回る忙しさという師走が到来。11月は暖かい日も多かった京都ですが、さすがに寒さが身に染みはじめました。

そして、子どもがいるどこのご家庭でも、サンタクロース代理の親たちが、頭を悩ませ始めるこの時期。
ちなみに、我が家の娘たちは先日サンタさんにお手紙を書き、サンタさんが読めるようにと窓の外に向けて手紙を貼り付けていました。
まだまだ可愛い。…が、1つ言わせておくれ。
サンタは全知全能の神ではなーい!なんでも叶えてくれると思うなよぅー!

昨年度、ドンピシャなプレゼントをもらった長女は、「サンタさんはなんでも作ってくれるんだ!」と認識してしまったようで、世の中にそんなものありますかね?とツッコミたくなるプレゼントを願って、手紙に書いておりました。
やんわり、「え、それにするのー?」と気持ちの変化を狙った質問を投げかけましたが、「サンタさんならできるもん!くれるもん!」と、子どもたちにとったら、神同然のサンタさんに対する至極まっとうな返答が返ってきて、なんとも返事ができませんでした。
いやはや、サンタさんも大変だこりゃ 涙。

さて、今回は、前回の記事で伝えていた、娘が通っている、国際バカロレア(IB)のカリキュラムを取り入れているPYP認定校であり一条校である私立小学校の学費の話です。(修飾語が長すぎるー)

数字を見るのも恐ろしいほどの学費

前回の記事の終わりに「数字を見るのも恐ろしいほどの学費」と書きましたが、お分かりの通りこれはあくまで主観です。一般サラリーマン家庭で育ってきた私のただの感想です。
世の中それぞれ金銭感覚は異なるので、その学費を「高い」と捉えるのか「低い」と捉えるのか、それぞれだと思いますが、私の感覚に近い方が多いのではないかと仮定して、話を進めさせていただきます。

ちなみに、日本では公立小学校と言えども、無償ではなくお金がかかります。
授業料としては0円ですが、学校納付金やら修学旅行費、学校給食費などの名目で何かと集金があり、1年間で平均104,484円の出費があるそうです。
余談かもしれませんが、さらに塾や習い事費等を含めると、平均321,708円の費用がかかっているそうです。

日本国内の私立小学校の学費は、それぞれの学校によってもちろん差異はありますが、平均915,215円。(以上の数字の出典元:平成28年度「子供の学習費調査」/文部科学省)
さらに詳しく知りたい方は、ぜひググってください。(他力本願)

娘の通う小学校の学費の数字を明記することは控えますし、ここで言いたいのは、〇〇円も払ってそれどーなのよ?!という愚痴でありません。

高い学費によって、その学びを選択する家庭へのバイアスがかかり、全ての子どもたちにあるべき平等な選択の機会が失われている、ということです。

かかるお金を“誰”が払うのか 

まず前提として、教育とはお金がかかるものだ、という認識は必要かと思います。
世の中の時代の流れの早さに対して、教育自体もスピード感を持って変化していかなければならない。となると、既成概念にとらわれずに、新しい研究も実践も次々と行わなければならないし、新しいテクノロジーも取り入れていかなければならない。システムも、それを扱う人材も、アップデートし続けなければならない。
変化には、お金がかかります。

しかし、そのかかるお金を、各家庭が負担することが間違いなのではないかと思うのです。

諸外国のほとんどの公立学校が無料であることは、このサイトの他国のライターさんの記事を読めば一目瞭然。
そして何より、オランダなどは私立小学校でも無償。学費の面からいくと、公立も私立も違いはありません。さらには、ワークブックや文房具などの教材費も一切かかりません。(日本とは違ってボランティア文化が根付いている国が多いため、ボランティア精神での出費は必要かと思います。また、各国のインターナショナルスクールなど、学費がかかる学校もあります。)

なぜ学費がかからないのか。
それは、国が子どもたちの教育費を負担しているからです。
世界共通で、どの国でも、どの文化でも、どの環境でも、教育にお金はかかるのです。
子どもたちやその国の未来を見据えて、“誰”が払っているのかが違うのです。
教育費を払うことを「負担」と表現するのは間違いかもしれませんね。
国の、世界の未来を想って、可能性のかたまりである子どもたちに「投資」しているのが、“国”なのか、“親”なのか。
とても、とても、大きな違いです。

少し大きな枠組みの話になりますが、日本が日本という国をよくしていきたいのならば、一番に使う予算は、間違いなく教育分野です。(あくまで私が思うところ、です)
「未来を担う子どもたちを育てること=国の未来を作ること」と、誰もがわかりそうなとても簡単な論理なのに、日本の国家予算約102兆円(2020年度の日本の国家予算案・一般会計のみ)のうち、教育や科学技術の発展のために使われる費用としての文教科学費として予算は約5%しかありません。国防費や軍事費など日本の防衛のための費用となる防衛費も約5%です。
「なんかおかしくないこれ?」という感覚になるのは、私だけでしょうか。

ただ、国としては、日本の教育にかけるお金は少なくないんだゼー発言をされています。
財務省の出している資料の中に、「日本の公財政教育支出の対GDP比は、OECD諸国の中で低いとの指摘がある。しかしながら、日本の子どもの割合もOECD諸国の中で低い。教育は子供一人ひとりに対するものであるという観点から、一人当たりで見れば、OECD諸国 と比べて、私費負担を含めた教育支出全体は高い水準にある。このうち公財政教育支出に限っても遜色ない水準。<文教・科学技術 (参 考 資 料) 2019年11月1日 より>」との記載があるのです。

しかし、 他国と“公財政教育支出に限っても遜色ない基準”で国家予算を教育に当てているというならば、「諸外国で行われている初等教育の無償化(公立私立関係なく)がなぜ同じようにできないの?」と単純に疑問に思ってしまう私です。(国家予算では、幼児教育・保育の無償化や高等教育の無償化の費用は社会保障費というカテゴリに入るようですし、私は政治や国家予算の専門家ではないので、これ以上の言及は知識が足りないので避けます。)

「選びたくても選べない」問題

教育にかかるお金を投資するのは、国なのか、親なのか。
各家庭が払うとなると、もちろん各家庭の所得には差があるため、この経済格差がダイレクトに教育格差へと繋がります。
高い学費の学校には、通いたくても通えないという家庭の子が出てくるわけです。

しかし、私は、学費が高い学校=変化を取り入れた新しい教育=良い教育=みんなが通うべき学校、だとは思っていません。
公立だろうが私立がろうが、公教育だろうがオルタナティブ教育だろうが、枠組みであったりカリキュラムの違いであったり、様々な教育方法や教育価値観の学びの場がある中で、その子に“合う”場を選ぶことが何より大切だと考えています。

問題は、「選びたくても選べない」という子どもが出てくること。
親子で学びの場を検討した結果(検討することが大事)、選択する際の検討事項として「学費」という項目が入ることが問題だと思っています。
お金が払える払えないは、本来、学校を選ぶときに考えるべき項目ではないのです。
その学校が、どのような学びの場なのか。
どのような環境でどのようなカリキュラムで、どのようなことを経験できるのか。
その学校の考え方が、親子の価値観と合致しているのか。
子どもが活き活きと毎日を過ごせるのか。
学びの場を選ぶ基準としては、その点が重要であるべきだと思うのです。

娘の通うIBカリキュラムのPYP取得校も、娘には合っていても、すべての子どもに合っていると言う気はありません。
たとえ学費が無料でも、「この学校は選ばない」という選択をする価値観の親子も、世の中にはいるはずです。
それでいい、というか、そうあるべき。
そうやって、各親子で「学びの場を検討して我が子に合う場を選択をする」ということが健全なのだと思います。

ただ、今は「選びたくても選べない」という家庭がある状態が、毎年の授業料請求書を見る限り、現実です。

同質化傾向が高い=多様性とはほど遠い

そしてその現実が引き起こしているのは、生徒の同質化傾向の問題です。
これを問題と捉えるかどうかは、やはりそれぞれの家庭の価値観によって異なるはず。
なので、あくまで私は問題と捉えている、という話です。
むしろ、同質化傾向を好んで求めて、学費のかかる学校を選んでいる親子がいることも事実だと思います。

現状、学費が高い学校では、入学してくる生徒に必然的にフィルターがかかります。
入学者の生徒すべてが「高い学費を支払える経済状況の家庭の子ども」であるからです。(もちろんその中にも差異はあり)
そうなると、想像が容易いように、似通った人生経験を持った子どもたちの集団、となるわけです。
同じ、とは言いません。各家庭によっての価値観の違いもあるので、裕福な家庭であっても、それぞれ経験していることが違うのは当たり前です。
ただ、昨今強く言われている「多様性」の大切さを、知識として頭に入れるのではなく、目の前に立つ友達の経験から体感として得ることは、大変難しい環境になっていることは、確かだと思います。

日本国内のすべての親子が、子どもの学びの場を、しっかり検討し、きちんと選択できる世の中にするためには、国を動かす大人たちが「学費問題」を「未来の国づくり問題」とイコールで捉えて、少しでもスピードを上げて解決していくべきだと、家計の他の経費を必死に削りながら教育に高額を投資している親として、心底望んでいます。

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